発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

アセスメント 発達障害

発達障害のアセスメントで大切なこと【情報共有とブラックボックスの理解の重要性】

投稿日:2023年1月10日 更新日:

 

発達障害のアセスメントには様々なものがあります。

 

関連記事:「発達障害への包括的アセスメントについて

 

アセスメントとは、評価・査定のことです。

アセスメントをすることの意義は、対象者をより深く理解し、より良い支援に繋げていくために行うことにあります。

 

それでは、発達障害のアセスメントで大切なことにはどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害のアセスメントで大切なこととして、情報共有とブラックボックスの理解の重要性から考えを深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「市川宏伸(編著)(2014)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害の「本当の理解」とは ー医学、心理、教育、当事者、それぞれの視点.金子書房.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

発達障害のアセスメントで大切なこと【情報共有とブラックボックスの理解の重要性】

発達障害のアセスメントで大切なことは多くありますが、その中でも今回は、1.情報共有の重要性2.ブラックボックスの理解の重要性、の2点についてお伝えしていきます。

 

 

1.情報共有の重要性

以下、著書を引用しながら見ていきます。

それは「支援につながるその人の大切な理解を多くの人と共有する」ためである。

 

アセスメントで大切なことは、対象者の理解を深め、結果を支援に繋げていくことです。

アセスメントには、客観性が求められます。

つまり、実施する人によってアセスメント結果が大きく異なるのであれば、客観性はなくなってしまいます。

客観性を高めていくためには、信頼性や妥当性のあるアセスメントツールを使用する必要があります。

一方で、データに載りにくい主観性なども行動観察などでは大切です。

行動観察から客観性を高めていく方法もあります。

 

関連記事:「療育現場での体験を客観化する方法-間主観性・相互主体性・エピソード記述から-

 

客観性と主観性の双方を大切にしていきながら、対象者の状態像をより深く理解していくことがアセスメントには重要だと言えます。

そして、著書にあるように、アセスメント内容を支援に携わる人や保護者など(当事者が大人の場合には本人も含め)と情報共有をしていくことが重要です。

支援を実施していく情報共有の基盤がアセスメントとも言えるため、何を目指していけば良いのか?どういった方向に向けて進んでいけば良いのか?という共通認識についてアセスメントを通じて行っていくことが大切だと言えます。

 

 

2.ブラックボックスの理解の重要性

以下、著書を引用しながら見ていきます。

つまり、困っていることの中身の一部は「わからない・理解できない」ということである。心理アセスメントとは、まさにこの「わからなさ」に光を当てて正しい理解を手に入れることに他ならない。

 

著書にあるようにアセスメントの意義は、ブラックボックスとなっていることへの理解、つまり、対象者の〝わからなさ″を理解することでもあります。

ブラックボックスとは、例えば、普段の生活で困り感があるがその正体がわからない、得意なこと・強みになりそうなことがあるがそれに気づいていない、などが考えられます。

こうした〝わからなさ″、つまり、ブラックボックスとなっているところに光を当てる作業がアセスメントでは重要だと言えます。

そのため、アセスメント実施者は、様々な検査から何がわかるのかを熟知しておく必要がありますし、それと同時に、検査の限界なども理解していく必要があります。

 

 


以上、発達障害のアセスメントで大切なこと【情報共有とブラックボックスの理解の重要性】について見てきました。

著者は心理士でもあるため、これまで大学や研修などで心理検査の勉強を重ねてきていますが、学びを深めていくたびに、検査による客観性の裏づけや、情報共有の大切さ、そして、ブラックボックスへの理解など、様々な発見があります。

そして、こうした知見が、間接的ではありますが、療育現場での直接支援に活きてくることもあるという実感があります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もアセスメントの大切さをより深く理解していきながら、より良い支援に繋げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


発達障害のアセスメントに関するお勧め書籍紹介

関連記事:「発達障害のアセスメントに関するおすすめ本【初級~中級編】

 

市川宏伸(編著)(2014)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害の「本当の理解」とは ー医学、心理、教育、当事者、それぞれの視点.金子書房.

スポンサーリンク

-アセスメント, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

発達障害の原因について機能的結合の視点を通して考える

発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々な症状が含まれています。 …

【発達障害の子どもの思春期について】親の関わり方で大切なこととは何か?

発達障害の子どもにとっても小学校卒業以降に本格的に〝思春期″に入っていきます。 個人差はありますが、心身共に急激な成長が見られ、反抗期もこの時期に見られることが多くなります。 著者は人数こそ多くありま …

発達障害の生きづらさを考える:少しのズレが大きなズレを生む

発達障害の方の中には一見何が障害なのか?なぜ困っているのか?など周囲からわかりにくいタイプの方々がいます。 そういった方の中には、診断がついていないが発達障害傾向のある場合など、ある特性が目立つタイプ …

【発達障害児への薬物療法について】子どもによく使用されている薬について解説する

  発達障害児への支援の一つに〝薬物療法″があります。 〝薬物療法″は、様々な特性(状態像)によって使用される薬が異なります。 著者が勤める療育現場でも、服薬している子どもたちは多くいます。 …

発達障害の強みと弱みについて考える

発達障害児・者の中には、特異的な才能を持った人たちがいます。 例えば、見たものを映像のように記憶することができる人(サヴァン症候群の特徴でもあります)、一つの作業に非常に高い集中力を発揮する人、新しい …