モンテッソーリ教育には、興味・関心をきっかけとした活動を中心に様々な能力を獲得ししていくという考え方があります。
これを、〝学びのスパイラル″〝学びの道筋″〝学びの法則″などと言っています。
関連記事:「【モンテッソーリから見た学びのスパイラルが育むもの】自己コントロールの育ちについて考える」
関連記事:「【モンテッソーリから見た学びのスパイラルが育むもの】心の傷が癒されるという不思議について考える」
子供たちは、様々な興味・関心をきっかけとして〝学びの道筋″に入っていきます。
それでは、〝学びの道筋″の中で、学びの入り口となる興味・関心の違いが、学びのプロセス上、違いが生じたり、一つの興味・関心を学びきった際に獲得する力に違いはあるのでしょうか?
そこで、今回は、モンテッソーリから見た学びのプロセスについて、臨床発達心理士である著者の経験も交えながら、〝入り口は違っても出口は同じ″という内容について考えを深めていきたいと思えます。
今回参照する資料は「佐々木信一郎(2006)子供の潜在能力を101%引き出すモンテッソーリ教育.講談社+α新書.」です。
モンテッソーリから見た学びのプロセスについて
それでは、まず著者の療育経験での例を上げながら考えていきます。
A君は〝電車″が大好きで、電車という興味・関心から〝学びの道筋″を辿っていきます。
A君は、電車という興味・関心を活用して、電車について本や図鑑で調べ名称を覚えたり、電車の種類をカテゴリー分けするなどします。
そして、工作遊びでは、段ボールで電車を作成したり、ペーパークラフトで電車を作成します。
この際に、書く・切る・貼るという手先の運動が鍛えられていきます。
B君は〝虫″が大好きで、虫という興味・関心を通して〝学びの道筋″を辿っていきます。
B君は、A君同様に、虫について、本や図鑑で調べることで、虫の種類を覚えるなどカテゴリー分けする力を獲得していきます。
また、工作遊びで紙や段ボールなどを使用し、虫を実際に作ることで、書く・切る・貼るという運動機能を高めていきます。
ここで着目したいのが、A君、B君ともに興味・関心は違いますが〝学びの道筋″で獲得する能力は同じような内容があるということです。
この点について、以下、著書を参照しながら見ていきます。
入り口は違っても出口は同じについて
以下、著書を引用しながら見ていきます。
興味・関心が異なるのですから、子供一人ひとりで最初の入り口は異なります。しかし、最終的な出口は一緒になります。
子供の学びの始まりである興味・関心、そして、その後の方向性も一人ひとり異なりはしますが、何らかの形で、色、形や文字や数などにぶつかり、興味を持って学び、今度はそれを使って、さらに自分の興味を広げていくことがわかります。
著書の内容から、モンテッソーリ教育では、子供の興味・関心は違っても、学びのプロセスの中で獲得する能力には一定数同じ部分があるということです。
つまり、興味・関心をきっかけとした入り口は違っても、その過程で獲得していく力に共通性があることから、出口は同じになるということです。
先の、A君とB君の例を見てもわかるように、電車や虫を対象に、物の名称の獲得、電車や虫をカテゴリー分けするなど言語能力(抽象化能力)を高めていくこと、制作・工作遊びを通して、創造力を鍛え、作成する過程で書く・切り・貼るなど様々な運動機能を鍛えることにも繋がっていきます。
著者自身も、A君とB君の例をはじめ、植物好き、車好き、恐竜好き、アニメ好き、ゲーム好き、など様々な興味・関心をきっかけとして、子供たちが学び・成長してきたケースを見てきています。
そして、興味・関心を対象とした遊びを飽きるまでやると他の遊びに移行する子もいます。
また、興味・関心の対象について、大人をはるかに凌駕した知識の獲得へと向かっていく子もいます。
以上、【モンテッソーリから見た学びのプロセスについて】入り口は違っても出口は同じについて見てきました。
もちろん、学びのプロセスで獲得するものは、一人ひとり異なる点もあるかと思います。
今回は、その中でも、共通性があるという視点から、モンテッソーリ教育を例にお伝えしてきました。
子供たちを見ていると本当に興味・関心が異なります。
そして、その違いがある中でも〝学び″という視点に置き換えた時に、皆一様に同じような〝学びの道筋″を辿っているということについて、モンテッソーリ教育を通して考えを深めることができました。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝教育″の持つ意味を理解していく中で、今、療育現場で関わっている子供たちに対して、より良い支援を行っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
佐々木信一郎(2006)子供の潜在能力を101%引き出すモンテッソーリ教育.講談社+α新書.