〝ゲーム依存″やネット依存が最近話題となることが増えています。
著者は放課後等デイサービスで療育をしていますが、ゲームに過集中している子どもたちの様子を見る機会もあります。
もちろん、過集中しているからといっても、〝依存″というわけではありません。
一方で、発達障害はその特性が影響して〝ゲーム依存″になりやすい傾向があることもわかってきています。
それでは、発達障害とゲーム依存には一体どのような関連性があるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害とゲーム依存の関連について、ADHDとASDを例に取り理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「森山沙耶(2023)専門家が親に教える子どものネット・ゲーム依存問題解決ガイド.Gakken.」です。
ゲーム依存:ADHDを例に
〝ADHD(注意欠如多動症)″とは、不注意・多動性・衝動性を特徴とした発達障害です。
それでは、ADHDとゲーム依存との関連性について以下、著書を引用しながら見ていきます。
今すぐに得られる満足を求めるために衝動的な行動をとりやすいことや、刺激を求める傾向などがゲーム行動とマッチングするのではないかと考えられます。
遅延報酬の嫌悪が見られることが、ADHDの特徴の一つとしてあげられています。
著書にあるように、ADHDの特徴の一つである衝動性がゲーム依存に繋がる要因となっている可能性がると記載されています。
つまり、長期の目標のために今の衝動を抑えることが特性上難しくなり、直ぐに刺激を得ることができるゲームに走る傾向があること、そして、こうした状態が長期化して使用時間が長くなると〝ゲーム依存″に繋がっていくということです。
衝動性の高さは、〝遅延報酬の嫌悪″と関連があると言われていますが、これはつまり、先の予定や目標よりも今を優先する傾向が強いということです。
また、著書には、ADHDの人たちが好みやすいゲームの種類として以下のものがあると記載されています(以下、著書引用)。
なかでもFPS・TPSと呼ばれるシューティング系のゲームへのハマりやすさが見られます。
著書の内容から、ADHDの人たちは、非常に刺激的なゲーム(FPS・TPS)を求める傾向があります。
つまり、少しずつ経験値を積み重ねていきながら、地道にレベル上げていくようなRPGよりも、銃撃戦で敵と戦うなどのゲームを好む傾向があるということです。
ゲーム依存:ASDを例に
〝ASD(自閉スペクトラム症)″とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とした発達障害です。
それでは、ASDとゲーム依存との関連性について以下、著書を引用しながら見ていきます。
ゲーム依存と関連のある特徴として、興味の範囲が狭く、こだわりが強いことがあげられます。
社会的なコミュニケーションの難しさから、リアルで同級生と遊ぶよりも、自宅でゲームや動画をして過ごすほうが落ち着くということもあるでしょう。
著書にあるように、ASDの特徴である興味関心の幅の狭さや対人コミュニケーションの困難さが影響して、ゲーム依存に繋がる可能性があると記載されています。
例えば、興味の幅が狭いことは、一度自分の興味関心がゲームに移行するとゲームの世界に徹底的に没入する可能性があります。
また、対人コミュニケーションの困難さは、現実での対人コミュニケーションに楽しさや喜びを感じにくい傾向から、バーチャル空間といったゲームの世界に楽しみを見出す可能性があります。
もちろん、ASD特性があるから〝ゲーム依存″になるということではなく、興味関心の幅の狭さや対人コミュニケーションの困難さといったASD特性が影響して〝ゲーム依存″になる可能性が高まるということです。
また、著書には、ASDの人たちが好みやすいゲームの種類として以下のものがあると記載されています(以下、著書引用)。
マインクラフトといったサンドボックス(箱庭)と呼ばれるジャンルのゲームなどにハマる子が多いようです。
著書の内容から、ASDの人たちは、何かを黙々と制作していくゲーム(サンドボックス)を求める傾向があります。
つまり、直ぐに報酬が得られるような銃撃戦などとは異なり、地道に時間をかけて自分のペースで進めていくようなゲームを好む傾向があるということです。
以上、【発達障害とゲーム依存の関連について】ADHDとASDを例に考えるについて見てきました。
適度なゲームは日々を楽しむ要素になる反面、過度なゲーム使用は依存に繋がる可能性もあります。
そして、発達障害はその特性が影響して〝ゲーム依存″の可能性を高めることが最近の研究でわかってきています。
大切なことは、発達特性を理解していきながら、過度なゲーム使用を予防することだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もこれから増加の可能性が予測される〝ゲーム依存″についての理解を深めていきながら、療育で必要な取り組みについて考えを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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