モンテッソーリ教育の中には、〝学びの道筋″があります。
子供たちは、自分の興味・関心を通して、徐々に世界を拡張し、内部に意欲のエネルギーを貯めていきます。
関連記事:「【モンテッソーリから見た〝学びの道筋″】療育経験を通して考える」
それでは、こうして満たされた「個」のエネルギーは、次にどこに向かうのでしょうか?
そこで、今回は、モンテッソーリから見た集団行動について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、個が満たされてから集団へという内容について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「佐々木信一郎(2006)子供の潜在能力を101%引き出すモンテッソーリ教育.講談社+α新書.」です。
個が満たされてから集団へ
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「個」が満たされて初めて、子供たちの目は「集団」に向かうのです。満たされているから、一斉教育での先生の話に素直に耳が傾けられるし、少々嫌なものでも素直に応じることができます。子供とはいえ、いつでも自分のやりたいものだけをやっているのはよいことではありません。一斉に大人のいうことを聞いて学ぶことも大切です。
著書の内容から、子供の発達は「個」から「集団」へ、というプロセスがあることがわかります。
この場合、大切となるのは、「集団」行動がしっかり取れるようになるためには、その前提として、「個」の育ちが満たされている必要があります。
〝学びの道筋″でも見てきたように、「個」の充足には、周囲の環境(人的環境・物的環境)が一人ひとりの「個」に合っているということ、そして、その中で、「個」のエネルギーが満たされていきます。
そして、次のステージで、「集団」行動といった、集団の中で自己をコントロールしながら先生の指摘を聞くことができ、そして、他児に合わせて行動することが可能になります。
つまり、集団に合わせた行動を行う前に、個の能力の成長、個のエネルギーの充足が必要になってくるいうことです。
そして、集団でうまくいかない子供に対して、個別の対応を行うという双方向的な理解もまた重要です。
例えば、集団でうまくいっていた子が、支持が通りづらくなったり、集団行動がうまく取れなくなった場合など、一度、個の対応を満たすという視点も必要だということです。
発達段階としては、「個」→「集団」となりますが、子供たちの状態に応じて、「個」↔「集団」を使い分ける対応も大切です。
著者のコメント
著者の療育経験でもこうした内容(個が満たされてから集団へ)と類似する傾向が見られるように思います。
著者は、発達に躓きのある子供たちに療育をしています。
そのため、一人ひとりの個人差が非常に大きく、実年齢からの理解というより、より個別の理解が必要です。
こうした子どもたちの多くは、療育に通い始めた当初は、大人や特定の物との関わりが強い傾向があります。つまり、「個」への対応・関わりが重要になります。
それが、次第に、経験を重ねていく中で、少しずつ、個別→他児→集団(他児複数)、といった育ちのプロセスを辿っていくように思います。
子供たちは、他児複数と、ごっこ遊びやルール遊びなどに興味を示すようになり、そして、そこにつくスタッフの支持に対して集団を意識しながら、理解し行動できる部分が徐々に増えていきます。
こうしたプロセスを辿っていく中で、大切なことは、やはり、「個」の関わり・対応を丁寧に行うということだと思います。
子供たちは、大人との関わりや物との関わりを通して、内部にエネルギーを貯め込んでいきます。
そして、ある一定量のエネルギーが貯まると、それが、次に「集団」に向かう原動力になるのだと思います。
また、子供は、時に様々な事情から状態が悪くなることがあります。
それは、これまで集団行動がうまく取れていた子が取れなくなったなどもあります。
そのような場合には、個別対応を重視するように心がけています。
「個」が満たされてから「集団」へ、という理解は、裏を返すと、「集団」行動がうまくいかなくなった場合には、一度、「個」に立ち戻ることでもあります。
以上、【モンテッソーリから見た集団行動について】個が満たされてから集団へについて見てきました。
著者が見てきた子供たちの中には、個別の関わり・対応をしていたと思っていたら、気がつくと集団に混ざろうとする行動、混ざって遊ぶ行動を見せる子もいます。
こうした行動の変化は、今回取り上げた、個が満たされてから集団へ、というプロセスも含まれるように思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も「個」と「集団」の両方の視点の重要性を深く意識していきながら、より良い支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
佐々木信一郎(2006)子供の潜在能力を101%引き出すモンテッソーリ教育.講談社+α新書.