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【自閉症児のこだわり行動の3つの特徴】〝変えない″〝やめない″〝始めない″を通して考える

投稿日:2024年6月24日 更新日:

 

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。

著者は長年、未就学児から小学生を主な対象として療育をしてきています。

その中で、自閉症児の関わりで難しいものに〝こだわり行動″への対応があります。

 

それでは、そもそも自閉症児に見られるこだわり行動には、どのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症児のこだわり行動の3つの特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝変えない″〝やめない″〝始めない″をキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。

 

 

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〝こだわり行動″の定義について

それでは、そもそも〝こだわり行動″とは、どのように定義されているのでしょうか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ある特定の物や状況に著しい執着を示し、それを常に一定の状態に保っていようとする欲求に本人が駆られた結果、それが変わること、変えられることを極度に嫌うようになり、行動面において反復的な傾向があらわになること。

 

以上が著書の〝白石雅一″さんによる〝こだわり行動″の定義です。

〝こだわり行動″の対象や強度は子どもによって様々です。

精神科医の〝本田秀夫″さんは、〝こだわり行動″は生涯において残り続けると様々な書籍の中で述べています。

著者は、大学での学びを踏まえて、〝こだわり行動″は変化に対する抵抗、つまり、自身が安心感を得るための行動といった理解をしています。

自閉症の人たちは、〝人″をはじめ、外界の世界を知覚・認知する過程において、非常に混沌とした世界を体感して生きています。

そのため、不確実性を回避して確実性を求める行為が、ある種の〝こだわり行動″として現れているのかもしれません。

 

 

【自閉症児のこだわり行動の3つの特徴】〝変えない″〝やめない″〝始めない″を通して考える

それでは、〝こだわり行動″にはどのような特徴があるのでしょうか?

この点について、〝3つの特徴″から見ていきます(以下、著書引用)。

変えない 物の位置を変えない 靴や服を変えない 予定の変更を受け付けない

 

やめない 砂や水遊びをやめない 友達が待っていてもやめない 描き始めたら止まらない

 

始めない 初めての場所は拒む 慣れていないトイレは強く拒んで使わない 目新しい食べ物は美味しそうでも食べない(偏食)

 

著者は以上の3つの〝こだわり行動″の特徴を療育現場で実際に見にすることがよくあります。

変えない″については、遊んでいるおもちゃをいつも同じように並べる(ミニカーやシルバニアファミリーなど)、いつも同じ服を着ている子どもは稀なケースだと思いますが実際にいました。また、帰りの順番・遊びの順番・道順へのこだわりなど予定へのこだわりは非常に多く見られます。
やめない″については、砂や水遊びなど感覚遊びに没頭し続ける、自分が使っているおもちゃや遊具を他児に譲ることが難しい、読書やお絵描きなど一度はじめると遊びをうまく切り上げることができない様子も多く見られます。
始めない″については、慣れない場所の回避(初めていく場所)や普段と違う空間を遠ざける姿、食べ慣れていない新しい食べ物を口にしようとしないといった様子もまた多く見られます。

 

このように、著者のこれまでの療育現場でも非常に多くの〝こだわり行動″の特徴を目にしてきました。

そして、〝こだわり行動″への理解が足りないと、過度に苦手なことを強要してしまうことに繋がり、そうした対応が子どもの不安感を高めたり、人への不信感に繋がっていくのだと思います。

裏を返せば、〝こだわり行動″の特徴を理解していくことで、子どもの安心感の保障、そして、人への信頼を高めていくことに繋がると言えます。

 

 


以上、【自閉症児のこだわり行動の3つの特徴】〝変えない″〝やめない″〝始めない″を通して考えるについて見てきました。

こだわり行動を深く理解していくためには、実際の現場で子どもと関わることがとても大切です。

それは、子どもたち一人ひとりの中で、こだわり行動の対象や強度が異なるからです。

そして、こだわり行動は残り続けるものの、対象や強度は成長と共に変化することがよく見られます。

こうした内容を知識に加えて体感することがとても大切だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で自閉症児のこだわり行動を深く理解し適切な対応ができるように、実践からの学びを大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「自閉症のこだわりはなくなるのか?「こだわり」保存の法則を通して考える

関連記事:「自閉症のこだわり-こだわりの強さとその対象について考える-

 

 

白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.


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