著者は現在、学童期の子どもたちに療育をしています。
療育現場での子どもたちとの関わりを通して、〝集団遊び″の大切さを感じる機会が多くあります。
それでは、〝集団遊び″は子どもたちのどのような育ちに貢献するのでしょうか?
そこで、今回は、〝集団遊び″の大切さについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、〝多様性″と〝安心感″から考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「田中浩司(2014)集団遊びの発達心理学.北大路書房.」です。
著書の内容では、幼児期の〝集団遊び″を例に取り上げていますが、学童期においても、変わらず大切な視点だと著書は感じています。
それでは、以下、〝集団遊び″の大切さについて〝多様性″と〝安心感″をキーワードにそれぞれ見ていきます。
〝集団遊び″の大切さについて:〝多様性″から考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
集団遊びへの子どもの参加形態はきわめて多様である。(中略)多様性が許容される集団を経験することは、困難を抱えた子どもを含む、多様な子どもたちが在籍する小学校の準備として、必要な経験といえるのではないか。
著書の内容から、〝集団遊び″によって〝多様性″を経験することができるとしています。
集団には、様々な形態があります。
例えば、同級生集団、上下関係のある集団、仲のいい集団、仲のいい子もそうでない子も混ざっている集団、など多様です。
こうした多様な集団での遊びを通じて、様々な人間関係を学ぶ機会を得ることができます。
もちろん、〝多様性″が許容されるには、大人が一人ひとりに配慮した環境を整えていく必要もあります。
著者の療育現場には、多様な集団があります。
事業所に来る子どもたちは、曜日によってメンバーも異なるため、その日によっても集団が変わります。
また、成長に伴い集団構成や集団遊びの内容も変化していきます。
〝集団遊び″を通して、子どもたちは、○○君、○○ちゃんの良い所、苦手な所などを知ることができたり、関わり方、距離の取り方なども学んでいくことができます。
そのため、〝集団遊び″といった生身の身体を通したコミュニケーションが幼児期・学童期に豊富にあると、その後の社会性の育ちに非常に寄与すると思います。
多様な集団に参加していくことで、多様な人がいるという認識、その中で自分自身の立ち振る舞いなどを身に付いていく力がつくのだと思います。
〝集団遊び″の大切さについて:〝安心感″から考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
集団遊びは、子どもたちが集団生活、集団活動を行ううえでの、基本的な安心感を醸成する場所でもある。子どもたちが、共通の目標をもちながら1つの活動をつくり上げた記憶は、たとえ自分の意見が通らなかったとしても、最終的に自分が楽しめる活動に行き着くことができるという、将来への安心感へんとつながるだろう。
著書の内容から、〝集団遊び″によって〝安心感″を経験することができるとしています。
〝集団遊び″を通して、同じ目標・目的を持つことで、様々なアイディを出し合いながら、活動を組み立てていったという経験は一人では実感することができない〝安心感″に繋がります。
著者の療育現場でも〝集団遊び″を通して実感する〝安心感″が子どもたちの中に見られます。
子どもたちは、同じ目標を持つことで、少しずつですが、他児と繋がりながら、遊びを発展させていきます。
そして、遊びの発展の中に、他児との深い繋がりも生まれていきます。
それは、〝お互いが仲間であるという認識″です。
こうした認識は、偶発的に生じる場合もありますが、共通の目標・目的のある遊びの中で非常に活性化されるという実感があります。
例えば、戦いごっこを例に見ると、大人が適役、子ども全員が仲間とした際に、これまで見られなかった子ども同士の繋がりが出てきます。
こうした繋がりを通して、子供たちの中に〝安心感″が生まれます。
活動を通した共通の目標・目的から育まれる〝安心感″です。
こうした共通の目標・目的に向けて共に活動するができるという〝安心感″は、後の、例えば、友人関係、部活動や仕事などにも影響してくるように思います。
以上、【〝集団遊び″の大切さについて】〝多様性″と〝安心感″から考えるについて見てきました。
著者の療育現場では子供たち同士の繋がりが非常に多く見られています。
その要因は、多様な集団を経験していく中で少しずつ育まれる社会性であったり、共通の目標・目的に向けて共に歩んでいるという安心感なのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も〝集団遊び″を楽しいものにしていけるような工夫や〝集団遊び″によって何が育つのかについても引き続き学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【〝集団遊び″の大切さについて】遊び相手と遊びの場所の変化を通して考える」
田中浩司(2014)集団遊びの発達心理学.北大路書房.