発達障害児は、発達特性や未学習・誤学習などが影響して正しい行動を学んでいない・学ぶ機会がない場合あります。
正しい行動を学習していくためには、困り感や問題行動などの背景要因を分析し、どのような対応をしていけば正しい行動を身に付けていけるのかを考えていくことが必要です。
発達障害児の中には、相手との言葉のキャッチボールがうまくできずに、自分が話したいことを一方的に話し続ける様子も少なからず見られます。
それでは、会話が一方的な発達障害児に対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、会話が一方的な発達障害児への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、応用行動分析学の視点を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.」です。
会話が一方な子どもへの支援のポイント
著書には、会話が一方な子どもへの支援のポイントが3つ記載されています(以下、著書引用)。
1.エコー以外の言葉のやりとりを教えよう
2.機能的なコミュニケーションを増やしていこう
3.会話のルールを伝えよう
著者のこれまでの療育経験を通しても以上の3点は大切だと感じています。
まず1に関しては、以下で見るSTEP1と関連づいています。
初期の自閉症児の言葉の特徴として、〝エコー″がとても多く見られます。
例えば、何かお願いしたいことがあると(要求に関するもの)、同じ単語を使うなどです。
この場合、子どもが発する言葉(エコー)以外の反応を返していく視点もまたとても大切だと言えます。
2に関しては、以下で見るSTEP2と関連づいています。
自閉症児などには、テレビのコマーシャルやお気に入りの絵本のフレーズなどの繰り返しが大好きな子どももいます。
このような場合(子どもが耳で聞いた音声をそのまま繰り返す場合など)には、子どもが発した言葉をもう少し実用的に活用できるような関わりが必要になると言えます。
3に関しては、以下で見るSTEP3と関連づいています。
この時期には、ある程度、言葉でのやり取りを相手とできるようにはなるも、まだ相手との言葉のキャッチボールがうまくできない段階にあたります。
例えば、自分の興味関心のある話を一方的にするなどがあります。
そのため、どのように会話を進めていくかなどルールを伝えていく必要があると言えます。
会話が一方な子どもへの対応
著書には、会話が一方な子どもへの対応として3つのステップが記載されています(以下、著書引用)。
STEP1 会話のはじまり
STEP2 会話の幅を広げる
STEP3 会話のルール
それでは、3つのステップについて具体的に見ていきます。
STEP1 会話のはじまり
著書には、言葉に対して言葉で応答するポイントがいくつか記載されています(以下、著書引用)。
かけ声の続き
便利な「うん」
名前を答える
著者の療育経験を踏まえて見ても、関わる大人が会話のはじまりを作る工夫が大切だと感じています。
例えば、「エイエイ・・・」と大人が言い、それに続くかたちで子どもが「おー!」と言う(かけ声の続き)などがあります。
また、イエス・ノーを引き出す関わりも必要です。
例えば、「○○する?」といった大人の質問に、「するorしない」など、意志表示を引き出す関わりです(便利な「うん」とも関連する)。
また、自分の名前を答える声掛けは大人がよくする関わりの一つです(「お名前は?」→「○○」)。
このように、言葉や会話を促すきっかけをサポートすることが言語初期の発達(特にエコーが多く見られる場合)において大切だと言えます。
STEP2 会話の幅を広げる
著書には、次のステップとして、会話を少しずつ発展させるポイントが記載されています(以下、著書引用)。
身近な単語で答えられるクイズ
質問を聞き分ける
あいづち
著者の療育経験を踏まえて見ても、子どもが興味のある話題を切り口に、様々な問いかけを大人(著者)がすることがよくあります(身近な単語で答えられるクイズ、質問を聞き分ける)。
クイズや質問などをきっかけに、子どもが楽しく応える経験が積み重なっていくことで、相互の言葉でのやり取りが活性化していくのだと思います。
また、子どもが話している内容に対して、大人があいづちを打ちながらじっくり話を聞く姿勢を取ることは、後に、子どもが相手の話をじっくり聞けるようにためにも(あいづちを打ちながら)大切なことだと思います。
そのためにも、例えば、著書にあるように、あいづちの練習など、子どもがあいづちを打ったら話を続けることを意識した関わりも方法の一つだと言えます。
STEP3 会話のルール
著書には、次のステップとして、会話を円滑に進めていくためのポイント(〝ワザ″)が記載されています(以下、著書引用)。
質問を引き出す
いろいろなあいづち
順番に話す
著者の療育経験を踏まえて見ても、会話がうまく進むためのテクニックは日頃からよく行っています。
例えば、子どもが気になること・聞いてみたくなることを著者が発することで、子どもが「なになに??」と聞いてくることがよくあります(質問を引き出す)。
こうした関わりがうまくなるためにも、日頃から子どもたちの興味関心をリサーチしておくことが大切です。
また、「へー」「そっか」「そうなんだ」など、いろいろなあいづちを大人がモデルになって見せることも大切だと思います。
最後に、時間を決めて(タイマーなどで)、話す人・聞く人を交代するといったルールを設ける(順番に話す)ことも有効な方法だと思います。
以上、【会話が一方的な発達障害児への対応】応用行動分析学の視点を通して考えるについて見てきました。
大切なこととして、まずは支援のポイントを基盤として、それぞれの子どもの発達段階・発達特性を踏まえて、今回見てきた対応方法を取り入れながら、新しい行動の学習に結び付けていくことが大切な視点(応用行動分析学の視点)だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も言葉の発達を理解していきながら、会話に関する支援力も身に付けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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熊仁美・竹内弓乃(2022)「できる」が増える!「困った行動」が減る!発達障害の子への言葉かけ事典.大和出版.