〝遊び″の〝発達段階″を理論化したものに、Parten理論があります。
Parten理論は、6つの段階(水準)から構成されています。
関連記事:「【〝遊び″の〝発達段階″について】Parten理論から考える」
一方で、その後の研究により、Parten理論への批判のもと、検証が行われました。
その結果、Parten理論に欠けていた所があることがわかってきました。
それでは、Parten理論に欠けていた点にはどのようなものがあったのでしょうか?
そこで、今回は、〝遊び″の〝発達段階″について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、Parten理論への批判を通して考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「田中浩司(2014)集団遊びの発達心理学.北大路書房.」です。
Parten理論への批判から考える
Parten理論の批判から生また説は次の2つです。
1.ひとり遊びオプション説
2.遊びの状況要因説
以下、この2つについて見ていきます。
1.ひとり遊びオプション説
Parten理論によれば、〝ひとり遊び″は6つの水準でいう二番目の段階ということになります。
つまり、〝遊び″の〝発達段階″でいう初期の段階ということになります。
この点についての批判的知見について、以下、著書を引用しながら見ていきます。
Mooreらは、ひとり遊びは社会的スキルの未熟な子どもが、他者との相互交渉に失敗した結果生じた不適切行動などではなく、子ども自身が主体的に選択した適応的行動であると主張している。
著書の内容から、〝ひとり遊び″は社会的に未熟な行動ではなく、子ども自らの選択による適応的な行動であるとしています。
つまり、Parten理論の〝ひとり遊び″は、発達段階として初期に見られる行動ではありますが、その後の〝遊び″の〝発達段階″の中でも見られ、その行動は未熟さから生じたものではなく、適応的な行動だという考え方がプラスされたということになります。
著者の療育現場にも、〝ひとり遊び″に没頭する小学高学年の子どもたちもおります。
こうした子どもの行動は社会的な未熟さからくるというよりも、本人が望む〝遊び″を行ったものであると考えられます。
また、こうした子どもの中には、〝ひとり遊び″と〝集団遊び″の両方を行き来する子もいます。
〝遊び″の〝発達段階″は、単調に進むというよりも、遊びの内容やその時の子どもたちの興味関心なども影響して、一人ひとり違った形となって現れるということが、Parten理論の批判から理解することができます。
2.遊びの状況要因説
Parten理論もひとり遊びオプション説も個別の〝遊び″からの理解となっています。
そのため、環境や状況といった要因が足りていないという批判が出てきました。
それでは、状況の違いにより〝遊び″にどのような変化がでるのでしょうか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
身体活動を中心とした遊具が設置されたbig muscle roomでは、連合遊びや協同遊びといった集団的な遊び形態が多く見られたのに対して、机上の活動が中心となるfine motor roomでは、ひとり遊びや並行遊びといった、個人的な遊び形態が多く見られた。
著書の内容から、遊びの環境・状況によって遊びの内容・形態にも変化が出てくるという結果から、〝遊び″には環境・状況の影響を強く受けるということが言えます。
著者の療育現場には、体を使って過ごすプレイルームや一人で作業ができる個別スペースなどがあります。
こうした環境設定により、子どもたちの遊びにも変化が出てきます。
例えば、プレイルームだと体を使った〝集団遊び″、個別スペースだと制作遊びといった感じです。
環境・状況の違いが子どもたちの〝遊び″に影響するということは、これまでの研究知見や著者の経験談双方から言えることだと実感できます。
以上、【〝遊び″の〝発達段階″について】Parten理論への批判から考えるについて見てきました。
〝遊び″の〝発達段階″は、単調に進むというものではなく、〝ひとり遊び″のようにある程度発達段階が進んでも見られるものがあるということ、そして、環境や状況の影響を大きく受けるということがわかってきています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちが楽しく活動できるために、一人ひとりの発達段階を理解していきながら、その子に合った環境設定や関わり方を工夫していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
田中浩司(2014)集団遊びの発達心理学.北大路書房.