〝不適応行動″とは、例えば、他害、暴言、かんしゃく、パニック、逃避行動など望ましくない行動を指します。
〝問題行動″とも言われる〝不適応行動″は、長期化すると〝二次障害″に繋がる可能性もあり(すでに二次障害が見られるケースもあります)、早期の理解と対応が必要です。
著者は療育現場(発達支援の現場)で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちを長年見てきていますが、その中には、少なからず〝不適応行動″を見せている子どもたちもいます。
〝不適応行動″への対応をしていく際に、まず大切なことは、行動の背景(〝原因″)を探るという視点が必要です。
それでは、不適応行動の原因を理解するためには、どのような視点があるのでしょうか?
そこで、今回は、不適応行動の原因を理解する視点について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、4つの機能を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「渡辺道治(2024)特別支援教育に学ぶ 発達が気になる子の教え方 The BEST.東洋館出版社.」です。
不適応行動の原因を理解する視点:4つの機能を例に
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもたちがとる行動、それが不適応行動と呼ばれるものであっても、すべての行動には機能があって、それらは大きく4つに分けることができます(この4つは応用行動分析学における「機能分析」の知見を基にしています)。
著書の内容から、〝不適応行動″に見られる〝行動″には〝機能″があり、その〝機能″は大きく4つに分類できるとされています。
不適応行動に見られる行動を機能の点から分類していくことで、行動の意味がより明確化してきます。
そのため、対応方法もより具体化してきます。
この視点は、私たちの行動には、すべて意味があり、その行動は4つに分類できるという前提のもとに成り立っています。
それでは、次に4つの〝機能″について見ていきます。
なお、4つの行動(機能)は、何かを回避する行動(①)、何かを得ようする行動(②、③、④)に大きく分類できます。
①逃避行動
以下、著書を引用しながら見ていきます。
・目の前のことをやりたくない
・嫌な活動や場から逃げたい
・不快な情報が入ってくるのを拒んでいる
〝逃避行動″とは、嫌な活動、嫌な刺激からの回避行動を指します。
例えば、苦手な教科・活動の時だけその場を避ける行動が見られる、特定の人物がいるとその場所を避けて行動するなどがあります。
著者の療育現場でも〝逃避行動″は時々見かけることがあります。
最も多いと感じるものに、特定の人からの回避があります。そして、その原因には、遊びの邪魔をされる危機感や声を苦手としている印象があります。
一方で、発達障害児の多くは、自分が苦手なことを言葉で表現する困難さもあります。
そのため、〝感覚″〝認知″の段階でどのような情報を苦手としており、それが〝逃避行動″へと繋がっているのかをアセスメントすることが大切だと感じています。
②要求行動
以下、著書を引用しながら見ていきます。
・手元にない○○がほしい
・活動に参加したい
・特権を手に入れたい
〝要求行動″とは、その名の通り、何か(もの、活動、特権など)を手に入れようと試みる行動です。
例えば、お菓子など食べ物が欲しい、ご褒美のトークン(シールなど)が欲しいなどがあります。
著者の療育現場でも、〝要求行動″を見せる子どもがトラブルへと発展してしまったケースは多くあったように思います。
例えば、他児集団がやっている活動に無理矢理混ざることで生じる他児トラブル、おやつや水分が欲しくて待てないことからイライラが増加しトラブルへと発展したなどがありました。
③注意喚起行動
以下、著書を引用しながら見ていきます。
・大人の注目を引きたい
・お友達に気づいてほしい
・たくさんの人に認めてほしい
〝注意喚起行動″とは、何か具体的に物が手に入るのではなく、周囲からの関心や注目、承認などを得ようする行動です。
例えば、集団の中で何か面白いことをして周囲の注目を得ようとしたり、自分ができたこと、取り組んでいる姿を見てもらいたいなど称賛して欲しいと周囲に呼びかける行動があります。
こうした子どもの〝注意喚起行動″が過剰にネガティブに働いてしまったと感じる経験は著者の療育現場でもあります。
例えば、他児の遊びにちょっかいを出し、それを見て周囲が止めようとしたり、叱責を繰り返す行動を見て、さらに〝注意喚起行動″が増加してしまったなどがあります。
④自己刺激行動
以下、著書を引用しながら見ていきます。
・その活動自体が楽しい
・その活動をしていると落ち着く
・無意識でしていることも多い
〝自己刺激行動″とは、自らの身体に刺激を与える行動を指します。
例えば、コマのように体をクルクルと回したり、高い所からのジャンプを繰り返すなどがあります。
何かを得ようと要求したり(要求行動)、注目を得ようなどと外の世界(他者)に働きかける行動(注意喚起行動)とは異なり、自分自身で刺激を入れることで安心感や楽しさなどを得ようとする行動です。
著者が療育現場で見ている子ども、中でも、自閉症児に多く見られるものに〝自己刺激行動″があります。
〝自己刺激行動″は一見すると、一人で完結する行動のように見えますが、時と場合によっては危険な行為、集団活動にマイナスな影響を及ぼすこともあると感じています。
以上、【不適応行動の原因について】4つの機能を通して考えるについて見てきました。
不適応行動の原因を4つの機能に分類することで、なぜ不適応行動を起こしているのかが少しずつクリアになってくると思います。
そのため、日々の子どもの行動をよく観察して、行動にのみにフォーカスせず、行動が生じる背景について、4つの機能の視点を抑えていくことが大切だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も不適応行動への早期理解と対応を心掛けていく中で、より良い実践を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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渡辺道治(2024)特別支援教育に学ぶ 発達が気になる子の教え方 The BEST.東洋館出版社.