発達障害が増加する中で、実際の所、発達障害ではなかったというケースも存在しています。
今回参照する著書の成田さんは、〝発達障害もどき″を〝発達障害の診断がつかないのに、発達障害と見分けのつかない症候″だとしています。
つまり、〝発達障害に症状が似ているが、発達障害ではない″というケースです。
〝発達障害もどき″を理解し支援する上で大切なことは、脳の発達の順番を正しく理解することにあります。
それでは、脳はどのような順番で発達していくのでしょうか?
そこで、今回は、〝発達障害もどき″を改善する方法として、その前提として必要となる脳の発達の順番について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「成田奈緒子(2023)「発達障害」と間違われる子どもたち.青春新書.」です。
脳の発達の順番について
著書には、〝脳が育つ順番″として次の三つの過程があるとしています(以下、著書引用)。
①からだの脳
呼吸・体温調整など生きるのに欠かせない機能を担う
②おりこうさん脳
言葉・計算の能力、手指を動かす力など勉強やスポーツに関わる
③こころの脳
想像性を働かせる、判断するなど、「人らしい能力」を司る
著書には、〝脳が育つ順番″として、①→②→③の方向性があると記載されています。
〝発達障害もどき″とは、この①~③がうまく育っていないために生じるものだと考えられています。
そのため、例えば、②の教育環境を充実させたとしても、ベースとなる①が育っていないと②のおりこうさん脳はうまく育っていかないということになります。
子どもの育ちを理解し支援していくためには、こうした脳の発達の順番を理解していきながら、土台をしっかりと育んでいくという視点が必要です。
〝発達障害もどき″が環境による影響で生じている症候であるため、まずは、子どもの育ちを支えるという方法が支援上大切です。
著者のコメント
著者は臨床発達心理士であるため、子どもの〝発達″についてこれまで多くのことを学んできました。
もちろん、〝発達″を理解することは並大抵ではありませんので、まだまだ勉強途上でもあります。
今回見てきた〝発達障害もどき″とは、例えば、乳幼児期に五感を通した経験の不足、養育者との愛着形成の問題、基本的生活習慣の乱れ、メディアの視聴時間の増加、などによって生じるものが多くあると思います。
著者は以前、愛着の研究をしていたこと、そして、愛着障害児との関わりも多くあることから、愛着障害もまた、発達障害と似た状態を有していることを実感する経験が多くありました。
例えば、感情のコントロールがうまくいかない、落ち着きがなく多動である、大人の言うことがうまく理解できない、集団行動がうまくできない、などこれらは、ASDやADHDなどにもよく見られるものです。
一方で、詳細に両者の違いを見ていくと、行動の背景要因には明確な違いがあります。
つまり、発達障害とは生得的な脳の機能障害であるのに対して、愛着障害とは生後の養育者との関係性の問題だという違いです。
そのため、アプローチ方法もまた違います。
前者が特性への理解と配慮であるのに対して、後者は関係性の修復や感情理解の支援などが有効だと考えられています。
もちろん、両者が重複してケースもあります。
その場合には、両方からのアプローチが必要です。
〝発達″の視点を取り入れることで、現在の子どもの状態像が異なる見え方をすることがよくあります。
〝発達障害もどき″を理解していくためにも、今回見てきた脳の発達の順番を知っておくことが大切です。
これは裏を返すと、脳の発達がうまく育っていなと(①~③の中で)、どのような症状を呈するのかを考えることにも繋がっていきます(愛着障害の問題などもそうです)。
そして、脳の発達の順番を知ることが〝発達障害もどき″への理解と支援をする前提上必要だと言えます。
以上、【〝発達障害もどき″を改善する方法】知っておくべき脳の発達の順番について見てきました。
発達障害への認知はここ10数年で激増し続けています。
一方で、今回見てきた〝発達障害もどき″もまた存在しています。
私たちは、正しい知識を学びながら、脳の発達の順番・方向性を理解していく必要があります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達についての理解を深めていきながら、療育現場で関わる子どもたちの育ちに貢献していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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