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【〝集団遊び″と療育について】子どもたちの成長・発達から見た〝集団遊び″の重要性

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著者は長年、発達に躓きある子どもたちに療育をしています。

子どもたちは一人ひとりとても個性的であり、個別の理解と関わり方がとても大切だと実感しています。

その中で、〝集団遊び″による子どもたちの成長・発達がここ最近非常によく見られます。

それでは、子どもたちは〝集団遊び″を通してどのような成長・発達を遂げているのでしょうか?

そこで、今回は、〝集団遊び″と療育について、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて、子どもたちの成長・発達から見た〝集団遊び″の重要性について考えを深めていきたいと思います。

 

 

〝集団遊び″と療育について

療育現場には様々な子どもたちが通所してきています。

その中の子どもたちは、状態像も非常に多様であり、また、発達段階を通して遊び方にも変化が見られます。

ある子どもは、一人遊びに没頭し、ある子どもは大人や他児との関わりを好むという違いなどがあります。

また、ある子どもは、個別の遊び、〝集団遊び″といった双方を行き来するケースもあります。

〝集団遊び″にも、様々な内容がありますが、著者の療育現場で最近ブームとなっているのが、〝戦いごっこ″です。

ルールはシンプルで、敵役が大人、味方チームが子どもたち、時間内に敵を倒すと勝利になります。

味方チームの子どもたちは、キックやパンチ、ポールや段ボール工作で作成した武器などを使用しています。

もちろん、手加減することや、当てていい所など、その都度、ルール設定は必要になります。

戦いごっこは、ここ最近始まったというよりも、以前から行っていました。

しかし、〝集団遊び″を通して子どもたちがお互いのことを意識し、お互いの良さを理解し始めたのはここ最近非常に増えているという実感があります。

 

療育現場には、個別の理解と対応が必要な子どもたちが多くおります。

そのため、療育で重要となるのは、子どもたち集団をうまくまとめる(コーディネートする)大人の役割だと感じます。

〝集団遊び″がうまく集団として形成され、子どもたち同士がお互いを理解し、苦手な所を埋めていくためには、子どもたちだけでは難しい所が強くあります。

定型児においては、ある程度学年が進むと、子どもたち同士で集団がまとまり、その中でリーダーシップをとる人がうまく集団を統率するという光景があります。

療育での〝集団遊び″では、集団をまとめるために個々の苦手な所を理解し、子どもたち同士をしっかりと繋ぐ大人の役割がとても大切だと実感しています。

 

 

子どもたちの成長・発達から見た〝集団遊び″の重要性

〝集団遊び″が進み始め、集団によりまとまりが出てくることで、子どもたちの中に、様々な成長・発達が見られます。

大きな内容としては、①興味関心を通した繋がり②縦横の繋がり③仲間と共に味う達成感、があります。

 

 


以下、それぞれについて見ていきます。

 

①興味関心を通した繋がり

発達に躓きある子どもたちの中には、非常に興味関心が限定されている子どもも多くいます。

そのため、まずはお互いの興味関心を理解し、興味関心をベースとして子どもたち同士を繋げていくという関わりが大切です。

興味関心を通して繋がり始めた子どもたちは、お互いを意識し理解し始めます。

そして、自分からの発信が苦手な子どもが、興味関心を活用しての発信が増えたり、一方的な会話が多い子が、他の子の話を聞けるようになるなど様々な変化が出てきます。

つまり、子どもたち同士での会話が多く見られるようになっていきます。

こうした会話の中には、単純な情報の交換だけではなく、喜怒哀楽といった感情の交流もあり、こうしたやり取りの中で、○○君の良さや○○ちゃんはこういう人、といったパーソナリティの理解にも繋がっていきます。

また、関わる人数が増えていくことで、〝多様″な人がいるという自分と人との違いについての理解も育っていきます。

 

 

②縦横の繋がり

著者の小学校時代を振り返ると、ガキ大将や何か特技がある人などがよく集団を統率するなどリーダーシップを発揮して集団をまとめる姿がありました。

また、憧れの先輩や可愛らしい後輩など上下の関係(縦の関係)も少なからずありました。

療育には、様々な年齢の子どもたちがいるため、横(同年代集団)の繋がりだけではなく、縦(異年齢集団)の繋がりも含めた関係づくりをしていくことが大切だと考えています。

縦横の繋がりが出てくることで、先輩が後輩を助ける姿、何かを教える姿、リーダーシップを発揮する姿などが多く見えてきます。

また、後輩は大人以外にも頼れる存在がいるという安心感が出てきます。

先輩にとっても、頼られている自分を認識することで先輩という役割を自覚することができます。

こうした光景は、〝戦いごっこ″など遊びの場面でも多く見られます。

年上の子どもが後輩集団をまとめる光景、年下の子どもが頼れる先輩に助けを求める光景などから、子どもたちは、集団の中には一定の秩序や役割があるということについて経験を通して理解していけるのだと思います。

 

 

③仲間と共に味う達成感

〝集団遊び″の醍醐味は、子どもたち同士が共通の目標・目的に向かうことで、それをやり遂げた時に生じる達成感だと思います。

こうした感覚は、その後の人生においてもとても重要になってきます。

例えば、チームスポーツや仕事においても、仲間とともに何かをやり遂げたという成功体験がベースにあるのとそうでないのとでは、集団参加への意欲・自信にも影響してくると思います。

そのため、療育では、興味関心を活用し、お互いの役割を認識させ、そして、最終的な遊びのゴールを設定するという取り組みがとても重要になります。

仲間と共に味う達成感は、〝戦いごっこ″というシンプルな〝集団遊び″においても非常に多く見られます。

時には、敵役が増える、敵役がパワーアップする、そして、曜日によって子どもたち集団にも違いあるため、集団の違いも意識して戦い方を工夫していく必要があります。

こうした集団変化に伴う、役割も含めた戦略の立て方、互いを意識するということは、共通のゴールがあっても、それに向かうプロセスに違いが出てくるため、様々なバリエーションがあるということになります。

子どもたちを見ていても、その日の集団によって、戦略を立てたり、助っ人を呼ぼうとする姿もあるなど、子どもたちなりの工夫が見られます。

そして、敵役をみんなで倒したという達成感(目標達成)により、子どもたち同士のまとまりもより強固になってきているという実感があります。

 

 


以上、【〝集団遊び″と療育について】子どもたちの成長・発達から見た〝集団遊び″の重要性について見てきました。

著者は昔、空き地や公園などで、よく友人と〝戦いごっこ″などをして遊んでいました。

そして、今子どもたちと一緒に〝戦いごっこ″など〝集団遊び″をしている際に、当時の遊びの経験がとても役に立っていると感じることがあります。

それは、〝集団遊び″の楽しさが著者の身体の奥深くに刷り込まれているからだと思います。

子どもたちが楽しんで遊ぶ姿を見て、著者も自然と心が躍り、一緒に遊びに没入することができます。

私自身、今後も〝集団遊び″をうまくリードしていきながら、子どもたちが少しでも良い経験を積んでいくことができる手伝いをしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【〝集団遊び″の大切さについて】遊び相手と遊びの場所の変化を通して考える

関連記事:「【〝集団遊び″の大切さについて】〝多様性″と〝安心感″から考える

-療育, 集団遊び

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