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コミュニケーション 発達段階

【コミュニケーションとは何か?】共有世界の発達段階について考える

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人は様々な場面において、他者とコミュニケーションを取ります。

現代社会において、コミュニケーション能力は必須の力だとされていますが、コミュニケーションとはそもそもどういった意味があるのでしょうか?

そして、コミュニケーション能力は子どもの頃からどのような過程を経て発達していくのでしょうか?

そこで、今回は、コミュニケーションとは何かについて理解を深めていきながら、コミュニケーションの基盤となる共有世界の発達段階について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「秦野悦子(編)(2010)シリーズ子どもへの発達支援のエッセンス 第1巻 生きたことばの力とコミュニケーションの回復.金子書房.」です。

 

 

コミュニケーションとは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

Communicateの語源は「commonにする」こと

 

「common」とは、「共通である」「共同である」「同じである」「一般的である」「広く分かちもたれている」という意味

 

すなわち、「複数の個がその共有された部分でつながっていること」

 

著書の内容から、コミュニケーションの語源を辿ると、英語で〝common″、つまり、〝複数の個がその共有された部分でつながっていること″といった意味があります。

コミュニケーションというと、情報の伝達、つまり、AからBへと情報が伝わるという意味で使用しているケースもありますが、本質的な意味としては、〝共有する″といった意味があるとうことが語源から理解できます。

子どもは、周囲の大人と様々な体験を共有していくことで言葉を身につけていきます。

共有世界の発達過程の中で、コミュニケーション能力を学習していきます。

 

 


それでは、コミュニケーション能力が発達していく過程には、他者との間にどのような共有世界の発達段階があるのでしょうか?

以下、この点について見ていきます。

 

 

共有世界の発達段階について

著書の中では、大きく〝5つの段階″があるとしています。

以下、著書を引用しながら見ていきます。

 


乳児の情動の共有 生後1か月前後

最初の共有世界の発達段階は、大人の笑顔を見て乳児が笑い返すといった非常に原初的なやり取りがあります。

逆に、乳児が笑顔を浮かべることで、大人が笑い返すなど、双方向的な関わりも見られます。

この段階では、声や表情などをきっかけとして様々な情動の交流が子どもと大人の間に見られます。

 


視線の共有 生後3か月以降

第2の発達段階では、他者の視線を追うなど、視線への気づきが徐々に見られてきます。

そして、他者との間で、ある対象に対して視線を共有するといった段階へと発展していきます。

これは、〝共同注意″と言われる行動であり、共同注意行動は、後の〝心の理論″の獲得の基盤となるものだと考えられています。

 


フォーマットの共有 10か月前後

第3の発達段階では、イナイイナイバーやボールを転がす→受ける→転がすなど簡単なルール遊び(やり取り)が可能となる時期です。

こうしたやり取り(遊び)を〝フォーマット″と言います。

 


意味の共有(ことばの共有) 12か月前後

第4の発達段階では、〝意味の共有(ことば共有)″が可能になってくる時期です。

〝意味の共有″とは、例えば、子どもが車を見て「ブーブー」と言っている意味と、大人が車を見て子どもに「ブーブーだね」と言っている意味が同じものを指している(共有している)ということを意味します。

 


スクリプトの共有 1歳半ぐらい

第5の発達段階では、〝スクリプト″といった用語が出てきます。

スクリプトとは、例えば、大人が子どもに「ご飯を食べるよ」と言うと、子どもは、椅子をテーブルに運ぶ→手を洗う→席に座る→食事をする→片付ける、といった行動を見せ、こうした一連の出来事への流れを想像する力(知識として)のことを〝スクリプト″と言います。

著書では以下のように定義されています(以下、著書引用)。

スクリプトとは、「出来事に関する一般的知識(event knowledge)」

 

子どもは、他者との間で様々な共有経験を重ねていく中で、スクリプト(出来事に関する一般的知識)を獲得していきます。

 

 


以上、【コミュニケーションとは何か?】共有世界の発達段階について考えるについて見てきました。

コミュニケーションとは、他者とある対象(体験)を共有することです。

そして、共有世界を積み重ねていくことで、コミュニケーション能力は発達していきます。

コミュニケーション能力を育てるためには、コミュニケーションの基盤となる共有世界をいかに豊かなものにしていくかが大切だと著者は感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちのコミュニケーション能力がうまく育まれていけるように、子どもたちとの間で様々な共有世界を積み重ねていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

秦野悦子(編)(2010)シリーズ子どもへの発達支援のエッセンス 第1巻 生きたことばの力とコミュニケーションの回復.金子書房.

-コミュニケーション, 発達段階

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