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【偏食への理解と対応②】発達障害児支援の現場を通して考える

投稿日:2024年9月20日 更新日:

 

発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。

そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。

感覚の問題(偏り)によって生じる問題の一つに〝偏食″があります。

偏食″は、目には見えにくい様々な背景要因があると考えられています。

 

それでは、偏食を理解し対応していく上でどのような視点が必要になるのでしょうか?

 

そこで、今回は、偏食への理解と対応②について、臨床発達心理士である著者の発達障害児支援の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。

 

 

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偏食の背景要因について

偏食″には様々な背景要因があると考えられています。

そのため、背景要因を理解しその上で対応策を考えていく必要があります。

 

今回は、次の3つの観点から〝偏食″について見ていきます(以下、著書引用)。

温冷覚の困難による偏食

 

嗅覚の困難による偏食

 

味覚の困難のよる偏食

 

 


それでは、次に、それぞれについて具体的に見ていきます。

 

④温冷覚の困難による偏食

触覚″の中には、〝温冷覚″もあります。

〝温冷覚″とは、文字通り、〝温かさや冷たさを感じる感覚″のことを指します。

〝温冷覚″に過敏さがあると、温かい食べ物、冷たい食べ物、さらには、金属製の食器などが苦手な場合があります。

 


それでは、こうしたケースにおける対応策について見ていきます(以下、著書引用)。

食事の温度を子どもが食べられる温度に冷ます(温める)という方法で食べられることがあります。

 

温度が変化しにくいプラスチック製の食器を使うことで平気になることもあります。

 

著書にあるように、〝温冷覚″が過敏なケースへの対応として、食材を適度な温度に調整する、食器の工夫をするなどの方法があります。

著者が療育現場で見ている子どもの中には、金属製の容器(水筒など)だと飲食が難しい児童がいます。

一方で、プラスチック製の容器を準備すると完食するようになったケースもあります。

おそらくこの子どもは、〝温冷覚″に過敏性さがあったと思われます。

 

 

⑤嗅覚の困難による偏食

〝嗅覚″に過敏さがあると食事に非常に大きな影響を及ぼすと考えられています。

それは、人はまずはにおいを嗅いで、その対象が安全かどうかを判断する本能が備わっているからです。

〝嗅覚″の過敏さがある人は、定型発達児・者よりも匂いに過敏に反応すると言われています。

 


それでは、こうしたケースにおける対応策について見ていきます(以下、著書引用)。

  • ハーブやスパイスは刺激の少ないものに変更するか、使わない
  • 酸味・苦味のする食品は、揚げたり味つけをしてマイルドなにおいに変更する

 

著書にあるように、〝嗅覚″の〝過敏″さへの対応としては、刺激の少ない食材に変更する、あるいは、刺激の強い食材はマイルドなにおいに変更する工夫をするなどの方法があります。

著者がこれまで見てきた子どもの中には、〝嗅覚″に過敏さのある子どもも少なからずいました。

こうした子どもは、何かを食べる前に、においをしっかりと嗅いで確かめるなどの行為がよく見られます。

そのため、においを嗅いだ時点で〝食べたくない″と判断したものだと、食事を促しても食べることが難しいことがよく見られます。

 

 

⑥味覚の困難のよる偏食

〝味覚″は、文字通り食の好を左右する大切な感覚です。

〝味覚″が〝過敏″だと、食材の味付けが、酸味や苦味が強いことで食を拒否するケースが多いと著書には記載があります。

一方で、〝味覚″に〝低反応″があると、味付けが薄いと食べることを拒否する場合もあります。

 


それでは、こうしたケースにおける対応策について見ていきます(以下、著書引用)。

味づけの変更や刺激の少ない食材の変更で食べてくれるケースがあります。

 

  • 味は濃い目だが、ヘルシーなメニューに変更
  • 食事の量を制限する

 

著書にあるように、〝味覚″に〝過敏″さがある場合には、味付けや刺激の少ない食材への変更、そして、〝味覚″に〝低反応″がある場合には、健康に配慮した食事メニューや食事の量の制限などを心掛ける必要があります。

著者が見てきた子どもの中には、味付けが濃いとすぐに食べることを拒む子どもも少なからずいました。

子どもにもよりますが、味付けを調整することで少しずつ食べられるようになったケースもあります。

 

 


以上、【偏食への理解と対応②】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。

偏食と一言でいっても、その背景には様々な要因があると言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も偏食への理解を様々な感覚との関連性から理解する目を養っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【偏食への理解と対応①】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【偏食への理解と対応③】発達障害児支援の現場を通して考える

 

 


感覚統合に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【初級~中級編】

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【中級~上級編】

 

 

前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.


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