発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

パニック 対応 発達障害

【発達障害児の〝パニック″直前の基本対応】〝パニック″を予防するために大切な関わり方

投稿日:2023年7月11日 更新日:

療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わっていると〝パニック″行動への対応に迫られる場面があります。

もちろん、〝パニック″に至る要因は人それぞれ異なりますが、できるだけ〝パニック″行動を助長させないためにも早期の介入が必要になります。

 

それでは、〝パニック″への直前の対応としてどのような関わり方が大切になるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の〝パニック″直前の基本対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝パニック″を予防するために大切な関わり方について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。

 

 

スポンサーリンク

〝パニック″直前の基本対応について

著書の中では、〝パニック″直前には個別対応(他児と離して一対一での対応)が大切となり、そして、個別対応の中で次の三つの順番で進めていく必要があると記載されています(以下、著書引用)。

①不安定になっている原因を聞く

 

②不安・イライラに共感する

 

③微笑み、触って、安心させる

 

 


それでは、それぞれについて見ていきます。

 

①不安定になっている原因を聞く

この対応は著者も療育現場でよく行います。

もちろん、発語があり、言葉である程度自分の気持ちを伝える言語能力が子どもには必要です。

著者は以前、〝パニック″直前の子どもに、不安になっている原因を聞かずに無理に気持ちを切り替える言葉がけをしたことがあります。

この対応は、イライラをさらに助長させることになってしまい、結果、〝パニック″になってしまった苦い思い出があります(似たような経験は何度もあったように思います)。

この時の子どもの思いは〝なぜ、この人は自分の気持ちを理解しようとしてくれないのだろうか?″といった状態だったのかもしれません。

もちろん、切り替えを促す対応も時には効果があるかもしれませんが、〝パニック″になるということは〝パニック″を引き起こしている原因があるということです。

この原因について、関わる大人が直視することで、その日の対応がうまく行かなくても、子どもにとって何が不安材料となっているのかを徐々に掴んでいくことができます。

こうした寄り添う気持ちが〝パニック″直前の基本対応には大切になります。

 

 

②不安・イライラに共感する

様々な子どもへの関わりで〝共感″は大切です。

①の〝不安定になっている原因を聞く″ことは、子どもの気持ちに寄り添う必要があり、うまく寄り添うためには、共感的態度・関わりが重要です。

ここでも以前の著者は失敗した経験があります。

①の不安定になっている原因を聞くまではできたものの、その原因に対して共感をうまく示すことができなかったために、子どもはこの人は信頼できない人だと判断したのかさらに機嫌が悪くなってしまったというものです。

もちろん、不安定になっている原因が納得のいくものであれば話はスムーズにいきますが、発達に躓きの子どもたちは独特の物事の見方やロジックに原因を帰属する場合もあります。

共感的態度を示すためには、発達障害児がもつ特性なども含め多様な考え方、物事の感じ方を理解する態度(知識も含め)が必要です。

そして、なかなか受け入れにくい内容にも、一度、共感的態度を示した後に話を進めていくことが〝パニック″直前の基本対応には大切になります。

 

 

③微笑み、触って、安心させる

原因を聞き、共感した後には、笑顔で身体(子どもが安心できるところ)を触って安心感を与える対応が大切です。

著者もある程度、〝パニック″が落ち着いてきたタイミングで、笑顔で身体をさすることがあります。

この時の子どもの反応を見て落ち着いてきたのかどうかを判断することもあります。

落ち着いてきた場合には、抵抗なく受け入れてくれることが多くあります。

もちろん、子どもの中には、身体を優しく触るといった行為で落ち着きを取り戻す場合もあります(逆に過敏性が高い場合には拒否するケースもあります)。

そのため、普段から子どもたちが安心でき、落ち着きを取り戻す方法などを模索することが大切だと感じています。

 

 


以上、【発達障害児の〝パニック″直前の基本対応】〝パニック″を予防するために大切な関わり方について見てきました。

〝パニック″行動にも、直前の対応、直後の対応など様々な対応方法があります。

そして、様々な対応方法のバリエーションを持っておくことで対応力が高まっていくと感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もこれまでの多くの失敗経験を糧に、これまで以上により良い関わり方・支援ができるように学びを続けていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児の〝パニック″への対応について】予防的視点から考える

 

小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.

スポンサーリンク

-パニック, 対応, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【ユーモアのセンスの大切さについて】発達障害児支援の現場を通して考える

発達障害児支援において〝ユーモアのセンス″を持った関わりが大切です。 著者も長年療育現場で多くの子どもたちと関わってきていますが、〝ユーモア″は時に最大の支援とも感じるほど絶大な効果を発揮することがあ …

発達障害の生きづらさについて考える

発達障害には、自閉症スペクトラム障害、ADHD、学習障害など様々なタイプがあります。 それぞれ、特徴とする障害特性は異なります。また、他の障害と併存したり、一方の障害特性が強く、他方が少し見られるなど …

行動障害の対応について【適切行動支援アプローチとは?】

‟行動障害(Challenging Behaviour)”とは、自傷や他害、パニックや癇癪、器物破損など、その行動が自他に悪い影響を及ぼすものだとされています。 行動障害と強度行動障害とを定義上分類し …

発達障害と愛着障害の理解と支援-療育現場で活用できる視点について-

療育現場には、発達に躓きのある様々な人たちがおります。 著者も長年療育現場に勤める中で、多くの子どもたちと関わってきました。 療育現場での経験を通して難しいと感じたのは、様々な発達障害をどのように理解 …

【登校しぶりはなぜ生じるのか?】発達障害児・者との関わりから考える

〝登校しぶり″は子どもからの最終手段のSOSだと考えられています。 つまり、〝登校しぶり″の前段階で子どもは様々なことを悩み・試み、失敗に終わった過程を経て登校をしぶるといった発信を見せるということで …