自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。
自閉症には様々な行動面や心理面の特徴があると考えられています。
中でも、共感化やシステム化の面から自閉症の特徴を説明した書籍等も見られます。
それでは、共感化‐システム化とはどのようなものであり、そして、自閉症の人にはどのような特徴が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、共感化-システム化仮説とは何かについて、自閉症の特徴と関連付けながら考えを深めていきたいと思います。
今回、参照する資料は「サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.」です。
共感化-システム化仮説とは何か?
それでは、1.共感化とは何か?2.システム化とは何か?について、自閉症の特徴と関連付けながら見ていき、最後に、3.共感化-システム仮説とは何か?について見ていきます。
1.共感化とは何か?:自閉症の特徴について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
共感は、TOMや心を読むことを含んでいるいるが、これは共感の認知的構成要素(〝認知的共感″)に過ぎない。二つ目の共感の構成要素は、反応の要素である。他者の考えや気持ちへの適切な情緒的な反応をすることは、共感の感情的要素(〝感情的共感″)と言われる。
著書の内容から、共感には二つの種類があると考えられています。
一つ目は、心の理論などに見られる〝認知的共感″、二つ目は、他者と気持ちを通い合わせる時に見られる情緒的に通じ合うといった〝感情的共感″があります。
〝認知的共感″が、他者の心の状態について言葉を介して認知的に理解する側面が強いのに対して、〝感情的共感″は、喜び・悲しみなど非言語的に気持ちが通じ合うといった側面が強いことが両者の特徴の違いであると言えます。
自閉症の人たちは、共感化指数(EQ)の得点が低いことから、〝共感化″の弱さが特徴としてあると考えられています。
2.システム化とは何か:自閉症の特徴について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
システム化とは、分析したり構成したりすることへの衝動である。
システムを定義することは、〝ルール″に従うことであり、システム化するときには、システムがどう機能するか予測するために、システムを管理するルールを確立しようとする。
著書の内容から、〝システム化″とは、物事の中からルールや規則、構造などを見出していく力だと言えます。
人は、様々な事柄の中からシステムを見出していきます。
例えば、植物の収集が好きな人は、植物の種類の違いを様々な側面によって分類していくことができます(咲く季節・時期の違い、咲く環境・場所の違いなど)。
こうした分類方法によりシステム化する機能のことを〝収集のシステム″と言います。
他にも、著書には、〝機械的なシステム″〝数的なシステム″〝抽象化のシステム″〝自然のシステム″〝社会的なシステム″〝運動のシステム″を取り上げています。
自閉症の人たちは、システム化指数(SQ)の得点が高いことから、〝システム化″の強さが特徴としてあると考えられています。
3.共感化-システム化仮説とは何か?自閉症の特徴について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
共感化-システム化仮説によれば、自閉症とアスペルガー症候群は、共感(標準以下の成績)だけでなく、第2の心理学的要素であるシステム化が標準かそれ以上の成績でもあることで、非常にはっきりと判別される。
著書の内容から、〝共感化-システム化仮説″とは、共感化の弱さ、システム化の強さといった観点から自閉症の特徴を説明したものだと言えます。
著書の中には、〝共感化-システム化仮説″の長所として、自閉症の複数の特徴を説明できるといった記載があります。
つまり、共感化の弱さは、自閉症の特徴である対人コミュニケーションの困難さの説明に寄与し、システム化の強さは、自閉症のもう一つの特徴であるこだわり行動(興味関心が限定されている、同一性保持など)の説明に寄与していると考えられています。
以上、【共感化-システム化仮説とは何か?】自閉症の特徴について考えるについて見てきました。
最近の自閉症関連の書籍を見ると、〝共感化‐システム化仮説″の記載よりも、実行機能、中枢性統合、心の理論からの説明が多いといった印象があります。
一方で、今回取り上げた〝共感化-システム化仮説″も著者がこれまで関わってきた自閉症の人たちの特徴を説明する上で多くのヒントを与えてくれるものだと感じています。
大切なことは、自閉症の人たちの行動の背景にはどのような心理面・行動面の特徴があるのかを理解していくことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もさらに質の高い療育を行っていけるように、自閉症の人たちが持つ特性の理解を様々な観点から深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.