発達障害の人の中には、〝思ったことがすぐに口に出てしまう″ことがあります。
例えば、太っている相手を見て、「太っているね!」などと率直に言ってしまうことがあります。
こうした言動には理由があります。
それでは、なぜ発達障害のある人は思ったことを口にしてしまうのでしょうか?
また、その対応方法はあるのでしょうか?
そこで、今回は、なぜ発達障害のある人は思ったことを口にしてしまうのか?について、ASDとADHDを例に理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
思ったことを口にしてしまう理由:ASDの場合
以下、著書を引用しながら見ていきます。
悪意なく不適切な発言をすることは、「その場の状況や相手の気持ちがよくわからない」「他者視点をもちにくい」ことを意味します
ASD(自閉スペクトラム症)の場合だと、場面や状況の理解の困難さや他者の心情の読み取りの苦手さなどから、〝思ったことを口にしてしまう″場合があります。
ASDの特徴には、〝心の理論″の苦手さがあります。
〝心の理論″の苦手さがあると、他者の意図や心情、考えなどをうまくくみ取れないことが多く見られます。
そのため、〝太っていることを直接相手に言うと、その人は○○のような気持ちになる″といった○○の部分のイメージ力が弱いため、悪気はないが言ってしまうということです。
思ったことを口にしてしまう理由:ADHDの場合
以下、著書を引用しながら見ていきます。
衝動性があると、よく考えずに思ったことをすぐに口にしてしまいます
ADHD(注意欠如多動症)の場合だと、衝動性の特徴が影響して、思い立ったら、その状況や相手への影響を考えずに口に出してしまうことがあります。
そのため、〝○○さんは太っていると思ったら、その直後に口に出してしまう″というケースが多く、ASDとは異なり、後々話せば理解はできるも、その行動の制御に困難さが生じます。
ASDとADHDは重複しているケースも多く存在しています。
そのため、〝思ったことを口にしてしまう″背景要因は、重複例だと、相手の心情をイメージする力が弱さに加えて、衝動性も含まれる場合もあります。
思ったことを口にしてしまうことへの対応方法
以下、著書を引用しながら見ていきます。
どのような場合でも、適度に注意をしすぎないことです。
相手がいやがることばを、受け入れ可能なことばに言い換えていくのです。
不適切な発言をきちんと注意することも必要です。その際、感情的にならず、淡々と「それはよくない」と言い、「こう言ったほうがいいね」と付け加えていきます。
〝思ったことを口にしてしまう″への対応方法としては、著書の引用を踏まえると以下の三つに集約できます。
1.過度な注意をしない
2.伝え方をモデリングする
3. 注意をする場合には、感情的にならずに伝える
〝1.過度な注意をしない″に関しては、上記に見てきたように、ASD児もADHD児も決して悪気が合って行っている行動ではなく、特性が影響しているという観点を考慮することが必要です。
つまり、悪気があってやっていないにも関らず、過度な注意を受けると本人は傷つき体験のみ残ってしまうことになります。
〝2.伝え方をモデリングする″に関しては、「太っているね!」→「やさしい感じがするね!」などと、相手が不快に思わない表現へと修正していく方法です。
表現方法を少しずつ修正していくことも有効な方法になります。
〝3.注意をする場合には、感情的にならずに伝える″に関しては、注意は時には必要ですが、注意の仕方がポイントを握っています。
つまり、相手が傷つく言動を修正したい場合には、感情的にならずに淡々と伝える方が、子どもは聞く耳を持つため、後々効果がでるケースが多いと言えます。
以上、【なぜ発達障害のある人は思ったことを口にしてしまうのか?】ASDとADHDを例に考えるについて見てきました。
〝思ったことを口にしてしまう″ことへの言動の背景にも様々な理由があります。
そして、発達特性の違いによってもその理由は異なります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児の行動の背景を見る目を養っていきながら、療育での実践にその知見を活かしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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