発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。
そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。
感覚の問題の中でも、〝触覚過敏″は多く見られると言われています。
〝触覚過敏″があると、他者との間でスキンシップがうまくとれず、愛着形成の妨げになる可能性もあると考えられています。
それでは、触覚過敏がある子どもが他者とうまくスキンシップを取るためにはどのようなコツが必要なのでしょうか?
そこで、今回は、スキンシップ支援の3つのコツについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。
スキンシップ支援の3つのコツについて
著書には〝触覚過敏″がある子どもに対して、スキンシップを行う上で、次の3つのコツがあると記載されています(以下、著書引用)。
コツ1:ゆっくり、広く、端から
コツ2:広く触る
コツ3:体の端から触る
それでは、それぞれについて見ていきます。
コツ1:ゆっくり、広く、端から
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ゆっくりなでられるように触ると、人は気持ちいいという「快の感覚」を得ます。
まず一つ目のコツは、〝ゆっくり″です。
人は他者からどのように触られ・なでられるかによって、〝心地良さ″に違いが出てきます。
著者は初めて関わる子どもに対しては、特に慎重に接するようにしています。
その際に、スキンシップをとろうと、仮に〝はやく″、〝力強く″触ったのでは安心感を得にくいと思います。
まずは、〝ゆっくり″触ることを心掛ける中で、子どもが他者とのスキンシップに心地良さを感じる経験がとても大切だと思います。
コツ2:広く触る
以下、著書を引用しながら見ていきます。
特に、触覚過敏の子は痛覚が強く発動しているため、小さい面で触ると防衛反応も発動してしまいます。
よって、触れるときは、手のひらを大きくして広い面積で触ったり、手を握ったりすると効果的です。
二つ目のコツは、〝広く触る″です。
人間の触覚情報の入力は触れられた時の面積の違いで受け取り方が異なると言われています。
例えば、指で押す、こぶしで押す、掌で押すとでは、感じ方が異なると思います。
そして、指で触るよりも、掌で触った方が触る面積が大きいため、安心感が得られやすいと言えます。
著者は療育現場で子どもとのスキンシップ遊びをすることがよくありますが、確かに〝広く触る″の方が、子どもが安心感を抱きやすいと実感しています。
例えば、抱っこや手を繋ぐ、掌全体で触ることを入り口として、子どもとの情緒的交流の深まりを感じたケースは多くありました。
コツ3:体の端から触る
以下、著書を引用しながら見ていきます。
顔、体の中心は過敏性が強いので、それ以外の場所から始める
三つ目のコツは、〝体の端から触る″です。
例えば、目鼻口耳や首などは過敏性が強いと言われています。
そのため、こうした顔や体の中心から離れた腕先(指先は除く)や足先から触ると効果的だと言われています。
著者のこれまでの療育経験を振り返って見ても、腕や足など、過敏性が生じにくい所から触っていくことでうまくスキンシップが取れるようになったと感じることが多くあります。
これは、経験によるものか、本能的なものなのかはわかりませんが、急に触れられるとおそらく危険信号が発生するという感覚があるからだと思います。
実際に著者も子どもが急に目鼻口耳や首などに触ろうとしてきたらとっさに避けようとすると思います。
このように、安全だと感じることができる身体部位(体の端)から触れていくこともまた大切だと感じています。
以上、【スキンシップ支援の3つのコツについて】療育経験を通して考えるについて見てきました。
これまで見てきたように、スキンシップにもコツがあることがわかります。
そして、特に触覚過敏がある子どもに対しては、スキンシップの行い方の工夫が必要だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、子どもが持つ様々な感覚の特徴、そして、心地よい感覚を与えるための方法を考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.