
発達障害児の支援をしていると、忘れ物が多いなど物の管理の仕方に難しさを抱えている子どもが多くいます。
例えば、とにかくバックに物を詰め込むことでどこに何があるのかが把握できていない、学校に行く直前に慌てて準備をする、必要となる物をメモしていないなど様々あります。
〝忘れ物が多い″ことへの対応として、〝ソーシャルスキルトレーニング″が一つの方法としてあります。
〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″とは、〝日常生活に関する技能を練習する方法″です。
〝ソーシャルスキルトレーニング″は、発達障害児支援において非常によく活用されています。
それでは、ソーシャルスキルで大切な忘れ物の管理の仕方にはどのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、ソーシャルスキルで大切な忘れ物の管理の仕方について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.」です。
【ソーシャルスキルで大切な忘れ物の管理の仕方】忘れ物が多い発達障害児への対応方法
以下の順番でお伝えしていきます。
1.〝忘れ物が多い″ことに関して事前に確認する点
2.〝忘れ物が多い″ことに関して日常でできる原因別対応方法
1.〝忘れ物が多い″ことに関して事前に確認する点
著書には、〝忘れ物が多い″ことに関してまず確認しておくべき3点が記載されています(以下、著書引用)。
予定帳が空欄になっていませんか。
子どもに準備をさせていますか。
前日に準備する習慣をつけていますか。
以上の3点を確認しておくことで、〝忘れ物が多い″ことに関しての原因とそれに対する対応方法が紐づいてきます。
例えば、著書にあるように、予定帳が白紙またはしっかり書かれていない、親が準備をしている、前もって準備せず当日に慌てて準備しているなどに原因があるのかもしれません。
著者の療育現場(放課後等デイサービス)では、学校にお迎えに行くとき、自宅に送迎する際など、忘れ物の確認をするようにしています。
忘れ物が多い子どもの場合には、事前に保護者から一緒に確認して欲しいという要望を受けることもあります。
そのため、水筒、帽子、上履き、給食着など持っているかどうか確認しています。
また、帰りの送迎の際には、可能な限り自分で準備をするように促し(低学年だと難しいことが多い)、必要に応じてサポートするようにしています。
2.〝忘れ物が多い″ことに関して日常でできる原因別対応方法
著書には、〝忘れ物が多い″ことに関して、躓いている4つの原因とそれに対する対応方法が記載されています(以下、著書引用)。
1 自分をコントロールする力が弱い
2 自尊心が育っていない
3 感覚面の偏り
4 相手の気持ちを読み取りにくい
それでは、次に以上の4点について、著書の内容を踏まえながら具体的に見ていきます。
1 自分をコントロールする力が弱い
自己コントロール力が弱いと、やりたい事が優先となり、忘れ物の管理に目が向かないことがよくあります。
支援方法としては、やりたいことをやる前に、翌日の準備をする、予定帳の確認(そもそも書けているかどうかも含めて)をする必要があります。
著者の療育現場では、物の管理をする前に直ぐにでも遊びだそうとすることがあるため、前持って準備を促す声掛けをしています。
一方で、発達特性があると、特性が影響して、どうしても物の管理に難しさが生じることがあります。
そのため、少しずつ大人が手助けする部分を減らしていく丁寧な関わりが必要だと感じています。
時間はかかりますが、日々の継続が習慣となり、小学校高学年になる頃には見違える管理能力を身につけたと感じる子どもも多くいます。
2 自尊心が育っていない
忘れ物をするたびに子どもを怒っていると当然、子どもの自尊心は低下していきます。
そうなると、一向に改善に向かわない状況に陥ります。
支援方法としては、子どもと一緒に解決方法を具体的に考えていく姿勢が重要になります。
著者の療育現場では、例え完璧に管理できなくても、少しでもできた所を褒めるようにしています。
子どもとの信頼関係が深まっていくと、子どもは信頼のおける大人からの声がけがより入りやすくなる印象があります。
そのため、忘れ物に関する声掛けにおいても、少しずつ気づける所が増えていくように感じます。
3 感覚面の偏り
感覚や運動面に偏りがあると、必要な準備物をメモすることが難しいことがあります。
例えば、うまく文字が書けないとメモができないなどがあります。
支援方法としては、友人や先生に助けを求めるスキルを身につける(自分から聞く)、手書きが難しい場合には、許可が取れれば写真を撮るなど代替案を考えていくことも有効です。
著者の療育現場では、子どもたちが自分の物をどこに管理すれば良いか一人ひとりボックスを用意して対応しています。
つまり、子どもたちが視覚的に見て分かりやすい構造化を心掛けています。
特に注意散漫なADHD児や視覚的な理解を比較的得意とするASD児には有効だと感じます。
このように、感覚に偏りがある場合には、目で見て分かりやすい環境を整えていくことも一つの方法だと感じます。
4 相手の気持ちを読み取りにくい
忘れ物をすることで時に相手に迷惑をかけてしまうこともあります。
例えば、自分が教科書を忘れてしまったことで、クラスメイトから見せもらうなど他者の力を借りることも出てきます。
相手の気持ちの読み取りが弱いと、他者に迷惑をかけているといった理解が難しい様子が出てきます。
支援方法としては、迷惑となる行為を注意するのではなく、相手がどのように困るのか?そして、当の本人も困ることがあるといった具体的な状況を伝えていく必要があります。
著者の療育現場では、他者の気持ちの理解が難しい子どもも多くいるため、日々の活動を通して、人には人それぞれの意図や思いがあるということを日頃から言葉にして伝えるようにしています。
こうした経験が積み重なることで、少しずつ相手の意図や思いの読み取りができるようになっていったケースは数多くあると感じています。
以上、【ソーシャルスキルで大切な忘れ物の管理の仕方】忘れ物が多い発達障害児への対応方法について見てきました。
今回見てきた4つの原因別対応方法は、ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因と関連づいています。
関連記事:「【ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因とは】療育経験を通して考える」
子どもに忘れ物が多いと周囲の大人は注意したくなるのも自然なことだと思います。
一方で、行動の改善には注意や叱責以上に、子ども自身が自ら行動を変えていく、変えていきたいと前向きに考えていけるような手助けを動機付けることが重要だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で見せる子どもの様々な困り事に対して、対応できるスキルを身につけていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
合わせて読んで頂きたい忘れ物への対応に関する記事を以下で紹介しています。
関連記事:「【発達障害児に見られる忘れ物の多さへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ」
鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.