〝不適応行動″とは、例えば、他害、暴言、かんしゃく、パニック、逃避行動など望ましくない行動を指します。
〝問題行動″とも言われる〝不適応行動″は、長期化すると〝二次障害″に繋がる可能性もあり(すでに二次障害が見られるケースもあります)、早期の理解と対応が必要です。
著者は療育現場(発達支援の現場)で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちを長年見てきていますが、その中には、少なからず〝不適応行動″を見せている子どもたちもいます。
〝不適応行動″への対応をしていく際に、まず大切なことは、行動の背景(〝原因″)を探るという視点が必要です。
それでは、不適応行動の原因を理解するためには、どのような視点があるのでしょうか?
そこで、今回は、不適応行動の原因を理解する視点について、感覚→認知→行動のメカニズムを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「渡辺道治(2024)特別支援教育に学ぶ 発達が気になる子の教え方 The BEST.東洋館出版社.」です。
不適応行動の原因を理解する視点:感覚→認知→行動のメカニズムを例に
著書には、〝不適応行動″を見せる子どもの行動には3つのステップがあると記載されています(以下、著書引用)。
感覚(世の中を感じる)➡認知(意味づけをする)➡行動(反応する)
以上の3つのステップを踏まえて、〝不適応行動″の発生のメカニズムを理解していくこと、〝見当″をつけていくことが大切です。
私たちは、子どもの〝不適応行動″を見る際に、最後の行動に強く反応してしまう傾向があります。
そのため、3つのステップ(メカニズム)を踏まえて、〝不適応行動″がなぜ生じているのかを考えていくことが必要です。
それでは、次に〝①感覚″〝②認知″〝③行動″について具体的に見ていきます。
①感覚とは
以下、著書を引用しながら見ていきます。
感覚というのは、視覚や味覚、聴覚とか触覚のことですね。これは世の中のすべての事象を感じる情報の入り口とも言うことができます。そして大事なのは、この感覚は人によってバラバラだということです。
著書にあるように、〝感覚″とは外界の世界を知る情報の入り口です。
感覚には、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、前庭感覚、固有感覚など様々な感覚があります。
そして、発達障害児など発達に躓きのある子どもたちには、様々な感覚の過敏さや低反応(鈍麻)が見られることが分かっています。
つまり、情報の入り口となる感覚世界には非常に個人差があるということの理解がまずは大切なってきます。
②認知とは
以下、著書を引用しながら見ていきます。
感覚という入り口を通って入ってきた情報に、次は「認知」という意味付けがなされます。「意味付け」とは、簡単に言うと、良いとか悪いとか、あるいは好きとか嫌いとかです。
著書にあるように、〝認知″とは、情報に対する良い・悪い、好き・嫌いといった意味付けです。
例えば、読み書きに苦手意識を持っている子どもが新しいテキストを渡された際に、〝よし!自分にはできる!やってみよう!″とは簡単に思えないはずです。
これは、認知の段階で悪い・嫌いといったネガティブな意味付けを学習のある時点で持ってしまったことにあります。
つまり、感覚と同様に認知もまた個人差があるということです。
③行動とは
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「感覚」という入り口を通ってきた情報に、「認知」という色付けがなされて、最終的に「行動」を起こします。
発達の凸凹が強いお子さんにとってみれば、この行動の選択肢が少ないことも往々にして起こりうるわけです。
著書にあるように、感覚→認知の情報処理を経て最後に到達するものが〝行動″になります。
そして、冒頭に記載した、他害、暴言、かんしゃく、パニック、逃避行動など望ましくない行動が〝不適応行動″あるいは〝問題行動″として周囲から受け取られるものになります。
発達に躓きがある子どもたちは、未学習や誤学習などにより、自身のネガティブな感情を適切な形として行動に繋げることが難しい場合があります。
つまり、著書にある〝行動の選択肢が少ない″ため〝不適応行動″でしか、自身の行動表出ができない場合があるということです。
そのため、①→②→③の3つのステップ(メカニズム)を踏まえて、不適応行動の原因を理解していきながら、対応策を考えていくことがとても大切です。
以上、【不適応行動の原因を理解する視点】感覚→認知→行動のメカニズムを通して考えるについて見てきました。
不適応行動を見ると、どうしても最終的な行動面にのみフォーカスしてしまうことが著者にはよく起こります。
一方で、これまで不適応行動が減少・改善されていったケースの多くが行動以前(以外)の情報(感覚・認知)を踏まえてアプローチしたものであったと思います。
そのため、今回見てきた感覚→認知→行動のメカニズムを踏まえた不適応行動の理解がとても大切なのだと著者自身も強く感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、不適応行動の原因の理解と対応策を考える力を身に付けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【不適応行動の原因について】4つの機能を通して考える」
渡辺道治(2024)特別支援教育に学ぶ 発達が気になる子の教え方 The BEST.東洋館出版社.