著者は療育現場を通して子どもたちと関わっているため、〝遊び″を通して子どもたちの成長・発達を感じる機会が多くあります。
〝遊び″にも、一人遊びといった個別のものから、〝集団遊び″まで様々なものがあります。
子どもたちの中には、一人遊びと集団遊びの両方に取り組む姿が多いという印象があります。
それでは、一般的に子どもの〝遊び″にはどのような発達段階があるのでしょうか?
そこで、今回は、〝遊び″の〝発達段階″について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、Parten理論から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「田中浩司(2014)集団遊びの発達心理学.北大路書房.」です。
〝遊び″の〝発達段階″について:Parten理論を例に
Parten理論によると、〝遊び″を次の6つの水準に分類しています。
1.水準Ⅰ:何もしていない行動
2.水準Ⅱ:ひとり遊び
3.水準Ⅲ:傍観的行動
4.水準Ⅳ:並行遊び
5.水準Ⅴ:連合遊び
6.水準Ⅵ:協同的に組織化された遊び
以下、6つの段階について著書を引用して見ていきます。
1.水準Ⅰ:何もしていない行動
水準Ⅰ:何もしていない行動(unoccupied behavior)とは、子どもたちがどの遊びにも参加しておらず、また興味も示していない状態を指す。
子どもは、自ら歩行可能となり発語が出るようになることで、探索空間を広げ大人に働きかけながら様々な対象への認識を広げていきます。
著者が見てきた未就学児の中には、自分で様々なものに触って見たり、様々なものに興味を示しじっと注視したり、指差しや言葉で〝教えて″など大人に聞いてくる子どもたちが多くいました。
こうした姿を見ていると、まだ、特定のもので遊ぶというよりも、感覚器官を通して世界を知るという段階なのだと思います。
2.水準Ⅱ:ひとり遊び
水準Ⅱ:ひとり遊び(solitary play)は、周囲の子どもに対して無関心であり、他者との関わりがみられない状態とされている。
子どもたちが特定の絵本やおもちゃなどを自ら選択し遊ぶようになる段階です。
例えば、お気に入りの本を繰り返し見たり、ブロックや積み木遊び、音の鳴るおもちゃなどに没頭して遊んでいるといった光景があるかと思います。
繰り返しの遊びの中で、イメージの世界を広げること(見立て遊び)、因果関係の理解(ボタンを押す→音が鳴る)、規則性の理解(大小、形、色)などを深めていきます。
この時期は、確かに一人で遊びに没頭しており、他児の遊びにはそれほど関心がないように見えます。
3.水準Ⅲ:傍観的行動
水準Ⅲ:傍観的行動(onlooker behavior)は、ひとり遊びとは異なり、子どもは仲間の遊びにも関心をもっている。
他児の遊びに関心が出てくる段階です。
他児が遊んでいる近くに行き、遊びに参加することはありませんが、その光景をじっと見るなどがあります。
著者もこうした光景は未就学児の療育現場でよく見られていたように思います。
まだ物の貸し借りなどがうまくできないため、他児が使っている魅力的なおもちゃを勝手に取ろうとすることもよくありました。
4.水準Ⅳ:並行遊び
水準Ⅳ:並行遊び(parallel play)は、近くにいる子ども同士が同じような遊びを行っており、一見すると集団で遊んでいるように見える状態である。
並行遊びは遠目から見ると、子どもたち同士で遊んでいるようにも見えます。
並行遊びは、〝集団遊び″の前段階だと考えられ、同じような遊びを各々が取り組んでいますが、まだ、子どもたち同士には接点がない状態です。
著者も並行遊びの光景はよく目にします。
例えば、お絵描き、粘土、ままごとセット、車のおもちゃ、など遊んでいる対象は同じであっても、まだ一人で遊んでいるというものです。
5.水準Ⅴ:連合遊び
水準Ⅴ:連合遊び(associative play)は、子どもどうしが直接的なやりとりを行なう集団遊びとしての形態をもつが、そこで交わされる会話は断片的であり、目標に向かって協力するような姿はみられない。
連合遊びの段階になって初めて〝集団遊び″の段階に進んだということが言えそうです。
しかし、この段階は、〝集団遊び″に必要な共通の目標・目的がまだない状態であるため、子どもたち同士の会話のやり取りも断片的であると言えます。
集団で何かを行うためには、目標・目的が必要であり、目標・目的があるからこそ、その過程で様々な会話が生まれるという特徴があるのだと思います。
その意味で、連合遊びは、〝集団遊び″の入り口の段階とも言えるのかもしれません。
6.水準Ⅵ:協同的に組織化された遊び
水準Ⅵ:協同的に組織化された遊び(cooperative or organized supplementary play)は、いわゆる協同遊びとよばれる形態である。子どもたちはお互いに遊びのテーマやルールを共有し、時にはそれを調整しながら遊びを展開する。
この段階になって〝集団遊び″がはっきりと形を持って行われているということが言えます。
連合遊びとは異なり、子どもたち同士が共通の目標・目的を掲げ、それに向けてルールを考えるなど、会話のやり取りも断片的ではなく、連続性といったものが出てきます。
著者は現在、小学生を対象に療育をしていますが、この協同的に組織化された遊びは非常に多く見られます。
子どもたち同士で、共通の興味関心により集団が生まれ、その中で、子どもたち同士でテーマやルールを考えていきながら、遊びを展開していく様子が見られます。
こうしたまとまりのある〝集団遊び″に興味を持ち、遠目からその様子を見たり、部分的に参加するなど、〝傍観的行動″や〝連合遊び″とも考えられる行動を見せる子もおります。
著者は発達に躓きある子どもたちを見ているため、〝集団遊び″に至る発達段階も定型児で見られるような年齢を目安としたものではなく、個人差(個人間差・個人内差)を踏まえた理解や関わり方が非常に大切になってくると実感しています。
その意味でも、人がどのようなプロセスを通して、〝集団遊び″に至るのかを理解していくことは大切だと考えます。
以上、【〝遊び″の〝発達段階″について】Parten理論から考えるについて見てきました。
〝集団遊び″を通して、人は他者と協同する力、社会性、コミュニケーション能力など様々な力を獲得していきます。
そのため、〝遊び″にも〝発達段階″があるということを知ることで、今、子どもたちがどの段階にいるかを理解する一つの手掛かりを得ることができます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝遊び″を通して、子どもたちの成長・発達に貢献していけるように〝遊び″の意味と〝発達段階″についての理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
田中浩司(2014)集団遊びの発達心理学.北大路書房.