〝共同注意″は、発達心理学領域において、子どもの発達を見る視点として、とても重要なキーワードだと考えられています。
また、自閉症など発達障害の理解においても重要なものだと言えます。
それでは、共同注意とは一体どのような概念なのでしょうか?
また、共同注意の進展は、その後の発達においてどのような意味を持つのでしょうか?
そこで、今回は、共同注意とは何かについて、三項関係・9カ月革命・社会的参照をキーワードに理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.」です。
共同注意とは何か:三項関係・社会的参照・9カ月革命をキーワードに考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
対象について、他者と一緒にかかわるためには、「他者と自分と対象」の三つの間の関係(三項関係)の成立が必須です。この三項関係の鍵を握るのが、「共同注意(joint attention)」です。共同注意とは、ある対象に対する注意を他者と共有することとされます。
三項関係と共同注意の成立は、生後9か月頃からできるようになります。
著書の内容から、〝共同注意(joint attention)″とは、ある対象に対する注意を他者と共有することだと記載されています。
そして、〝共同注意″には、三項関係の成立が必須となっています。
三項関係及び、共同注意の成立は、生後9カ月頃から見られるようになると言われています。
アメリカの認知心理学者であるマイケル・トマセロはこれを〝9カ月革命″を名付けています。
三項関係が成立する以前は、二項関係といって、子ども⇔大人、子ども⇔対象(物など)の二者関係での関わりが中心です。
例えば、子どもがおもちゃを手で触ったり・舐めたりする行為や、大人が笑いかけると子どもが笑い返す(その逆もあります)などがあります。
ここでの関わりは、対象物を介しての、子ども⇔大人との三者関係はまだ見られていません。
一方で、生後9カ月頃から、子ども⇔対象物⇔大人、の三者関係が見られるようになります。
例えば、大人が車を指さして、「ブーブーだよ!」と子どもに語りかけると、子どもは車の方に視線を向けるなどがあります。
結果、大人と子どもは車といった同じ対象物を見るといった注意を共有している状態が発生することになります。
つまり、三項関係の成立の中で生じる〝共同注意″行動です。
共同注意が見られるようになると、〝社会的参照″も見られる(1歳前後頃に)ようになってきています。
〝社会的参照(視・行動)″とは、他者の表情などを頼りに、自分の行動の良し悪しを判断する手掛かりを得ることを指します。
例えば、子どもにとって新奇な場所(初めて見る公園の砂場など)を見た時に、その場所に行っても大丈夫かどうかを親の表情を見て判断するなどがあります。
親が安心した表情をしていれば子どもは行っても良いと判断する一方で、不安な表情をしていれば行くと危ない・良くないと判断することになります。
このように、共同注意が見られるようになると、子ども自身の行動基準や外界の様々な対象に関する知識の獲得において、〝他者という存在を介した″行動基準の獲得や知識の拡大などが見られるようになっていきます。
共同注意(行動)の進展はその後の発達においてどのような意味を持つのか
それでは、〝共同注意″の進展は、発達上どのような意味を持つのでしょうか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
二項関係から三項関係への進展は、社会性やコミュニケーションの発達にとって決定的に重要です。この進展がないと、自分と他者の認識が同じであるのか違うのかに気づくことができません。自分の世界に閉じたままともいえます。
著書の内容から、共同注意(行動)が進展することは、後の、社会性やコミュニケーションの発達に大きな影響を及ぼすと考えられています。
また、自他の認識(自分と他者は異なる存在といった理解)においても、共同注意(行動)は基盤となるものだと言えます。
一方で、自閉症児には、共同注意が少ない、あるいは遅れて発達すると言われています。
そのため、他者の意図・信念・気持ちといった〝心の状態″の理解(心の理論の発達)の獲得が遅れると考えられています。
現在では、定型発達児・者とは異なる心の理解のプロセスがあると考えられています。
関連記事:「【心の理論から見た他者理解のプロセス】自閉症を例に考える」
そのため、発達早期から、共同注意(行動)の発達を理解する視点を持つことは、後の社会性やコミュニケーションへの理解や支援の手がかりに繋げていくことができます。
以上、【共同注意とは何か?】三項関係・9カ月革命・社会的参照をキーワードに考えるについて見てきました。
共同注意は私たちの社会性・コミュニケーションの進展においてとても大切なものです。
そして、共同注意を理解することは、社会性・コミュニケーションに躓きを抱えている人への理解の手助けにも繋がっていきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場において、子どもたちと様々な対象を共有していく楽しさ・喜びを実感できるような取り組みを行っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「自閉症児の共同注意について:現場での経験を通してその意味を考える」
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林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.