発達障害児支援をしていると、時々、スタッフ(支援者・教員など)の対応が〝力で押さえつけた関わり″をしている様子を目にすることがあります。
もちろん、場面や状況によりやむを得ない場合もあります。
一方で、力で押さえつけた関わりには後の子どもたちの行動・言動が反動となって現れる場合があります。
それでは、力で押さえつけた子どもたちへの反動への対応にはどのような方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、力で押さえつけた発達障害児への反動への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、信頼関係を回復するために必要なことについて理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」②.教育技術研究所.」です。
力で押さえつけた発達障害児への反動への対応
著書には一度崩れてしまった学級への対応のポイントが4つ記載されています(以下、著書引用)。
- 成功経験をとにかくさせる
- 学力を伸ばす
- 教師のしゃべる量を半分以下にする
- 〝7割が正常機能すること″を目指す
以上の対応は療育現場にも応用できるところがあり、また、大人との信頼関係の回復においても有効な点があると思います。
それでは、次に、療育現場との関連性の深い1、3、4について具体的に見ていきます。
1.成功体験をとにかくさせる
成功体験は、教育現場、療育現場など人を育てる領域に関わっている方には必須の取り組み内容だと感じています。
成功体験を重ねるためには、日々、子どもたちの様子を観察していること、そして、子どもの能力や発達特性、性格についても把握しておく必要があります。
成功体験をうまく積み重ねていけるように関わってくれた大人の存在には子どもたちは、自然と信頼をおくようになります。
特に、発達障害のある子どもたちにとっては、他者の比較の中では成功を感じる場面が少なく、個人の内面の変化にフォーカスを当てて評価していく必要があるからです。
著者も日々の活動の中で、子どもの中での頑張りや進歩などを褒めるように意識しています。
短期的には、あまり変化がなくても、長期的にみると子どもの自信に繋がっていったり、また、著者との信頼関係の構築に大きく寄与していると感じることがあります。
2.先生のしゃべる量を半分以下にする
著者はときどき話の内容が全く頭に入っていないと感じる子どもたちに出会うことがあります。
その中の一定数は、おそらく著者の伝え方の悪さがあるのだと思います。
発達障害児の中には、ワーキングメモリの能力が他の能力と比べて低い子どもたちが多くいます。
ワーキングメモリとは、記憶に関わる力であり、例えば、大人が話した内容を保持し自分の中でその情報を操作するなどがあります。
ワーキングメモリの力が低いと、大人が多くの情報を提示しても保持することが難しくなってしまいます。
そのため、話の内容はその子が理解できるレベルの内容を短く簡潔に伝えることが重要になります。
4.〝7割が正常機能すること″を目指す
学級全体を見てもすべての子どもたちが荒れているわけではなく、中には、真面目に取り組んでいる子どももいます。
そのため、荒れている子どもたちへの対応も重要ですが、他の真面目に取り組んでいる生徒にも目を向けていくことがとても重要です。
そして、学級の7割の生徒と信頼関係ができてくるとクラスがうまく機能していくと著書には書かれています。
著者も療育現場での対応で気をつけていることは、集団の中でも、おとなしくあまり手のかからない子どもたちへの対応についても丁寧に行っていくということです。
こうした対応により徐々に集団内が安定していき、よい雰囲気の事業所になってくるのだと感じています。
以上、【力で押さえつけた発達障害児への反動への対応】信頼関係を回復するために必要なことについて見てきました。
今回は、信頼関係の回復をはかるためにいくつかポイントに分けて見てきました。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も力で押さえつけた対応にならない方法を模索していきながら、将来を見据えて子どもたちのより良い発達に繋がるような関わり方を考え実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【発達障害児と信頼関係がうまく築けない理由とは?】力で押さえつけた関わりの反動から考える」
参考となる書籍の紹介は以下です。
関連記事:「発達障害の支援に関するおすすめ本5選【初級~中級編】」
小嶋悠紀(2023)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」②.教育技術研究所.