療育(発達支援)の仕事をしていると、そもそも療育(発達支援)は何を目的としているのか?という疑問に突き当たることがあります。
著者は長年療育現場に関わってきましたが、日々、より良い療育とは?療育の成果や効果とは?といった問いについて考え続けてきました。
関連記事:「療育とは何か?-療育経験を通して考える-」
より良い療育を行うためには、まずは、発達に躓きのあるお子さんたちへの理解がとても重要になります。そして、理解に基づき支援方法を考えいく必要があります。
療育の成果や効果については、何を指標にしているのかで評価基準も変わってくるかと思います。
例えば、具体的には個別支援計画の作成に基づいた支援とある程度の期間を見てのモニタリングから評価されるかもしれません。
他にも、関わるスタッフや保護者の方から見て、主観的に感じ取れる部分での評価もあるかもしれません。
関連記事:「療育の成果について」
こうして療育について様々な問いを持ち現場で実践していく中で、そもそも療育とは何のために行うのか?というある種、根底にある問いに突き当たることがあります。
そこで、今回は、著者の療育現場での経験も含め、療育は何のために行うのか?という療育の目的についてお伝えします。
今回参照する資料は、「市川奈緒子・岡本仁美(編著)(2018)発達が気になる子どもの療育:発達支援入門.金子書房.」です。
関連記事:「療育の目的を考えることの大切さ」
療育は何のために行うのか?
以下に著書を引用します。
とりわけ社会に生きることの意味や自己の価値観が感じにくくなっている昨今、子どもに対する療育・発達支援のなすべきことは、この「自分と自分の人生に対する肯定感」を築くための土台作りをサポートすることなのではないでしょうか。
著著の内容から、療育の目的は自己への肯定的な感情を育むことにあるいえます。
もちろん、療育の中には、様々な発達障害の理解、個別の支援方法(ソーシャルスキルトレーニング、認知行動療法、運動療法など)といったより具体的な内容もあるかと思います。
こうした、具体的な理解や支援方法も目指すとことは、その子自身が自分を肯定するところに繋がり、自分を肯定する力(自尊心や自己有能感など)は、自分の力で社会の中で生きていく・行こうとする意欲に繋がってきます。
関連記事:「自閉症療育で大切な視点-自尊心について-」「療育で大切な視点-自己有能感について-」
療育を専門にする支援者は、子ども自身が自分のことを肯定できるために、人への信頼に始まり、苦手なことや得意なことの自己理解、意欲のエネルギーを引き出すこと、成功体験を重ねることなど様々なサポートが必要です。
そして、様々な体験を通して、この世界が生きるに値する世界・生きていて楽しい世界であるということを体感することがとても大切だと感じます。
それでは次に、こうした療育の目的の重要性を感じた、著者の体験談についてお伝えします。
著者の体験談
繰り返しになりますが、著者は長年療育現場に携わってきました。
療育現場には、様々な発達に躓きのあるお子さんたちがおります。そのため、個別の理解や配慮や支援がとても大切になります。
こうしたことを考えていく中で、子どもたちから教えてもらったことがあります。
まず、一つ目に、関わるスタッフたちが子どもたちを肯定的な態度で接し続けると、子どもたちは自然とそうした態度を感知していくということです。
これは、自己への肯定的な感情に繋がると思います。
また、スタッフは肯定的な感情を子どもたちに持つためには、子どもたちのことをより深く考えることにも繋がるため、より質の高い理解と支援に繋がると感じます。
二つ目に、関わるスタッフが楽しそうに関わってくれる、そして、スタッフ同士が楽しむことで、子どもたちの笑顔や楽しんで活動する様子が増えるということです。
以前、何かの本で、楽しく活動している集団には人が集まるということが書いてありました。その言葉通り、集団自体が楽しい雰囲気があると、そこに人が集まり、楽しい世界になります。
もちろん、こうした楽しく雰囲気をつくるためには、療育の大切さを追求し続ける姿勢、活動作りを含めた環境設定、チームの連携といったスタッフ同士のコミュニケーションなどが非常に大切になるかと思います。
こうした体験は、当然と言えば当然の話かもしれません。
しかし、上記を維持するには多くのエネルギーや学びの継続が必要になると思います。
今後も、療育は何のために行うのか?という根源的な問いを現場での実践を通して考え続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
市川奈緒子・岡本仁美(編著)(2018)発達が気になる子どもの療育:発達支援入門.金子書房.