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【不安定な愛着とADHDについて】療育経験を通して考える

投稿日:2024年6月5日 更新日:

愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。

子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。

幼少期における不安定な愛着が持つことのマイナス要因は多く存在しています。

中でも、発達障害との関連で言えば〝ADHD″を〝生む″(?)〝ADHD″と似た症状を〝生む″(?)といったことが不安定な愛着との関連から考えられています。

 

それでは、不安定な愛着とADHDには実際のところどのような関連があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、不安定な愛着とADHDについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岡田尊司(2014)母という病.ポプラ新書.」です。

 

 

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不安定な愛着とADHDについて

以下、著書を引用しながら見ていきます。

幼い時期から児童期にかけて見られやすいものの代表が、不安が強く、母親から離れることに強い不安を覚える分離不安障害と、落ち着きのなさや、注意散漫、衝動的な傾向が目立つADHD(注意欠陥/多動性障害)だ。

 

近年、遺伝要因だけでなく、養育環境などの環境要因も影響することが改めてわかってきた。たとえば、このADHDを抱える子ども(大人でも)では、母親との関係が不安定な傾向がみられる。

 

養育者との愛着が不安定な場合、著書には、幼い時期から児童にかけて、分離不安障害以外にも、ADHDといった症状が見られるとしています。

発達障害の一種である〝ADHD″とは、脳の機能障害、つまり、〝先天性″のものです。

そのため、不安定な愛着がADHDを〝生む″というわけではありません。

一方で、不安定な愛着がADHDの症状に似た状態を生むと考えられています。

 

今回参照した資料の著者である〝岡田尊司″さんは、その後(「母という病」以降)の書籍の中で、〝ADHD″と〝愛着障害″の関連性や〝疑似ADHD″などの説明をしています。

その詳細は、以下の関連記事に記載しています。

 

関連記事:「ADHDと愛着障害について【ADHDの背景要因から考える】

関連記事:「疑似ADHDとは何か【ADHDの背景には愛着障害が潜んでいる】

 

ここでポイントとなるのは、不安定な愛着が〝ADHD″と似た状態、〝ADHD″ではないかと考えられる症状を〝生んでいる″可能性があるといったことです。

こうしたケースが多く見られる場合には、いかに幼い時期の養育環境、つまり、養育者との愛情関係が大切であるといったことが分かります。

 

 

著者の経験談

著者はこれまでの療育経験を通して、特に学童期において、ADHDの診断を受けてはいるものの、ADHDといった特性への理解や配慮だけでは改善が難しいと感じたケースを多く見てきました。

ADHD(注意欠如多動症)とは、不注意・多動性・衝動性を主な特徴としてる発達障害です。

ADHDは、自分では制御できない行動や感情のコントロールの難しさがあります。

そのため、周囲から理解が得られず、過度な注意や叱責を受けてしまう場合も多いと言われています。

そのため、自尊心が低下し、その状態が長期化すると〝二次障害″へのリスクが高まると言われています。

〝二次障害″の代表格は〝反抗挑戦症″です。

著者は〝反抗挑戦症″の症状が発症している児童においては、〝二次障害″への理解と対応が最優先課題であるほど重要であると実感することがこれまで多くありました。

 

一方で、ADHDの診断は受けてはいないけれども、〝ADHD″に似た症状を発症しているケースも確かに存在すると感じています。

その代表格は、今回記事に取り上げてきた〝愛着障害″です。

関わる子どもが〝愛着障害″がある場合、また、その可能性が疑われる場合には、症状の改善において、〝ADHD″への支援では難しさが出てきます。

つまり、〝愛着障害″への理解と支援も併せて行うこと、むしろ、〝愛着障害″への支援をしていかないと、支援の効果が期待されないと実感しています。

 

それだけ、〝不安定な愛着″が長期化すると、その後の人生において、行動の背景要因が複雑化して分かりづらくなるため、その結果、支援がうまく進まないことに繋がっていくのだと思います。

発達障害への支援、そして、愛着障害への支援は、〝早期発見・早期支援″がカギを握っているのだと改めて感じます。

 

 


以上、【不安定な愛着とADHDについて】療育経験を通して考えるについて見てきました。

不安定な愛着について理解をすることは、いかに幼少期の安定した愛着関係が重要な意味を持つといったことへの理解に繋がっていきます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちと良い関係性を築いていきながら、子どもたちが心の中にしっかりと安全・安心の基地を育んでいけるような関わりを目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【愛着で大切なこと】生涯発達から見た人生早期の愛着の重要性

 

 

岡田尊司(2014)母という病.ポプラ新書.


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