〝不適応行動″とは、例えば、他害、暴言、かんしゃく、パニック、逃避行動など望ましくない行動を指します。
〝問題行動″とも言われる〝不適応行動″は、長期化すると〝二次障害″に繋がる可能性もあり(すでに二次障害が見られるケースもあります)、早期の理解と対応が必要です。
著者は療育現場(発達支援の現場)で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちを長年見てきていますが、その中には、少なからず〝不適応行動″を見せている子どもたちもいます。
〝不適応行動″に対して、行動の機能を分析して対応することが大切だと考えられています。
関連記事:「【不適応行動の原因について】4つの機能を通して考える」
一方で、対応するにあたり子どもとの信頼関係が前提として大切になってきます。
それでは、子どもからの信頼や尊敬を得るためには、どのような働きかけが重要だと言えるのでしょうか?
そこで、今回は、不適応行動の改善に重要なセロトニン対応について、臨床発達心理士である著者の発達障害児支援の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「渡辺道治(2024)特別支援教育に学ぶ 発達が気になる子の教え方 The BEST.東洋館出版社.」です。
不適応行動の改善に重要なセロトニン対応について
〝セロトニン″とは、安心感や癒しを与える幸せホルモンの一つです。
発達障害児の中には、背景要因は多様でありながらも、日々、様々な不安を抱えて生きているケースも多く見られます。
そして、不安やイライラした状態が長期化すると〝不適応行動″へと発展するリスクもありますし、現に、〝不適応行動″が生じている子どもにはセロトニンが不足してる場合もあります。
そこで、著書では不安傾向が強い子どもに対して、〝セロトニン対応″が有効であると述べられています。
そして、〝セロトニン対応″のキーワードは次の5つがあります(以下、著書引用)。
褒める
微笑む
話しかける
触る
見つめる
著者も療育現場で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わる機会が多くありますが、子どもとの信頼がうまくできていると感じるものとして、以上の5つの関わりが自然とできているケースが多いと感じています。
それでは、以上の5つの対応について具体的に見ていきます。
1.褒める
以下、著書を引用しながら見ていきます。
褒めるポイントはどこかというと、実は目なんです。褒めるのが上手な方は、目の周りの眼輪筋がよく働きます。
〝褒める″ことは、多くの大人が子どもと関わる際に、大切にしていることだと思います。
そして、〝褒める″のポイントは、著書でいう〝目″が重要な働きをしています。
〝目″を大きく見開いて褒めたり、併せて、声のトーンを高くして褒めるなど、言葉の内容以外の情報もまた大切だと言えます。
著者も療育現場での経験上、〝褒める″時には、少し大袈裟なくらいオーバーに褒め、その際に、目を見開いたり、声のトーンを高くして褒めることがよくあります。
すると、子どもたちが著者の褒める姿を見て、とても嬉しそうにする様子がよく見られます。
2.微笑む
以下、著書を引用しながら見ていきます。
この笑う場合のポイントはどこかというと、実は歯なんです。
先ほど見た〝褒める″が目に重点があるのに対して、〝微笑み″は〝歯″に重点がある、つまり、子どもは歯から微笑みの表情を強く認識しているということです。
著者も子どもたが本当に楽しんでいる時など、目や声のトーンに加えて、口(歯がはっきりと見えている)の様子から、楽しさが強く伝わってくることがあると感じています。
そして、こうした表情の様子は子どもから見ても同様のこと(大人が見せる微笑みの表情)が言えるのだと思います。
3.話しかける
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ここでのポイントは、時間帯とか時期です。
〝話しかける″上で大切なポイントは、著書にあるように、時間帯や時期を意識することです。
例えば、少し不安感が強くなる時期に話しかける、朝一番などはじまりの時間帯に話しかけることで、子どもの心は安心することがあります。
著者も子どもと長く関わっていると、どの時間帯や時期に不安感が強くなるのか等、気持ちの変化に気づきやすくなります。
そのため、不安感が強くなるタイミングで話しかけることで、子どもの情緒が安心したと感じることができた例は多くあったように思います。
4.触る
以下、著書を引用しながら見ていきます。
触り方もいくつかポイントがあります。(中略)おすすめは、肩とかをポンポンって優しく2回タッチしてあげたりすることです。これはタッピングとも言います。
〝触る″ことで、子どもは安心感を得ることができますが、著書にあるように、触り方にも工夫が必要です。
お勧めは、肩を優しくタッチする方法です。
著者も子どもたちに対して、触ることで安心感を与えようとすることはよくあります。
一方で、感覚の過敏さや人に対して警戒心が強い子どももいるため、触る箇所や強度などには注意が必要だと感じています。
5.見つめる
以下、著書を引用しながら見ていきます。
先生と目が合うと、「ああ、見てくれているんだな」と子どもたちがそれで安心を覚えたりすることがあります。このときに表情も大切です。
〝見つめる″ことで、著書にあるように、子どもは自分に注意が向けられているといった安心感を得ることができます。
その時の表情も微笑むなど併せて大切になってきます。
著者がこれまで関わった自閉症児で視線が合わない子どもがいましたが、日々の関わりを通して、よく視線が合うようになったケースもあります。
今では、楽しいことを共有する際には、著者が笑顔で見つめると、とても嬉しそうに見つめ返してくれます。
以上、【不適応行動の改善に重要なセロトニン対応について】発達障害児支援を例にについて見てきました。
不適応行動の改善には、セロトニンを活性化させること、つまり、大人との関係の質を高めることもまた大切だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場において、日々、子どもたちがセロトニンを多く分泌していけるように、セロトニン対応についても実践を継続していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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渡辺道治(2024)特別支援教育に学ぶ 発達が気になる子の教え方 The BEST.東洋館出版社.