著者は療育現場(発達障害児支援の現場)で様々な子たちを見てきています。
子どもたちを見ていると〝ストレスに強い″子ども、〝ストレスに弱い″子どもがいます。
こうした特徴の背景には、生まれ持っての性格など遺伝的要因の違いや、家庭や学校のなどの環境要因の違いが影響している面も大いにあると思います。
大切なことは、ストレスに飲み込まれて心身共に疲弊した状態を作らない(二次障害に繋がらない)ことだと思います。
そのために重要な視点として〝レジリエンス″の力を高めていくといったものがあります。
それでは、レジリエンスを高め、ストレスに対して強くなるためにはどのような関わり方、支援が大切であると言えるのでしょうか?
そこで、今回は、レジリエンスを高めるために大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、発達障害児支援で大切なポジティブ経験の重要性について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2010)うつと気分障害.幻冬舎新書.」です。
レジリエンスを高めるために大切なポジティブ経験について
著者は〝ストレス″に対して強くなるために〝レジリエンス″を高めることが大切だと考えています。
そして、〝レジリエンス″を高める一つの方法に、〝ポジティブ経験″が重要だと感じています。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ポジティブな感情や姿勢が、心身の健康によい影響を及ぼし、ストレスに対する耐性を高めることである。ポジティブな気持ちや心の持ち方は、ストレスによる悪影響からの回復を早め、長寿にもつながるのである。
子ども時代についてポジティブな内容を回想する人は、ネガティブな体験を回想する人に比べて、その後の死亡率が低く、老齢になっても長生きしている場合が高いという。ネガティブな体験ばかりを回想する人では、逆に死亡率が大幅に高くなる。
著書の内容から、ポジティブな感情や姿勢は長期的な健康や寿命と関連しているとの記載があります。
そして、ポジティブな感情を作るためには、子ども時代のポジティブ経験が影響していると言えます。
〝レジリエンス″とは、簡単に言えば〝立ち直る力″のことを言います。
〝レジリエンス″の力を高めていくためには、〝成功体験″の量が大切だと考えられています。
つまり、〝成功体験″といった〝ポジティブ経験″を子どもの頃からしっかりと育むことのできる環境・教育が重要だと言うことです。
関連記事:「【発達障害児へのレジリエンスの支援について】失敗を減らし、成功を増やす!」
それでは、次に、著者の経験談から〝レジリエンス″と〝ポジティブ経験″の関連について見ていきます。
著者の経験談
著者が見ている子どもたちの中には、ストレスへの反応が強く、物事を前向きに捉えることが難しいケースも多く見られます。
こうした子どもたちに共通していると感じる特徴が、〝ポジティブ経験″の量が絶対的に不足しているといった印象があります。
例えば、〝自分にはできない″〝できてもたまたまうまくいっただけ″など、自己評価が非常に低い傾向がよく見られます。
こうした子どもたちのストレスへの脆弱性、つまり、〝レジリエンス″が低い状態が長期化すると〝二次障害″へと繋がるリスクがとても高くなってしまうといった実感があります。
一方で、かつてはストレスに対して脆弱であり〝レジリエンス″が低かった子どもが、〝ポジティブ経験″を少しずつ積み重ねた結果、ストレス耐性が高まり、〝レジリエンス″の力が向上したケースも著者が関わった子どもたちの中にはいると実感しています。
こうした子どもたちは、過去の体験を〝ポジティブ″に振り返る様子が増えているといった印象を受けます。
例え、昔の自分が失敗だらけだったとしても〝少しずつできる部分が増えた″〝周りから認められる所が増えた″といった自分を客観視することができ、なおかつ、‟ポジティブ経験″の回想が語りとして増えてきているといったものです。
療育の目的の一つとして、〝二次障害の予防″があります。
著者はこうした子どもたちとの関わりを通して、子どもの頃に多くの〝ポジティブ経験″を積み重ねていくことが経験則的にもとても大切であると考えるようになりました。
そして、〝ポジティブ経験″が多い子どもには同時に〝レジリエンスの高さ″が見られるといった印象を受けています。
そのため、〝レジリエンス″の力を鍛えていくための関わり・支援もまたとても大切なことだと思っています。
以上、【レジリエンスを高めるために大切なこと】発達障害児支援で大切なポジティブ経験の重要性について見てきました。
発達障害のある子どもたちは支援や配慮を受けないと失敗などネガティブ経験を積み重ね続けてしまう場合が多いと思います。
こうした状態を回避するためにも、周囲に理解者・応援者をしっかりと整えておくことが大切だと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちがポジティブ経験を積み重ねていき、レジリエンスを高めていくことができるような支援内容の考案、そして、関わり方をしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【レジリエンスとは何か?】療育経験を通して考える」
岡田尊司(2010)うつと気分障害.幻冬舎新書.