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前庭感覚

【前庭感覚への支援方法:遊具の活用例】療育経験を通して考える

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発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。

そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。

感覚の問題を考えるにあたってとても大切な感覚として〝前庭感覚″があります。

前庭感覚″とは、簡単に言えば〝バランス感覚″のことを指します。

発達に躓きのある子どもの中には、この〝前庭感覚″がうまく育っていない場合もあります。

 

それでは、前庭感覚を育てていくためには、どのような支援方法が有効なのでしょうか?

 

そこで、今回は、前庭感覚への支援方法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、遊具の活用例を通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。

 

 

 

前庭感覚への支援方法:遊具の活用例

子どもの〝前庭感覚(バランス感覚)″を育てていくためには、体全身を使った活動が有効です。

子どもは様々な揺れを感じる経験を通して、〝前庭感覚(バランス感覚)″を養っていくことができます。

前庭感覚(バランス感覚)″を養うためには、次のような遊具があります(以下、著書引用)。

トランポリ(上下の揺れ刺激)

 

ブランコ(前後の揺れ刺激)

 

ボルスタースイング(左右の揺れ刺激)

 

タイヤブランコ(360度の揺れ刺激)

 

スクーターボード(抗重力進展活動+揺れ刺激)

 

フレキサースイング(360度の揺れ刺激+抗重力屈曲活動)

 

以上、6つの遊具は、どれも著者が療育施設にいた頃によく活用していたものです。

 

 


まず、〝トランポリ″ですが、〝前庭感覚(バランス感覚)″を育てる上で、最も一般的・有名なものだと言えます。

著者の療育施設には、様々なトランポリ(エアートランポリン、大きなトランポリンから小さなトランポリンなど)がありました。

子どもたちの多くは、トランポリンを見ると自ら駆け寄ってきて、跳んだり着座の状態で揺れを楽しむ、さらには、著者が持ち上げて、さらに高い上下の揺れを楽しむなど様々な遊び方をしていました。

 


次に、〝ボルスタースイング″ですが、このブランコは、円柱(サンドバックのようなもの)のブランコを横にして、それにまたがって乗り、前後の揺れを感じる遊具になります。

以下、その特徴について見て行きます(著書引用)。

ブランコとは異なり、左右の前庭感覚刺激を入れることができる→中心軸ができ、体幹(左右の脇腹周辺)の筋緊張が適切に働くようになる→姿勢が改善される

 

著書にもある通り、〝ボルスタースイング″の特徴は、通常の〝ブランコ″とは異なり、ブランコが前後に揺れることで前後に加えて左右の感覚も刺激されるという遊具です。

通常の〝ブランコ″が前後の揺れの感覚が刺激されるのに対して、左右も刺激されることが特徴としてあります。

著者の療育施設では〝ボルスタースイング″はフル活用しておりましたが、1~5人程度まで乗ることができるため(子どもの場合だと)、大勢で楽しむことのできるブランコだと言えます。

 


次に、〝スクーターボード″ですが、この遊具は、平らな板に車輪が付いており、その板にうつ伏せになって乗り、誰かが押すことで前に進むことを楽しむものです。

この〝スクーターボード″の特徴は以下です(著書引用)。

直立姿勢ではなく、床に平衡な姿勢での揺れ刺激を経験できる→前庭感覚過敏で、重力不安がある子でも比較的実施しやすい→頭から肩周りの筋緊張を発達させる→猫背の改善

 

著書にある通り、〝スクーターボード″の特徴は、板(ボード)に寝そべった状態で乗る遊具であり、この遊具が動くことで、平衡な姿勢での揺れを経験でき、猫背などの改善に繋がるとされています。

著者の療育施設にも、〝スクーターボード″はありましたが、当時の著者は遊びの一環で取り組んでいたことに留まっており、〝前庭感覚(バランス感覚)″の発達を促すといった視点はあまりなかったように思います。

そして、寝そべった状態で乗るといった姿勢の違いによっても、得られる刺激、育つ感覚に違いがあるのだと感覚統合の視点から多くを学ぶことができるのだと感じています。

 


次に、〝タイヤブランコ″と〝フレキサースイング″ですが、これらの遊具は、360度回転するといったものになっています。

そのため、こられの遊具を活用することで、多様な角度から揺れの刺激を得ることができると考えられています。

著者の療育施設にも、〝タイヤブランコ″と〝フレキサースイング″はありました。

子どもたちは、座ったり、立ったりするなど様々な姿勢で回転する揺れの感覚を楽しんでいました。

揺れ遊びは上下・前後左右以外にも様々な刺激の入力の仕方があるのだと感じることができた遊具だと言えます。

 

 


以上、【前庭感覚への支援方法:遊具の活用例】療育経験を通して考えるについて見てきました。

前庭感覚(バランス感覚)への支援方法には様々なものがありますが、中でも、今回見てきた遊具は子どもが喜んで行えるものだと思います。

もちろん、身近にない遊具もあるかと思いますが、近所にあるブランコでも揺れの感覚を刺激することは多いにできると思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、様々な感覚を育ていくための方法について学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「感覚統合で大切な前庭感覚(平衡感覚)について【療育経験を通して考える】

関連記事:「発達障害児の感覚への支援【公園遊びを例に】

 

 

前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.



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