発達障害児は、発達特性や未学習・誤学習などが影響して正しい行動を学んでいない・学ぶ機会がない場合あります。
正しい行動を学習していくためには、困り感や問題行動などの背景要因を分析し、どのような対応をしていけば正しい行動を身に付けていけるのかを考えていくことが必要です。
発達障害児の中には、勝ち負けのこだわりがとても強いケースが少なからず見られます。
それでは、勝ち負けのこだわりが強い発達障害児に対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、勝ち負けのこだわりが強い発達障害児への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、応用行動分析学の視点を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.」です。
勝ち負けのこだわりが強い子どもへの支援のポイント
著書には、勝ち負けのこだわりが強い子どもへの支援のポイントが3つ記載されています(以下、著書引用)。
1.「負けたほうが得がある」という逆転の発想で始めよう
2.負けてもそこまで負担がない場面を探そう
3.「負け方」のお手本をしっかり示そう
著者のこれまでの療育経験を通しても以上の3点は大切だと感じています。
まず1に関しては、著者はこれまであまり実践したことはありませんが、勝ち負けの境界線を解していくといった方法としては有効だと感じます。
2に関しては、著者は療育現場で非常に多く実践しています。
まずは、負けても負荷の少ないゲームや遊びをその子どもの興味関心に応じて見つけていく必要があります。
キーワードは、ほとんど負けを意識させないような活動から徐々に初めていくことだと思います。
3に関しては、まずは大人が負けても大丈夫だといった手本を見せていくことだと言えます。
著者自身が負ける姿を見せ、その後の立ち振る舞いや言動などから、いかに、負けても大丈夫だといったこと、次に繋がる言動(負けても学びが多いなど)を語っていくことが大切だと感じています。
勝ち負けのこだわりが強い子どもへの対応
著書には、勝ち負けのこだわりが強い子どもへの対応として3つのステップが記載されています(以下、著書引用)。
STEP1 「負けたほうがいいことがあった!」を見てみよう
STEP2 「負けるが勝ち!」ロールプレイに取り組もう!
STEP3 本番でも、「負けるが勝ち」をやってみよう!
それでは、3つのステップについて具体的に見ていきます。
STEP1 「負けたほうがいいことがあった!」を見てみよう
著書には、実際のロールプレイなども含めて、関わり手の大人が負けても大丈夫!負けた方がいいことがあった!というシチュエーションが紹介されています。
その際に、以下の点の配慮が必要だとしています(以下、著書引用)。
あまり本人になじみがなく、勝ち負けが固定化していないものがよいでしょう。
例えば、手にお菓子を隠してどっちに入っているかを当てるゲームなど、負けを許容しやすいゲーム・遊びの工夫が大切です。
STEP2 「負けるが勝ち!」ロールプレイに取り組もう!
著書には、〝負けるが勝ち″のロールプレイの方法が記載されています(以下、そのポイントについて著書を引用)。
とにかくわざとらしく、コミカルに負けを演出
ポイントもおやつなど惜しみなく使う
どっちが負けるかを取り合ってみせる
著者の療育経験を踏まえてみても、負けることを楽しめる工夫や負けても大丈夫だと思える大人の演出はとても大切だと思います。
その際に、「わー負けた!でも大丈夫!」などコミカルな演出は、負けを笑いにできますし(とにかくわざとらしく、コミカルに負けを演出)、負けると逆にポイントなど報酬がもらえる工夫もとても面白い方法だと思います(ポイントもおやつなど惜しみなく使う)。
また、勝負のある遊びの中で「負けたい!」など、あえて、負けにいく姿勢や言動もまた、負けをネガティブとして見ないような関わりとして楽しい工夫だと思います(どっちが負けるかを取り合ってみせる)。
STEP3 本番でも、「負けるが勝ち」をやってみよう!
著書には、次に〝負けるが勝ち″の本番での方法が記載されています(以下、そのポイントについて著書を引用)。
なるべく負担の少ないゲームから
ご褒美は最初はおおげさに、徐々に減らす
大人も対等に参加しふんだんにモデル提示
著者の療育経験を踏まえてみても、神経衰弱やすごろくなど直ぐに勝ち負けの結果がわかりにくいゲーム・遊びから入った方が良いと感じています(なるべく負担の少ないゲームから)。
逆に、勝ち負けが遊びの過程からはっきりしているものを導入すると、余計、勝ち負けのある遊びやゲームから遠ざかる行動を取る様子が増えていくのだと思います。
また、負けると報酬(おやつやポイントなど)がもらえるといったやり方も、慣れてきたら徐々に減らしていく必要があります(ご褒美は最初はおおげさに、徐々に減らす)。
この遊びは何も子ども対大人だけではありません。
大人同士が対戦して見本を見せることで、俄然、子どもたちは良い見本・刺激を得ることができる場合もあります(大人も対等に参加しふんだんにモデル提示)。
STEP1~STEP3までの取り組み自体、著者は部分的に少し活用したことはありますが、その多くはまだ実践したことがないものです。
そのため、今回は、著書の内容を主にお伝えてしてきました。
著書を通して、勝ち負けのある遊びをいかに面白おかしくできるかが関わりとして大切だということを考えさせられました。
以上、【勝ち負けのこだわりが強い発達障害児への対応】応用行動分析学の視点を通して考えるについて見てきました。
大切なこととして、まずは支援のポイントを基盤として、それぞれの子どもの発達段階・発達特性を踏まえて、今回見てきた対応方法を取り入れながら、新しい行動の学習に結び付けていくことが大切な視点(応用行動分析学の視点)だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も様々な支援のアプローチについて理解を深めていきながら、実践での質を高めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.