発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

二次 心の理論

【一次の心の理論、二次の心の理論とは何か】療育経験を通して考える

投稿日:2023年4月16日 更新日:

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。

これまでの心の理論の研究によれば、心の理論にも発達段階があると考えられています。

具体的に見ると、〝一次の心の理論“→〝二次の心の理論″といった発達段階があります。

 

それでは、〝一次の心の理論″〝二次の心の理論″とは一体どのようなもので、どのような違いがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、一次の心の理論、二次の心の理論とは何かについて、臨床発達心理士である著者の療育経験も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

二次の心の理論とは何か

以下、著書を引用しながら見ていきます。

私たちはふだん他者の心の状態を考えているが、単に「Aさんは・・・・・・と思っているんだな」と推測するだけではない。むしろ、「Aさんは「Bさんが・・・・・・を知っている」と思っているんだな」といったように入れ子になった複雑な心の状態を頻繁に読み取っている。これらを区別する場合、心の理論研究では、前者が一次(first‐order)、後者が二次(second‐order)と呼ばれている。

 

著書の内容から、〝一次の心の理論″とは、私は「Aさんは○○と思っている」といったある人物の心の状態を推論する力のため、二次の心の理論よりはやさしい発達段階と言えます。

そして、〝一次の心の理論″の課題で有名なものには、サリーとアンの課題、スマーティ課題などがあります。

一方で、〝二次の心の理論″とは、〝私は「AさんはBさんが○○を知っている」と思う、といった複雑な心の状態(入れ子構造とも言える)を推論する力だと言えます。

例えば、小説やドラマなど様々な登場人物が出てくる作品では、登場人物間で生じる関係性が描かれています。

こうした作品を理解するためには、人物間での複雑な心の状態を推論する力が必要となります。

一般的に〝一次の心の理論″の獲得時期が4~5歳頃と言われています。

一方、〝二次の心の理論″の獲得時期は6~9歳頃だと考えられています。

そして、心の理論に弱さを持つ自閉症の人たちは、一次の心の理論の獲得時期が定型発達児よりも遅れて獲得することが分かっています(言語能力の発達が重要です)。

しかし、二次の心の理論の獲得となると難しさも出てくると言われています。

 

 

著者の経験談

著者は療育現場で心の理論に弱さを持つ子どもたちと多く関わってきています。

その中で、自閉症児を例に見ていきます。

自閉症の子どもたちの中には、学童期頃になると〝一次の心の理論″を理解することができていると感じる様子が見られます。

例えば、〝○○君は、今○○と思っている、○○君は○○のことを知っている″といった推論です。

一方で、〝二次の心の理論″となると、わかっているのかどうか判別が難しいことも増えてきます。

例えば、A君がB君とはお互い遊びたくないと誰もが知っている状況において、Cちゃんは、A君とB君は会って見るときっと喜んで遊ぶだろうと推論してしまうなどです(Cちゃんにとってはとても良いことだと思っています)。

そのため、Cちゃんの言動や行動はA君とB君から見ると意味のわからない、少し困った行動として目に映ります。

それも、著者がA君とB君の関係性を伝えても理解が難しいといった状態です(著者の伝え方に問題があるかもしれませんが・・・)。

Cちゃんは、A君やB君のそれぞれの行動意図なら比較的うまく読み取ることもあります。例え、うまくできなくても、著者が説明することでわかってくれることもあります。

しかし、A君とB君の二者関係の状態を推論することになると理解が格段に難しくなります。

著者はここにCちゃんが〝二次の心の理論″の課題があると感じています。

Cちゃんに限らず、著者が見ている自閉症の子どもたちにとっては、大きな理解の壁でもあると感じます。

このように、〝一次の心の理論″と〝二次の心の理論″とでは、同じ心の理論であっても、課題の難易度がだいぶ異なるように思えます。

 

 


以上、【二次の心の理論とは何か】療育経験を通して考えるについて見てきました。

これまで見てきた通り、心の理論には発達段階があります。

そして、一次の心の理論と二次の心の理論についての理解を深めていくことは、現場で関わる子どもたちの理解をさらに深めるものであると実感しています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も心の理論への理解を深めていきながら、その知見を現場に応用する力を身につけていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【心の理論とは何か?】療育経験を通して考える

 

子安増生(編)(2016)「心の理論」から学ぶ発達の基礎-教育・保育・自閉症理解への道-.ミネルヴァ書房.

-二次, 心の理論

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【心の理論から見た他者理解のプロセス】自閉症を例に考える

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。 自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の人たちは、心の理論の獲得に困難さがあると言われていま …

【心の理論とは何か?】療育経験を通して考える

著者は療育現場で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わる仕事をしています。 療育現場で関わる子どもたちの中には、相手の気持ちをうまくくみ取れない子どもたちが多くいます。 そのため、一方的に自分 …

【心の理論の発達について】3つの発達段階から考える

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。 心の理論を獲得することは、他者の心を理解することであり、他者が心を持った存在だという認識から、 …

【二次の心の理論の発達について】道徳的な判断を例に考える

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。 心の理論も一次の心の理論から二次の心の理論へと段階を踏んで発達していきます。 そして、二次の心 …

【心の理論への支援で大切にしたいこと】療育経験を通して考える

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。 心の理論には、一次の心の理論から二次の心の理論へ発達段階があります。 心の理論を測るテストとし …