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療育で大切なこと【放課後等デイサービスでの実践から考える】

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臨床発達心理士である著者は、長年にわたり、療育現場に関わってきています。

療育現場には、発達に躓きのある子どもたちが通所してきており、特別な支援や配慮を必要としています。

子どもたち一人ひとりの状態像も多様なため、特別な支援や配慮もその子に応じて異なります。

それでは、発達に躓きのある多様な子どもたちにとって、療育上、共通して大切となるものはあるのでしょうか?

そこで、今回は、療育で大切なことについて、著者の経験を踏まえ、放課後等デイサービスでの実践から考えを深めていきたいと思います。

 

 

療育で大切なこと【放課後等デイサービスでの実践から考える】

多くの子どもたちにとって大切となるのが「環境を整えること」です。

「環境を整えること」にも様々な要素があります。

 

 


今回は、4つの視点にわけてお伝えしていきます。

 

 

1.いつも通りの安心感

自閉症や知的障害などの発達障害の子どもたちは、変化に対して非常に敏感に反応したり不安を示すことが多くあります。

その背景には、例えば、感覚過敏の問題、見通しを立てることの難しさとも関連する実行機能の問題、環境から様々な意味を読み解き理解していく認知機能の問題などがあるかと思います。

こうした発達特性・発達段階を理解していきながら、子どもたち一人ひとりにいつも通りの安心感を作っていくことはとても大切です。

この安心感には、人、場所、時間などがあります。

もちろん、変化していく環境から様々な意味を学ぶことも大切ですが、発達に躓きのある子どもたちにとっては、変わらない安心感を前提とした関わり・環境調整が必要だと実感しています。

 

 

2.トラブルを未然に防ぐ

療育で大切なことは、二次障害の予防と軽減です。

著者が長年療育をしていて二次障害がある子ども、またはその傾向がある子どもは非常に他児とトラブルを起こす頻度が高いと感じます。

二次障害といってもその内容や症状は個人差があります。

二次障害の背景を、発達特性や生育歴、他の環境からの情報などを踏まえて整理していきながら、その子が安心して過ごせる環境を作ることがとても大切です。

また、トラブル回避のための環境調整は、何も二次障害の予防だけではなく、すべての子どもたちに共通して大切だと思います。

人はトラブルの経験を通して能力を磨くといった考え方もあるかもしれませんが、

それにはある程度の自己修正能力が必要です。

自己修正能力とはメタ認知とも関連し、自分の行動や思考を客観視して修正する力です。

そして、こうした自己修正能力を苦手とするのが発達障害の子どもたちです。

そのため、トラブルを未然に防ぐためには、子どもたちの特性を踏まえて、行動を事前に予測しておく必要があります。

その中で、大切なことは失敗経験よりも成功体験を積み重ねるという視点です。

トラブルが少なく、活動でうまくいったという成功体験が増えていくと、子どもたちのトラブルに繋がる行動は減っていくといった実感があります。

 

 

3.構造化の視点(どこで・何をするかがわかる)

構造化の視点は、自閉症を中心に世界に広がりました。

構造化で大切なことは、環境からの意味の理解のしやすさです。

例えば、場所の構造化、時間の構造化、手順の構造化など様々な要素があります。

著者が勤める放課後等デイサービスには、様々なタイプの子どもたちがおりますが、子どもたちが好きな活動を踏まえた構造化をしています。

例えば、○○ちゃんは工作遊びを一人で黙々とするのが好きなので静かに一人でできるスペースを作る、○○君は他児と体を使って遊ぶのが好きなので広々としたスペースを整えるといった感じです。

その他、時間によるスケジュール(全体のスケジュール・個別のスケジュール)をホワイトボードや紙に書いて活動前に視覚的に提示する、工作遊びの際に、分かりやすいマニュアルやタブレットなどを手掛かりに作業の手順を構造化するなどがあります。

このように構造化の要素にも様々あり、子どもたち一人ひとりの状態像や、集団遊びとった視点からの構造化などが子どもたちの安心感に繋がると実感しています。

 

 

4.その子の状態に応じたその日の対応

子どもたちの状態は日によって異なることがよくあります。

特に、気持ちの波の変動が強い子は、通所してくるその日の状態に応じて必要となる支援や配慮事項が変わってくることがよくあります。

ある意味、スタッフの臨機応変な対応や、全体を含めた環境調整が必要になります。

ここで大切なことは、子どもたちの状態に応じた対応をすることで、子どもたちが大人に対して信頼や通所する場所に安心感を持つということです。

例えば、学校でうまくいかずイライラした気分で通所してきた子に対して、その気分を理解し、そのイライラを発散する遊びを作ったり、ゆったり過ごせる環境を整えるなどがあります。

「環境を整える」とはこうした子どもたちの、日々の気持ちの状態を理解しながら、臨機応変に環境を作っていくこともあり、スタッフの力量やスタッフ間のチームワークが必要になるものだと思います。

 

 


以上、療育で大切なこと【放課後等デイサービスでの実践から考える】について見てきました。

今回は、「環境を整えること」の4つの視点について、著者の放課後等デイサービスでの経験からお伝えしてきました。

著者自身、「環境を整えること」の意味や必要性が理解できるようになるまで多くの時間がかかったように思います。

それには、日々の子どもたちとの関わりを通して、子どもたちにとって過ごしやすい環境・安心できる環境を試行錯誤し続けたことで少しずつ見えてくるものだと思っています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場から日々の子どもたちが安心して過ごせる環境を作っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「療育は必要か?-療育経験からその必要性について考える-

関連記事:「自閉症への支援‐構造化‐

-大切なこと, 放課後等デイサービス, 療育

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