
〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″とは、〝日常生活に関する技能を練習する方法″です。
例えば、挨拶の仕方、物の管理の仕方、他者との距離感など様々な内容があります。
こうした〝ソーシャルスキル(日常生活に関する技能)″の獲得は、子どもたちが大人になる上で必要なスキルですが、ソーシャルスキルを獲得する前提として必要な基盤があると考えられています。
それでは、ソーシャルスキル獲得において、どのような基盤が必要なのでしょうか?
そこで、今回は、ソーシャルスキル獲得において重要な2つの基盤について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.」です。
【ソーシャルスキル獲得において重要な2つの基盤とは】療育経験を通して考える
著書には、ソーシャルスキル獲得の基盤には様々なものがある中で、次の2つを取り上げています。
それは・・・
1.他者との信頼関係(母親との信頼関係)
2.意図理解
です。
それでは、次に、1と2について具体的に見ていきます。
1.他者との信頼関係(母親との信頼関係)
以下、著書を引用しながら見ていきます。
母親の養育態度は子どもの愛着行動に影響し、子どもの情緒面だけでなくさまざまな発達の側面や、ソーシャルスキルの発達にも影響を与えます。
まず一つ目として、〝他者との信頼関係″つまり、〝愛着関係の形成″があります。
ここでは、母親を取り上げていますが、愛着理論で言えば、母親を含めた重要な一人の養育者との愛着関係の形成がまずは大切だと言えます。
安定した愛着形成は、情緒面の発達に大きく寄与し、そして、ソーシャルスキルの発達にも影響すると記載されています。
この世界は安心できるものであり、そのためには、〝特定の人″が安心・安全感の基地を提供していくことで、子どもは徐々に探索空間を広げていきます。
つまり、意識が外向きになっていくことで、様々な他者との関わりが出てきます。
その中で、ソーシャルスキルを学んでいきます。
著者がこれまで見てたきた子どもの中には、愛着に問題を抱えている子どもも少なからずいました。
こうした子どもたちには、対人関係を拒む、過剰に求める、自分の思い通りに他者を動かそうとするなど、ソーシャルスキルに歪みが見られるケースが多く存在しています。
そのため、他児トラブルがよく起きたり、一人の世界に籠るなど、ソーシャルスキルをうまく獲得できない(できていない)状況がより多く生じていると感じます。
こうしたケースを見ても、改めて、ソーシャルスキル獲得には、〝他者との信頼関係″が基盤となっているのだと強く感じます。
そして、愛着に問題のある子どもには、ソーシャルスキルをただ獲得させるアプローチでは効果は薄いことも事実としてあると言えます。
関連記事:「「愛情の器モデル」とは【愛情のエネルギーを満たすことの重要性】」
2.意図理解
以下、著書を引用しながら見ていきます。
乳児期から母親とのやりとりをもとに、他者を理解する機能を獲得し、ソーシャルスキルを身につけるための基盤を形成していきます。
二つ目として、〝意図理解″があります。
意図理解とは、他者は自分とは異なる心を持った存在であるということを理解できる状態を指します。
他者の意図理解の気づきとして、生後9カ月頃の三項関係をベースとした〝共同注意″が有名です。
〝共同注意″を通して、子どもは自分とは異なる存在である他者をより強く認識できるようになっていきます。つまり、他者の意図理解の獲得に繋がっていきます。
そして、他者の意図理解もまた、ソーシャルスキルの獲得に大きく関連してくると記載されています。
著者は、他者の意図理解に苦手さのある自閉症児と関わる機会がこれまで多くありました。
自閉症児は、定型児とは異なるプロセスを通して、他者の心情を理解していることが分かってきています。
一方で、他者が今何を思って行動しているのか?どのような意図を持って話し掛けているのか?など、対人・コミュニケーションの場面で様々な課題が生じることも事実として多くあります。
前に見た愛着関係も含めて、幼少期から自閉症児が安心できる配慮された環境・関わりかを工夫していくとが、その後のソーシャルスキル獲得に大きく影響していくのだと感じます。
関連記事:「【共同注意とは何か?】三項関係・9カ月革命・社会的参照をキーワードに考える」
関連記事:「【心の理解の2種類の処理について】自閉症児者と定型発達児者との比較から考える」
以上、【ソーシャルスキル獲得において重要な2つの基盤とは】療育経験を通して考えるについて見てきました。
ソーシャルスキルトレーニングは、誰にでも同じような効果があるとは限りません。
そして、今回見てきたように、ソーシャルスキルを獲得していくためには、スキルの獲得以前に、〝他者との信頼関係″〝意図理解″の育ちもが重要だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どものソーシャルスキル獲得の基盤となっているものにもしっかりと目を向けながら療育をしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【発達障害児への〝ソーシャルスキルトレーニング″で大切なこと】療育経験を通して考える」
鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.