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【共同注意行動の促し方②】受動的共同注意をキーワードに考える

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共同注意(joint attention)″とは、ある対象に対する注意を他者と共有することを指します。

〝共同注意″の発達は、後のコミュニケーションの育ちにおいて非常に重要な意味を持つものだと考えられています。

 

自閉症児は、〝共同注意″の発達が定型発達児とは異なると言われています。

 

関連記事:「【自閉症児の共同注意の特徴】定型発達児との違いを通して考える

 

そのため、子どもの〝共同注意″行動を理解し促していく関わり方が必要になってきます。

 

それでは、子どもの共同注意行動を促していくためには、どのような方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、共同注意行動の促し方について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、受動的共同注意をキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.」です。

 

 

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共同注意行動の促し方:受動的共同注意をキーワードに考える

共同注意行動の促し方には、子どもの発達段階に応じて関わり方のポイントがあります。

ここで、〝受動的共同注意″をキーワードに見ていきます。

 

それでは、〝受動的共同注意″の促し方のポイントについて、著書を引用しながら見ていきます。

<目的>

①大人が誘いかけた「物を介したあそびの型(あそびのフォーマット)」に参加する中で、相手の行為に注目し、対象となる物を見る。

②あそびのフォーマットに参加する中で、活動の目標(goal)を理解し、大人の行為の模倣をする。

著書の内容から、〝受動的共同注意″の関係への促し方として、大人から子どもに遊びへの誘いかけを通して、大人が注意を向けている行為・対象に子どもが注意を向けることを目的としています。

さらに、子どもが遊びのフォーマットに参加していく中で、活動の目標を理解しながら、大人の行為を模倣することも目的としています。

例えば、ボールを相手や的に向けて投げる(目標:相手・的、模倣:投げる)、積み木やブロックを高く積む(目標:高く積む、模倣:積む)などがあります。

こうした遊びのフォーマットを大人が率先して子どもに介入していく中で、大人が見せる遊びの目標を、子どもが理解し受動的ではありますが、大人と注意を共有する行為がこの段階には必要だと言えます。

前段階の〝支持的共同注意″は、子どもの注意に大人が注意を向ける段階でしたが、〝受動的共同注意″は、大人から遊びに誘いかけ子どもの注意を促す段階だと言えます。

 

関連記事:「【共同注意行動の促し方①】支持的共同注意をキーワードに考える

 

 

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それでは、次に、〝受動的共同注意″の関係への促し方について、著者の療育経験を踏まえて見ていきます。

 

著者の経験談

著者はこれまで未就学児から学童期の自閉症児など、様々な発達障害児と療育現場を通して関わりを持ってきました。

 

事例:自閉症児A君(当時、未就学児)

A君は物を並べて遊ぶことが好きな子どもでした。

そのため、著者はA君に〝ドミノ倒し遊び″が良いのではないかと思いつきました。

著者はA君の近くで、ブロックを並べていき、ドミノを倒す少し前に、A君に「ドミノを倒すよ!」と伝えて、注意を促し、ドミノを倒しました。

すると、A君は、ドミノが倒れる様子を注視して、ドミノが倒れ終わると、自分でも並べ始めました。

途中で、A君は著者にもドミノを並べるのを手伝って欲しいと発声と身振りを交えて伝えてきました。

並び終えたドミノが倒れると、嬉しそうに著者の表情を見る様子もありました。

その後も、ブロックだけではなく、本など様々な物を並べて倒す遊びをA君と一緒に行うことができました。

こうして、著者が遊びのフォーマットを活用して、A君に誘い掛けることで、共同注意を促すことができた良い事例だと思います。

 

もちろん、並べて遊ぶのが好きな子どもの中には、倒したくない!完成したものを崩したくない!と感じる子どももいるため、様々な遊びからのアプローチが必要だと思います。

例えば、部屋の端から端まで並べてみる、高く積んでいく遊びなどもありだと思います。

 

 


以上、【共同注意行動の促し方②】受動的共同注意をキーワードに考えるについて見てきました。

共同注意の促し方には、ボール遊びや絵本、楽器など様々なアイテムがあります。

そのため、子どもに合った遊びを手探りで探し遊びへの誘い掛けを行っていくことが大切だと言えます。

著者は、子どもが好きなこと、興味関心のあることから介入することが大切だと感じる一方で、関わり手の好き・得意・関わりやすい遊びからのアプローチもまたとても大切だと感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもとの関わりの中で、様々な共有経験を作っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.

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