発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

言語性ワーキングメモリ

【言語性ワーキングメモリとは何か?】学習活動との関連性について考える

投稿日:2023年10月26日 更新日:

ワーキングメモリ(working memory)″とは、情報を記憶し、処理する能力のことを言います。〝脳のメモ帳″とも言われています。

ワーキングメモリの機能として、〝言語性ワーキングメモリ(言語的短期記憶)″と〝視空間性ワーキングメモリ(視空間的短期記憶)″とがあり、両者を統合する司令塔的役割が〝中央実行系″と言われています。

 

それでは、ワーキングメモリの機能として非常に重要な言語性ワーキングメモリとは一体どのような機能なのでしょうか?

 

そこで、今回は、言語性ワーキングメモリとは何かについて、学習活動との関連性から理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「湯澤正道・湯澤美紀(2017)ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援―学習困難な子どもの指導方法がわかる!.学研.」と「トレイシー・アロウェイ・ロス・アロウェイ(著)湯澤正道・湯澤美紀(監訳)上手幸治・上手由香(訳)(2023)ワーキングメモリと発達障害[原著第2版]: 教師のための実践ガイド.北大路書房.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

言語性ワーキングメモリとは何か?

以下、著書(湯澤ら,2017)を引用しながら見ていきます。

  • 言語領域
  • 言語的短期記憶・・・・・・・・言葉や数などの音声情報を覚えておく 記憶
  • 言語性ワーキングメモリ・・・・音声情報を処理しながら保持する 記憶・処理

 

著書の内容から、〝言語性ワーキングメモリ″とは、言語領域に含まれ、情報を記憶し処理する働きのことを指します。

言語的短期記憶が〝記憶″にのみ特化したものであるのに対して、言語性ワーキングメモリとは、情報の〝記憶と処理″が含まれます。

例えば、言語的短期記憶とは相手が口頭で話した電話番号を記憶するのに対して、言語性ワーキングメモリとは一時的に音声で記憶した電話番号を頭の中で操作して数字を入れ替える力になります。

数字を入れ替えるためには、まずは頭に音声の数字を一時的に記憶する力(記憶)に加え、記憶した数字を保持してかつ操作する力(処理)の両方が必要です。

言語性ワーキングメモリの機能は、相手の話の内容を脳内で整理したり、自分の考えとの共通点や相違点を見出すときにも活用するめ、日常生活の至るところで必要となる力だと言えます。

 

 


それでは、言語性ワーキングメモリと学習活動にはどのような関連性があるのでしょうか?

次に、この点について見ていきます。

 

言語性ワーキングメモリと学習活動との関係性について

著書には、言語性ワーキングメモリを要する学習活動の例が4つ紹介されています(以下、トレイシーら,2023を引用)。

長い指示を記憶し、実行すること

 

文を記憶し、書き写すこと

 

同じ音をもつ単語のリストを覚えること

 

複雑な文法構造をもつ文を覚えること

 

 著書の内容を少し具体的に見ていきます。

 

長い指示を記憶し、実行すること″については、例えば学校の先生が生徒に、一時間目に○○の活動をして、その活動の中で○○と○○の道具を使用して、一緒に組むグループは○○で、○○のプリントを参考にして活動を進め、プリントの中で○○の部分に注意を払いながら活動を進めるように口頭で説明したとしましょう。

言語性ワーキングメモリに困難さがあると、こうした情報量の多い口頭での指示は記憶の保持は難しく、部分的にしか記憶に留めておけないため(あるいはほどんど残らない)、実際の活動を実行することが難しくなります。

 

文を記憶し、書き写すこと″については、文章を読む際には、文字→音声への変換作業が入ります。つまり、文字情報を一度、音声情報へと置き換えた後に、書くという作業に移行していきます。

そのため、言語性ワーキングメモリに困難さがあると、文字を読む中で音声へと変換することに多大な負荷がかかるため、単語や文章を書き写すことに大きな労力を費やします。

 

同じ音をもつ単語のリストを覚えること″については、例えば、さけ、さる、あさ、かさ、といった単語を覚える難しさがあります。

 

複雑な文法構造をもつ文を覚えること″については、例えば、友だちと遊ぶために、A君は宿題を早く終わらせた→A君は宿題を早く終えて、友だちと遊んだ、といった文に変換した方が理解しやすいです。

このように、同じ内容の文章でも文法構造の違いでワーキングメモリに要する負荷に違いが生じます。

 

 


以上、【言語性ワーキングメモリとは何か?】学習活動との関連性について考えるについて見てきました。

言語性ワーキングメモリに苦手さがあると、学習活動の至るところで難しさが出てきます。

そのため、言語性ワーキングメモリに苦手さのある子どもと関わる際には、苦手さの背景を理解していきながら、適切な配慮をしていくことが必要不可欠です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もワーキングメモリの理解を深めていきながら、療育現場でワーキングメモリに苦手さのある子どもにできる支援を考えていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「ワーキングメモリについて

関連記事:「【視空間性ワーキングメモリとは何か?】学習活動との関連性について考える

 

 


参考となる書籍の紹介は以下です。

関連記事:「ワーキングメモリに関するおすすめ本6選【中級編】

 

 

湯澤正道・湯澤美紀(2017)ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援―学習困難な子どもの指導方法がわかる!.学研.

 

トレイシー・アロウェイ・ロス・アロウェイ(著)湯澤正道・湯澤美紀(監訳)上手幸治・上手由香(訳)(2023)ワーキングメモリと発達障害[原著第2版]: 教師のための実践ガイド.北大路書房.

スポンサーリンク

-言語性ワーキングメモリ

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

関連記事はありませんでした