
療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。
まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと言えます。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なります。
そこで、今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を短期の視点から以下に2事例(ASDのお子さん)を簡単に紹介したいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
療育の成果について-他者理解について-
Aさんの例→他者理解が少しずつ身に付いてきた例
当時小学校中学年のAさんはASD(自閉症スペクトラム障害)のあるお子さんです。
普段は易しい言動や行動が多く、また、お絵描きや制作遊び、読書など自分の興味関心をじっくり一人で、ないしは好きな大人と一緒にして過ごすことがよくあります。
時々、他児の言動や行動が気になる様子があります。
例えば、ゆっくり片付けをしている他児(片付けがなかなかうまくいかない子)に対して、「早く片付けましょう」、少し体格の良い他児に「ダイエットした方がいいよ」など、その場の状況を踏まえた他児の理解が難しい発言がよくあります。
我々スタッフは、こうしたASD特性を踏まえて、他児の行動の意図や自他の思いが違うということを伝えるようにしています。
例えば、「早く片付けましょう」に対しては、「○○時までに片付ける約束をしていたから大丈夫だよ」や「ゆっくりでもちゃんと片付けているから大丈夫だよ」などと伝えたりしています。
「ダイエットした方がいいよ」に対しては、「○○ちゃんは今のままで素敵だと思うな」や「○○ちゃんはそうは思ってないよ」などと伝えたりしています。
それを聞いたBさんは、「そうなんだ」などと、納得することも増えてきました。
以上は一例ですが、こうして特性を踏まえた支援や配慮をすることで、他者にも色々と行動の意図が違うといったことを理解する力が付いてくるのだと思います。
Bさんの例→同じく他者理解が少しずつ身についてきた例
当時小学中学年のBさんは、ASD特性のあるお子さんです。
普段の活動では、自分が気になる他児の言動や行動を指摘する場面が多くあります。
例えば、ある他児に対して、「○○ちゃんに嫌なことを言われた」や「○○くんに嫌なことをされた」など、どちらもBさんが最初にこうしたきっかけをつくる言動や行動をしていても、他児の問題だと指摘するなどです。
我々スタッフは、Bさんの言動や行動があり→それに対して他児が○○といった言動や行動をした、といった因果関係やその時に生じた他児の気持ちをできるだけ短く伝えるようにしています。
その上で、「○○した方がいいよ」など他児との関わり方を助言するようにしています。
できるだけ早期に対応することで、Bさんがスタッフの説明を理解する様子が多くなりました。
大切なのは、大人が子供の感じ方、他者の理解の仕方が少し異なるという視点の違いを理解することだと思います。
以上、2事例を取り上げ、簡単にではありますが、ASD特性のあるお子さんの他者理解について紹介してきました。
Aさん・Bさんの一方的コミュニケーション→大人が他者の意図を代弁→論理的に理解できる頻度が増す、といったことが特にASD特性のあるお子さんには大切な関わりかと思います。
今回はASD特性のあるお子さんを例に、他者理解について紹介しました。
今後も多様な発達理解とそれに基づく発達支援を実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【心の理論から見た他者理解のプロセス】自閉症を例に考える」
療育実践で参考になる書籍一覧に関する記事を以下に載せます。
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