
療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。
まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと言えます。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なります。
そこで、今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を短期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
療育の成果について-環境調整の大切さ-
Aさんの例→環境調整により他児トラブルが少なくなった例
当時小学校中学年のAさんは、他児との関わりを好む反面、すぐにテンションが上がると他児にちょっかいを出してしまい失敗経験を重ねてしまうことが多いお子さんでした。
当時、私も含めた放課後等デイスタッフは、Aさんの他児と関わりたい気持ちを尊重し、他児との関わりという部分にフォーカスすることが多く、今にして思えばあまり環境調整(それぞれ活動環境を分ける)を行わずに活動していました。
そのため、他児との関わりは多く見られるも、トラブルも頻繁に起こることが多くありました。
もちろん、トラブルから学ぶことも多くありますので、一概に、悪いことばかりではありませんが、トラブルによる子どもたちの失敗経験を積み重ねてしまうことは避けなければいけないと思い環境調整を重視する方向になっていきました。
具体的には、事前の打ち合わせなどでAさんが過ごす活動を想定して、活動スペースを準備しておくこと(活動部屋の設定・パーテーションで仕切るなど)を考え実行しました。
Aさんがその日にやりたい活動を聞き、放課後等デイに着いたら「ここでやろう!」と誘いました。時々、誘いにのらないこともありますが、早めに対応することで誘いにのることが増えていきました。
Aさんは自分が活動する環境が保障されたことで安心して活動を進める様子が増え、また遊びたい他児にも、その活動スペースを基点として誘う様子が増えたため、断れたときにも、以前のように放課後等デイ内をウロウロすることもなく、元の活動(活動場所)に戻る様子が増えていきました。
また、活動空間が分かれているため、Aさんが遊びたい他児を誘う時にはAさんの活動スペースに他児を誘う、他児の遊びに入る際には他児の活動スペースにAさんが入るなど、空間を分けることにより切り替えがうまくできるようになっていきました。
そして、何より、特別な配慮が必要な子どもたちは少しの刺激に敏感に反応するため、環境を整えることで、活動に集中できるといったメリットもあります。
もちろんAさんに対しても環境調整をすることで、刺激に振られる様子が減り、Aさんがやりたい活動に集中できるようになってきました。
そして、以前多くあった他児とのトラブルも減り、失敗経験もだいぶ減ったように思います。
Aさんの事例を振り返ってみると、改めて環境調整の大切さを実感します!
以上、療育の成果について-環境調整の大切さ-について見てきました。
療育では、子どもたちに特別な配慮が必要であるため、事前の環境調整やそれに対する準備が必要不可欠かと思います。
環境を整えることで、子どもたちが不要な刺激を避け、やりたい活動に集中できるなどの効果が期待できると感じます。
今回は1事例を紹介しましたが、こうした環境調整は療育において多くのお子さんに必要かと思います。
今度も、子どもたちが安心して楽しく活動できるように環境調整の視点からも配慮を怠らずに取り組み続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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療育実践で参考になる書籍一覧に関する記事を以下に載せます。
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