子どもは様々な遊びを通して自己を成長させていきます。
遊びの中には、少し危険とも思われる遊びがあります。
危険な遊びをどの程度許容できるのかは、養育者の持つ考え方、子どもの状態像の違い、地域・社会環境の違いなどがあるかと思いますので、統一された見解はないかと思います。
それでは、こうした背景を前提としながらも、子どもが危ない遊びをすることには一体どのような意味があるのでしょうか?
そこで、今回は、子どもが危ない遊びをする意味とは何かについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
もちろん、危険な遊びをどんどん展開した方が良いということではなく、ここではあくまでも危ない遊びを通して身に付く力、そして、危ない遊びから子どもを必要以上に遠ざけようとすることへのデメリットについて述べていきます。
今回参照する資料は「ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.」です。
子もが危ない遊びをする意味とは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
今日、私たちの社会では、親や他の大人が遊びに含まれる危険から子どもたちを必要以上に守ろうとしています。私たちは、子どもが自分で自分のことをコントロールし、適切な判断ができる能力を過小評価しています。
子どもたちに自らの行動や感情のコントロールするための方法を学ぶ機会を取り上げているのです。
著書の内容から、子どもは、遊びに含まれる危険な行為を通して、自分のことをコントロールする力を学んでいくのだと考えらえています。
自己コントロールとは、例えば、身体機能に関するもの、ここまでは大丈夫・ここから先は危険といった危機察知能力、さらに、危険行為を伴うことで生じる自他の興奮、快・不快の感情についても学習していくと考えられます。
しかし、現代社会において、危険な遊びは大人の手によって必要以上に守られているとも記載されています。
そして、必要以上にリスクを守る環境・社会は子どもたちが自らの行動を調整・制御する能力を過小評価し、そして、その機会を取り上げていると考えられています。
著者の経験談
著者が関わる子どもたちの中にも、少し危険とも思わる遊びをする子が多くいます。
例えば、高い所に登る、高い所から飛び降りる、戦いごっこの中で工作で作った武器を振り回す、ブランコを凄いスピードでこぐ、など様々あります。
もちろん、子どもたちを預かっている立場上、安全優先で療育をする必要があります。
一方で、安全性が保証された環境の中で、危険な遊びをすることは子どもたちの自己コントロールの育ちに寄与することも実感しています。
例えば、戦いごっこでボールや武器が他者に少し強く当たり相手が痛そうにした、逆に自分も同様に少し痛い思いをした、という状況はよくある光景です。
怪我に至るレベルではないにしても、遊びの中で身体を通して感じる不快感はその後、〝この程度の力加減だと大丈夫″といった力のコントロールの育ちを高めるのだと思います。
著者が見てきた子どもたちは、低学年児には力加減ができなかった子が、高学年になると力の調整がうまくなったと感じるケースは多く存在しています。
こうした背景は、少し危険とも言える遊びの中での身体経験がベースとなっているからだと思います。
別の例を見ていきましょう。
公園の遊具は子どもたちが大好きな遊びの一つです。
子どもはブランコに慣れてくると立ち乗りやかなりスピードをつけてこぐなど危険性が増していく姿も出てきます。
しかし、こうした経験を積み重ねていく中で、このくらいなら自分の身体は耐えることができることを学習しているとも言えます。
まさに、スリルとは、快・不快の絶妙なバランスの中で感じているとも言えます。
これは、ジャングルジムなど高い所に登る行為や、高い所から飛び降りる遊びにも同様に見られるものです。
もちろん、周囲の安全やその子の運動能力をある程度把握しておく必要が関わる大人にはあると思います。
そして、遊びの中であるからこそ、少し危険とも言われる遊びが実施できるのだと思います。
以上、【子どもが危ない遊びをする意味とは何か?】療育経験を通して考えるについて見てきました。
療育現場には関わり方が難しさを感じる子が多くいます。
遊びに関しても、誤った遊具の使用方法や自分の運動機能を大幅に超えた遊びをする子もいます。
そのため、個々に応じた環境設定や関わり方の工夫が必要になってきます。
そして、自分の身体を思う存分動かし発散させることができた子の多くは、身体機能の高まりと共に情緒も落ち着く傾向があると感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も危ない遊びの意味を深く掘り下げていきながら、子どもたち一人ひとりが自分自身をコントロールする力を高めていけるように療育の質を上げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.