発達障害児は、発達特性や未学習・誤学習などが影響して正しい行動を学んでいない・学ぶ機会がない場合あります。
正しい行動を学習していくためには、困り感や問題行動などの背景要因を分析し、どのような対応をしていけば正しい行動を身に付けていけるのかを考えていくことが必要です。
それでは、友達とのトラブルが多い発達障害児に対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、友達とのトラブルが多い発達障害児への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、応用行動分析学の視点を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.」です。
友達とのトラブルが多い子どもへの支援のポイント
著書には、友達とのトラブルが多い子どもへの支援のポイントが2つ記載されています(以下、著書引用)。
1.できるかぎり未然に防ごう
2.他の方法を身につけよう
著者のこれまでの療育経験を通しても以上の2点は大切だと感じています。
まず1に関しては、基本的にトラブルなど危険が事前に予測できるものに関しては、未然に防ぐ・予防する観点がとても大切だと感じています。
予防の観点・対策無しに、事後的(トラブル後)な対応が取られることによる大人からの注意や叱責が増えることは極力避ける必要があると思います。
2に関しては、例えば、手を出さずに言葉で伝える、大人に相談するなどの方法を著者は伝えることが多いです。
もちろん、子どもの発達段階や二次障害の有無などによって対応の効果には大きな差がありますが、子どもの状態像に応じた対応方法を複数持っていく必要があると感じています。
友達とのトラブルが多い子どもへの対応
著書には、友達とのトラブルが多い子どもへの対応として3つのステップが記載されています(以下、著書引用)。
STEP1 Noを伝える
STEP2 柔らかい拒否の表現
STEP3 Helpを出す
それでは、3つのステップについて具体的に見ていきます。
STEP1 Noを伝える
著書には以下のNoを言う練習方法があると記載されています(以下、著書引用)。
おもちゃを取られそうな場面
あそびがエスカレートする場面
実際場面でヒントを出す
著者の療育経験を踏まえると、まずは、信頼できる大人との関わりの中で「やめて!」など、〝Noを伝える″練習をすることも一つの方法であると思います(例:おもちゃを取られそうな場面、あそびがエスカレートする場面)。
実際に、著者がこれまで関わってきた子どもとのやり取りの中で、いつも、著者が子どもにとって好ましい関わりができるわけでは無く、時折、子どもから見て止めて欲しい関わりもあったかと思います。
そんな時に、「嫌だったらやめて欲しいって言っていいんだよ!」など、〝Noを伝える″ことを促すこともあります。
また、他児との関わりの中で、嫌なことがあり、フラストレーションが高まりそうな様子の際には、傍で「やめて!だよね」など、サポートすることもあります(実際場面でヒントを出す)。
STEP2 柔らかい拒否の表現
著書には、柔らかい拒否の表現の伝え方として以下の練習方法があるとしています(以下、著書引用)。
落ち着いている時に一緒に考える
ロールプレイでやってみる
壁に貼ってヒントに
著者の療育経験を踏まえると、イライラ感が高ぶっている際に、柔らかい拒否の表現は難しいため、著書にあるように、落ち着いている時に一緒に考えることが望ましいと思います。
例えば、「やめろ!」というよりも、「やめてほしい」など、他の表現方法を伝えるなどです。
また、柔らかい拒否の表現が理解できたら、ロールプレイでやってみることも大切だと思います。
例えば、信頼関係のある大人や子どもと実際の物の貸し借りなどで練習する方法も効果的だと思います。
視覚的な伝達方法もまた大切です(例:壁に貼ってヒントに)。
著書には、〝ふわふわことばリスト″を壁に貼るアイディアが載っていますが、これはとても面白い考えだと思います(視覚的な理解が強い子には特に有効)。
STEP3 Helpを出す
著書には、大人に助けを求めるために以下の練習方法があるとしています(以下、著書引用)。
対応策を一緒に考える
ロールプレイでやってみる
実際場面でヒントを出す
著者の療育経験を踏まえると、実際に子ども自身がHelpを出すことが難しいケースはよく見られます。
発達障害児の中には、人にどのように頼ればいいかが分からない場合がよくあります。
例えば、「やめてほしい!」とうまく伝達できても、それでも相手が嫌がることを止めない場合など、大人の助けが必要な時において、どうしていいかが分からない状況などです。
このような場合において、困った時は大人に助けを求めるなど対応策を一緒に考えることが大切であり、さらに、事前に実際に起こりうる場面を想定して練習しておくことも効果的だと思います(ロールプレイでやってみる)。
そして、実際にHelpを出す必要が生じることが予想される場面において、事前に大人に相談するように確認を取ることを促すなど、ヒントを出す工夫も必要だと思います(実際場面でヒントを出す)。
以上、【友達とのトラブルが多い発達障害児への対応】応用行動分析学の視点を通して考えるについて見てきました。
大切なこととして、まずは支援のポイントを基盤として、それぞれの子どもの発達段階を踏まえて、今回見てきた対応方法を取り入れながら、新しい行動の学習に結び付けていくことが大切な視点(応用行動分析学の視点)だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践における様々なケースにおいて、支援の引き出しを増やしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.