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【発達障害児に見られる宿題がうまく進まないことへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ

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発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。

著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。

 

それでは、発達障害児に見られる宿題がうまく進まないことに対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られる宿題がうまく進まないことへの対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。

 

 

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宿題がうまく進まないことはなぜ生じるのか?

宿題がうまく進まない理由として3つの視点から見ていきます。

 

1つ目として、〝誤学習の問題″です。

誤学習″とは、これまでの経験の中で、本来的に望ましい学習とは逆に、誤った学習をしてしまった状態のことを言います。

例えば、宿題をしなくても問題は起きない、怒られない、プラス要素がない、などがあります。

2つ目として、〝ワーキングメモリの問題″です。

ワーキングメモリ″とは、記憶の保持・操作のことを指しますが、この力が弱いと、先生から宿題の説明があっても忘れてしまうことがよく起こります。

ただ、理解の面では問題なく分かっていることもあるため、怠けている・さぼっていると誤解を受けてしまうことがあります。

3つ目として、〝実行機能の問題″です。

実行機能″とは、やり遂げる力のことを言います。

宿題をやり遂げるためには、ある程度の計画性と、宿題が出たということを記憶しておくこと、そして、他の事に気を取られずに注意を維持して取り組む力などが求められます。

こうした力の基盤が〝実行機能″だと言えます。

〝実行機能″に弱さがあると、他の事にすぐに気を取られたり、計画的に宿題を進めることが難しくなります。

 

 

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宿題がうまく進まないことへの対応について

著書には、宿題がうまく進まないことへの対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つからのアプローチ方法が記載されています。

 

 


それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。

 

① SST(ソーシャルスキルトレーニング)

以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。

・進行の順番を視覚化する

 

・毎日の宿題、翌日の準備などは「トークン表」を活用する

 

まずは、〝宿題の進め方を可視化する″ことです。

可視化するとは、例えば、宿題の進め方を、ホワイトボードに順を追って記載していく、文字だけではなくイラストも活用して、プラン立てを行うなどがあります。

一日以上の長期の課題(夏休みの宿題など)は、カレンダーの活用も有効です。

 

次に、〝課題に対する報酬(トークン)を整理する″ことです。

著書には、〝トークン表″の例として、こらからやる課題→できた・やり終えた課題可視化されたホワイトボードの例が記載されています。

そして、できた・やり終えた課題に対して、曜日ごとにポイントが与えられるシステムになっています。

実行機能の弱さのある子どもや、そもそも宿題をすることにメリットが感じられない子どもにとっては有効だと言えます。

 

 

② ペアレントトレーニング

以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。

・時間の感覚を伝える

 

・好きなことと関連づけてシンプルなルールをつくる

 

まずは、〝時間を意識させる声掛けをする″ことです。

例えば、宿題を始めた時の時間宿題にかかった時間などを子どもに伝えていきながら、肯定的に頑張っている過程を褒めていくことが大切です。

子どもが宿題に要する時間を知ることは、子ども自身だけではなく、親にとっても大切です。

 

次に、〝宿題を進めるに当たって簡単なルールを作る″ことです。

著書にある好きなことと関連づけてとは、例えば、宿題→遊び、など、シンプルなルールを家庭内で一貫して対応していくことになります。

子どもに関わる大人によって対応(ルール)が変わることなく、一貫性があることが宿題の定着化には有効です。

 

 

③ 感覚統合療法

以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。

・実行機能を育む遊びを行う

 

実行機能へのトレーニングを、遊びを通して行う″ことです。

実行機能を鍛えるためのポイントとしては、目標・ゴールがある、目標に対して試行錯誤の要素があることです。

つまり、ルーティン化されている遊びよりも、変化の要素がある遊びが必要です。

例えば、アスレチックなどがあります。

アスレチックでも日々、ゴールに向けて、コースの変更要素を入れることで、試行錯誤の要素ができます。

こうした工夫を遊びの中で取り入れいくことが大切です。

 

 


以上、【発達障害児に見られる宿題がうまく進まないことへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。

宿題が進まない背景要因にもまた、様々な原因・理由があります。

そもため、子どもに応じた対応策を考えていくことが大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたち一人ひとりに応じたオーダーメイドな支援ができるように、理解と支援のバリエーションを増やしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「ワーキングメモリは実行機能(3つの構成要素)の中にどう位置づけられるのか?

 

 

岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.

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