療育現場で子どもたちと関わっていると、〝遊び″を通しての成長・発達が非常に多く見られます。
〝遊び″といっても内容・形態は様々あります。
関連記事:「【〝遊び″の〝内容″について】Piagetを例に考える」
〝遊び″を大きく二つに分けるとすると、〝集団遊び″と〝一人遊び″があります。
一般的な発達過程を見ると、〝一人遊び″から〝集団遊び″へ、といったプロセスがあるかと思います。
一方で、〝集団遊び″をするようになった子どもたちの中には、〝一人遊び″も同時に行う、あるいは〝一人遊び″の方を好んで行う子どももいるかと思います。
それでは、〝集団遊び″と〝一人遊び″が、その後の成長・発達において、どのような力の獲得に繋がるのでしょうか?
そこで、今回は、〝集団遊び″と〝一人遊び″で獲得するものについて、臨床発達心理士である著者の経験談から考えを深めていきたいと思います。
〝集団遊び″で獲得するものとは?
〝集団遊び″がその後の成長・発達において獲得するものには、〝社会性″があると著者は考えます。
〝社会性″とは、簡単にいうと〝人とうまく関わる力のこと″と表現できます。
非常に広義な意味ですが、その中身で大切なことは、〝多様性″を認識することだと思います。
つまり、自分と人は違うということ、様々な人がいる中で自分なりに人との距離感や関わり方を身に付いていくことが〝多様性″のある環境の中で学習できます。
〝多様性″のある環境とは、療育現場では、〝集団遊び″があります。
〝集団遊び″を通して、自分と違う多くの人たちと関わった経験から、コミュニケーション能力や相手の意図を理解する力、折り合いをつける力、目標・目的に向けて共同で何かに取り組むといった〝社会性″が育まれていくのだと思います。
関連記事:「【〝集団遊び″の大切さについて】〝多様性″と〝安心感″から考える」
〝一人遊び″で獲得するものとは?
〝一人遊び″がその後の成長・発達において獲得するものには、〝自己教育力″があると著者は考えます。
〝自己教育力″とは、〝自分が変わることができるという実感から沸き起こる力″と表現できます。
そして、〝自己教育力″を育むために大切なことは、モンテッソーリ教育でいう〝学びの道筋″を辿る中で少しずつ育まれていくということです。
〝学びの道筋″とは、簡単に言えば、その子の興味関心を入り口として、興味関心への集中・没入状態の持続から得られる達成感というループを辿る中で獲得する自信です。
こうした自分自身への自信の高まりは、〝自己教育力″の育ちに繋がっていきます。
自分への自信や期待があるからこそ、様々なことに挑戦しようとする意欲も湧いてくるのだと思います。
関連記事:「【モンテッソーリから見た〝自己教育力″とは何か】自身の経験を通して考える」
関連記事:「【モンテッソーリから見た〝学びの道筋″】療育経験を通して考える」
以上、【〝集団遊び″と〝一人遊び″で獲得するものとは?】療育経験を通して考えるについて見てきました。
著者自身の経験を振り返って見ても、〝集団遊び″を通して、様々な人たちと関わる力のベースが鍛えられたように思います。
〝集団遊び″は、時にはあまり仲のよくない人や、年齢の異なる人たちとの関わりもありました。
当時は、仲の良いグループだけで遊びたい思いもありましたが、様々な人たちと実際に関わることで、人との付き合い方や新しい人との繋がりも生まれたように感じます。
社会に出れば様々な人たちと関わることから避けられない場合もあります。
このような時に、同じ価値観だけで構成されたグループのみの経験と〝多様性″のあるグループでの経験とでは、やはり、後者の方が生きていく上での力が身に付くのだと思います。
もちろん、過度な参加を強制することはせずにという意味です。
また、〝一人遊び″においても、何かに没頭しそこから得られる達成感や自信を持てたことが著者の経験を振り返って見ても、次への挑戦意欲を引き出すエネルギーになったと思っています。
その意味で、〝一人遊び″は、〝集団遊び″とは異なる力の獲得があったのだと実感しています。
このように、〝遊び″の内容や意味を掘り下げていくことで、その後の成長・発達に繋がるものが見えてくるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝遊び″の意味を掘り下げてきながら、将来に繋がるための支援と、その支援が意味する説明ができる力を身に付けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。