キレやすい子どもたちの中には、‟反抗挑戦性障害”の人たちがいると考えられています。
関連記事:「【反抗挑戦性障害とは何か?】療育経験を通して考える」
発達障害、中でも、ADHDの二次的症状としても発症の頻度が高いことで知られています。
それでは、反抗挑戦性障害のある子どもに対して、どのような支援方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、反抗挑戦性障害への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参考にする資料として、「原田謙(2019)「キレる」はこころのSOS:発達障害の二次障害の理解から.星和書店.」を参照していきたいと思います。
反抗挑戦性障害への支援方法について
それでは、‟反抗挑戦性障害”の支援方法について見ていきます。
①暴れている子どもへの危機介入について
①暴れている子どもへの危機介入
- 暴力、破壊的な行動には即時介入。
- 低刺激で対応し、からだを寄せて静かに制止する。
- その場から離す。
- なかなか収まらない/止められない場合には、他の子どもを別の部屋に連れて行くか、大人がその場所を離れ、陰から見守る。
- 深呼吸させる。
暴れている子どもへの対応ですが、これはもちろん直ぐに介入する必要があります。
黙って見ていても、おさまることは難しいですし、周囲への被害も出てきます。
まずは、力を入れて止めるのではなく、静かに制止することを心掛け、その場から離すということが重要です。例えば、静かな場所、クールスポットなどです。
それでも、収まらない場合には、周囲の子を別室に連れていくなどの対応が必要です。
著者自身、療育を始めた当初は、力ずくで対応しようとしたことがあり、それによりさらに暴れている状態をエスカレートさせてしまったという失敗経験があります。
また、無理に別室に連れていこうとしたことで、これもまた負の感情をさらに高ぶらせてしまい、今にして思うと周囲の子どもを離せばよかったと思っています。
②暴れそうな子どもへの危機介入について
②暴れそうな子どもへの危機介入
- 大人が声のトーンを落として、子ども自身が興奮していることを気づかせる声掛けをする。
- 声掛けが難しときには、他の話題を振る。
- 落ち着く方法を事前に知っていればそれを促す。
- 興奮状態になった相手が大人の場合には、違った大人に交代する。
- 上記の対応が難しいときには、警告する。
暴れそうな子どもへの対応ですが、相手は当然興奮しているため、こちらが強い口調で話かけるとさらに興奮が高まってしまうため、落ち着いた声のトーンで話かけることが大切です。
また、他の話題を振ることは著者も現場でもよく実行しています。
発達に躓きのある子どもは、一つのことにこだわりが強い子どもも多いため、他の話題を持ち出すことで、興奮した内容から注意を逸らすといった対応も効果的です。
転導性が高い子どもも多いため、他の刺激(話題)に直ぐに移ることもよくあります。
落ち着く方法のスキルを苦手とする子どもが多い印象があります。
中には、その場から離れて気持ちを落ち着ける子もいました。著者自身、安全な環境下でボールを投げて発散させる、サンドバック(即興で毛布で作るなど)を活用して、ネガティブなエネルギーを発散させることで収まったケースもありました。
大人が代わることで気分が変化することもあります。
それも、できるだけポジティブなイメージのある大人と交代することで、気持ちの切り替わりを促すこともできると思います。
③クールダウンについて
③クールダウン
- 冷静に話ができるようになるまで待つ。この際に、一緒にいた方が良いか、一人の方が良いのかを直接本人に聞く。
クールダウンでは、話ができる状態になるまで静かな環境で調整するなど、気分が落ち着くまで待つ必要があります。
どうしても、親身な人は一緒にいた方が良いとか、すぐに話しかけて何とかしようとする場合がありますが、まずは話ができる状態まで待つことが大切です。
著者も過去に、何とかしてあげたいとの思いから声掛けが多くなってしまい、その結果、うまくいかなかったことがありました。
④振り返りについて
④振り返り
- クールダウンができたと判断したら、できるだけ時間を空けずに振り返りを行う。
- 振り返りは、背景の気持ちを汲み取るために行う。表出した言葉の内容が、自分勝手なものでも否定しないことが大切。関係を築くまでは、むやみに突っ込まないほうが無難。
- 子どもが何も語らない場合には、数分後や翌日に話すことを約束し、本人からの発信を待つ。
振り返りで大切なことは時間を空けないということです。
どうしても時間が空いてしまうと、自分がとった行動の何がいけなかったのか、その時どういった気持ちが生じたのかなど、その時の自分の行動の意図や感情を忘れてしまうことが多くあるからです。
行動と結果、それを修正するといったループを形成するためにも、時間を置かずに実行した方が良いです。
また、子どもとの関係性によって、行動の背景をくみ取る力や、子どもからの発信する内容にも違いが出てくると思います。
そのため、日ごろからの関係性の構築がとても大切だと言えます。
著者自身、振り返りが遅れたことで、本人がその行為をよく覚えていなかったことがありました。
その時、本人は「はい。わかりました。」と直ぐに返答しましたが、今にして思うと、もうすでに次の活動(興味のある遊び)に気持ちが移っていたのだと思います。
⑤責任を取らせることについて
⑤責任を取らせる
- 振り返りが終わったら、暴力を振るった相手に謝る、物を壊した場合には片付ける。
子どもであっても、悪い行動に対しては、罰を受けることを知る必要があります。
子どもによっては、絶対に謝りたくない・片付けたくないといった態度を取ってくることもあります。
しかし、関わり手も態度を変えずに対応し続けることが重要だと言えます。
⑥暴力に対するルールを決めることについて
⑥暴力に対するルールを決める
- 子どもに「あなたも周りの子どもを守る必要がある」ことを伝えて、“暴力や器物破損などの不適切な行動は認めない”というルールを決める。
ルールを決めるということも大切です。
暴力行為はいかなる理由があっても許されるものではないので、事前にルールなどを伝えておく必要があります。
子ども自身も参加して、ルールに対して合意したということが重要です。
⑦暴言への対応について
⑦暴言への対応
- 暴言への対応として、冷静に言い直しをさせ、言い直しをしたら応答する。
- 暴言が多い場合には、例えば、「先生はその言葉が嫌なので、もうこれ以上は話しません」と対応をいったん区切り、子どもが受け入れられる態度や言葉で話ができたら応答する。また、反応しないことも一つの手段。
- 子ども同士の場合には、例えば、「そういう言い方だと○○くんも嫌だろうし、聞いている自分も不快になるなあ」などと大人が介入。関係がある程度ある子ども同士なら、対する子どもが自ら押し返す練習も必要。
暴力や器物破壊に続いて多いのは暴言です。
著者の療育現場でも、よく起こります。
暴言に対しては、伝え方を修正する必要がありますが、これも関わり手と子どもの関係性ができていることが重要です。
また、集団での暴言だと責任が分散されることがあり、そもそも大人の声がけが入りにくいことがあります。
そのため、こ集団VS個人といった構図にならないような環境設定も大切だと思います。
著者も集団への介入で苦労したケースが何度もありました。
それは、全体か個人に注意して、聞き入れることができたと思っても、また別の子が暴言を言うことでもとの状態に戻ってしまうことがあります。できるだけそのような環境を作らないことを今では心掛けています。
著者も暴言をはかれることがありますが、基本は反応しないといったスタンスでいます。
あるいは他の話題に振って、暴言をはきにくい状態を作るように心掛けています。これはとても効果的だと感じています。
子ども同士だと暴言を言われた方も嫌だった思いなどを伝える力が必要ですが、これも相手との関係性によっても変わってくると思います。
著者が以前見ていた子どもに、他児に対してひどく挑発的な言動をとり相手が大泣きしたケースがありました。
当時、著者はその子どもとの関わりが少なかったため、どのような態度を取るべきか非常に悩みました。著者が取った対応として、相手が嫌な気持ちになってしまったことを、冷静な態度で何度か繰り返し伝えました。
この子どもは泣かせた相手とよく遊んでいたこともあり、相手の気持ちをある程度は察することができると考えました。
結果、この子どもは著者の変わらない態度を見てか、あるいは、もともと関わりのある相手ということもあってか、相手に対して自分から謝ることができていました。
以上が、キレる子への支援方法になります。
もちろん著書の中には、これらの対応がさらに詳細に記載されているほか、他の方法なども載っています。
非常に勉強になる内容が満載なので、興味ある方、現場で困り感を抱えている方には、ぜひ手に取って読まれることをお勧め致します。
著者の体験談
それでは、次に著者自身の療育現場からの経験についても伝えしていこうと思います。
著者は現在、放課後等デイサービスで小学生を対象に療育をしています。
対応していて難しいことの一つに、これまで説明してきた、キレる子・キレやすい子への対応があります。
こうした子どもは、感情のコントロールや自他の気持ちの理解が苦手なため、すぐに感情的になり、手が出る、暴言を吐く、物にあたるなどの行動を取ることがよくあります。
我々スタッフは、できるだけ事前にキレる状況を作らないように環境設定を行い、それでも起こった場合には、環境を分けて対応しています(トラブルになった子どもを別の空間に分ける)。
キレる場面として、様々な内容がありますが、キーワードでいうと、人(大人・他児)、物(おもちゃ・何かを作る材料など)、場所(遊ぶスペース)、送迎車内(メンバーや順番)などが思い通りにならない時によく起っている印象があります。
こうした複合的な要因を分析し、環境調整をすることも療育をする上では、とても大切なことだと思います。
キレてしまった後の対応として、クールダウンをはかり、振り返りを行うなど、今思うと今回参考にした書籍と似た対応を部分的にですが行っていたのだと思います。
また、キレやすい子どもの背景要因を分析し、状態像を見立てることも重要だと思います。
我々スタッフは、家庭や学校とは異なる環境で子どもたちを見ているため、他の環境での情報収集も必要になります。
そのため、送迎時などで学校や家庭の方と話をすることは子どもたちを知るとても重要な情報源になります。
キレるという行動にも様々な要因や場面などがあります。それは現場を通して感じるところでもあります。
そのため、こうした要因をチームで話し合うことで、ケースによっては対応がうまく行くようになった、あるいは、なってきているものもあります。
まだまだ、こうした理解や対応方法において、著者自身未熟ではありますが、経験と知識を積み重ねていくことで、徐々に進歩している実感はあります。
以上が、【反抗挑戦性障害への支援について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
今後もより良い発達理解と発達支援ができるよう、に日々の現場での療育を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【反抗挑戦性障害とは何か?】療育経験を通して考える」
原田謙(2019)「キレる」はこころのSOS:発達障害の二次障害の理解から.星和書店.