【発達障害児との信頼関係の築き方】支援で大切な関わり方・褒め方・叱り方を総合解説

まとめ記事

発達障害児への支援では、子どもとの信頼関係を築くことが土台となります。しかし、「どう関われば安心してもらえるのか」「褒めても響かないのはなぜか」と悩む方も多いでしょう。

著者は、長年の療育経験から、子どもたちに良い支援を届けていく上で、‟信頼関係”の構築は最重要課題だと考えています。

そして、信頼関係を築く上で、‟褒め方”‟叱り方”についても、効果的な方法を考えていくことが大切だと実感しています。

 

この記事では、療育現場での実践と発達障害への理解を踏まえながら、信頼関係を育む関わり方のポイントや、効果的な褒め方・叱り方についてわかりやすく解説します。

 

※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています。

 

発達障害児との信頼関係の築き方に関する理解と支援の全体マップ

本記事では、発達障害児との信頼関係の築き方に関して、以下の7つの章に分けて解説していきます。

1.発達障害児との信頼関係構築の重要性

2.発達障害児との信頼関係の築き方のポイント

3.信頼関係を築くために重要な褒め方

4.信頼関係を損なう叱り方・上手な叱り方

5.療育実践から見た信頼関係構築のエピソード

6.まとめ

7.参考書籍紹介

 

 

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発達障害児との信頼関係構築の重要性

この章では、信頼関係の構築の重要性について、「科学の視点」「教育専門家の視点」「著者(臨床発達心理士)の視点」について見ていきます。

 

科学の視点

発達障害児支援に限らず、関わり手との信頼関係の構築は、支援を進める上で非常に重要な取り組みの一つです。

それを裏付ける研究が「ランバードの研究」によって明らかにされています。

ランバードの研究では、心理療法の効果をメタ分析し、その結果、ラポールといった肯定的な関係構築が、全体の効果量の30%を占めていたという内容となっていました。

これは、他の要因と比較しても、高い効果量を占めていたことから、心理療法において、関わり手との関係構築は、支援(心理療法)において重要な位置を占めていると解釈できます。

以上の「科学の視点」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【療育現場で関係性をつくることの大切さについて】ランバードの研究を例に

 

教育専門家の視点

不適応行動(問題行動:他害、暴言、かんしゃく、パニック、逃避行動など)が見られる、多くの子どもたちと関わったことのある教育専門家の意見を踏まえると、以下のことが言えます。

子どもたちに良い教育(支援)を届けていくためには、子どもたちから見て、関わり手がどのように″認知”されているかということが、根源的に重要だと考えらえています。

つまり、関わり手(支援者・教育者・カウンセラーなど)が、支援・教育などを受ける側から見て、〝好き・嫌い”など、どのように〝認知”されているかが、その後の支援・教育を進める上での根幹を担っていると言えます。

例えば、〝好きな人”からの働きかけに対しては、ポジティブに受け止めるなど、自らの行動をプラスに変える原動力に繋がっていきます。

一方で、〝嫌いな人”からの働きかけに対しては、ネガティブな感情が湧くなど、自らの行動を変えるどころか、ネガティブな行動の発生・増加に繋がるリスクさえあると言えます。

以上の「教育専門家の視点」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【不適応行動の対応で大切な子どもとの信頼関係】発達障害支援の経験を通して考える

 

著者(臨床発達心理士)の視点

著者は長年にわたり、発達障害児支援をしてきていますが、発達障害児も以上の内容(「科学の視点」と「教育専門家の視点」)については、同様のことが言えると実感しています。

注意すべき点は、発達障害の‟特性を理解した関わりを大切にする”こともプラスしていくことが必要になります。

例えば、自閉スペクトラム症(ASD)であれば、相手の意図や気持ちの理解が難しいといった対人コミュニケーションの問題への理解、特定の対象に強く執着するといったこだわり行動への理解、感覚過敏・鈍麻への理解などがあります。

また、ADHD(注意欠如多動症)であれば、ある刺激に直ぐに反応してしまう衝動性の問題への理解、ルールや約束などを忘れやすいといった不注意の問題などがあります。

こうした特性への理解を踏まえた関わりをしていくことで、発達障害の特性のある子どもから見て、〝この人(支援者)は自分のことを分かってくれている”〝この人(支援者)といると安心できる”といった感覚が持てることが、後の支援を展開していく上で非常に大切な基盤になると感じます。

 

 

発達障害児との信頼関係の築き方のポイント

この章では、「信頼関係の築き方のポイント」「信頼関係がうまく築けない理由」について見ていきます。

 

信頼関係の築き方のポイント

発達障害児との信頼関係を築く上でのポイントとして、まずは、‟発達障害の子どもは、信頼関係が取れている大人の言うことなら聞く”といった傾向があります。

そして、信頼関係を築く上で‟共感と共有”が大切なポイントになります。

著者は、発達障害の子どもの世界観に寄り添う姿勢を見せていくこと、つまり、‟共有世界”を豊富に持っていくことで、‟共感”できる部分が相対的に増えていくと感じています。

もちろん、‟共感と共有”を増やしていくためには、自分が持っている物事の見方や考え方を再構築する必要も出てきます。

時間はかかりますが、‟共感と共有”の経験が増えていくことで、子どもとの信頼関係が深まり、さらには、著者が伝えることを徐々に受け入れる様子も増えていくと感じます。

次に大切なポイントが、‟7割は子どもがやりたい遊びを許容して、残りの3割は大人から遊びを提案する(7:3ルール)”関わりがあります。

残りの3割とは具体的には、子どもの社会性を伸ばすことに繋げていく部分だと言えます。つまり、他者(社会)に自分を合わせる力をつける部分になります。

もちろん、大人からの提案は(仮に3割程度あっても)、ある程度、子どもとの信頼関係が積み上がった後でないと難しいケースもあるため、最初は子どもの要望が中心になる場合もあります。

この残りの3割の部分は、先に見た、‟信頼関係が取れている大人の言うことなら聞く”で重なる部分でもあります。

著者が見て、子どもとの関わり方、関係構築がうまく取れる支援者は、子どもの要望・欲求を受け止める部分と、大人からの提案のバランスを、子どもの状態に応じて臨機応変に変えていける人だと思います。

ここで言う、臨機応変さとは、何も適当・曖昧(基準がない)という意味ではなく、子どもの発達や特性、性格などを把握しながら、かつ、リアルな子どもの気持ちの状態にも目を配った対応が取れることだと考えます。

こうしたバランス感覚は、様々な子どもたちと、長期的に信頼関係を構築していく中で身に付くものだと言えるため、簡単なようで、難易度は高いと著者は考えています。

以上の「信頼関係の築き方のポイント」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児と信頼関係をつくるために大切な2つのこと】自閉症を例に考える

関連記事:「信頼関係を軸にした発達障害児支援7:3ルール

 

 

信頼関係がうまく築けない理由

逆に、子どもと信頼関係をうまく築くことができない場合には、どのような要因が引き金となっているのでしょうか?

様々な要因があると想定できますが、その一つに、‟力で押さえ付けた過剰な叱責”があります。

こうした対応により、一時的に、子どもが素直に言うことを聞く場合もありますが(時に、信頼が取れているという錯覚を生む)、根底の部分で信頼関係に大きな亀裂が生じています。

小学校高学年頃になると、反発・反抗というネガティブな行動が出てくるリスクもあります(‟誤学習”に繋がっていく)。さらには、自閉症の特徴が強いと、怒られた経験が急に‟フラッシュバック”するリスクもあります。

ここでのポイントは、‟叱る・褒める以上に認める”といった根っこの部分を大切に関わることが重要になります。

仮に、信頼関係に一度亀裂が生じた際には、‟認める”という部分を大切にしながら、先で紹介した‟共感と共有”経験を積むこと、さらには、成功体験を積み重ねていく工夫などを取りながら、信頼関係の回復をはかることが大切です。

著者は、これまでの療育経験を振り返って見ても、子どもとうまく信頼関係が築けなかったことがあります。

その時の関わり方に共通する部分として、著者の‟こうあるべきた”‟こうあって欲しい”など、著者の思いが強く出ていることが多くあったように感じます。先に見た‟7:3ルール”が‟3:7”になっていたように思います。

一方で、一度、信頼関係にひびが入っても、できるだけ早期に、自身の関わり方を見直していくことで、回復をはかることは可能だと考えます。

むしろ、信頼関係の構築は思い通りには進まず、試行錯誤の過程の中で、徐々に進んでいくといった感覚が著者の実感としては強くあります。

以上の「信頼関係がうまく築けない理由」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【発達障害児と信頼関係がうまく築けない理由とは?】力で押さえつけた関わりの反動から考える

関連記事:「【不適応行動への対応で必要な認めるという関わり方】叱る以上に大切なこと

関連記事:「【力で押さえつけた発達障害児への反動への対応】信頼関係を回復するために必要なこと

 

 

信頼関係を築くために重要な褒め方

発達障害児との信頼関係を築く上で‟褒める”関わりはとても大切です。

一方で、ただ何となく子どもの行動を褒めも効果は期待できません。そのため、‟褒め方”に磨きをかけていく必要があります。

上手な褒め方”とは、例えば、‟プロセスを褒める・具体的に褒める・頑張った点を聞いてみる”などの方法があります。

プロセスを褒める、具体的に褒めるためには、子どもの行動を常に観察していく必要があります。子どもの行動の変化や、取り組みに対しての動機や思いなどをくみ取っていくことが重要だと言えます。

逆に、子どもに頑張った点を聞くことで、子どもの行動の背景を深く引き出していくことができ、その結果、褒める部分が見えていくることもあります。

一方で、発達障害児は、様々な特性から上記の‟褒め方”だけでは、効果が期待できない場合もあります。例えば、以下の①~③のケースが想定できます。対応も含めて簡単に紹介します。

ケース①:褒められることが良いとまだわかっていない場合→望ましい行動に対して即座に褒める(すごい!、えらい!、100点!など)→褒めることが強化刺激になるようにしていく。

ケース②:褒める言葉がなかなか子どもに伝わらない、入力されない場合→与えたい刺激のチャンネルを子どもたちの状態像に応じて変えていく(大人に注意を一度向けてから褒める・視覚情報の活用など)。

ケース③:過去の失敗経験がトラウマの形で残ってしまい、褒められることを拒絶している場合→多くの〝褒め言葉″〝感謝の言葉″を短く穏やかに使い続けていく。

著者の療育経験を踏まえて見ても、日頃から子どもの行動をよく観察しながら‟褒める”関わりを取ることは、子どもとの信頼関係の構築、そして、自尊心の向上においてとても大切だと感じます。

また、‟褒める”といった肯定的な声掛けは、子どもたちに関わる大人たち全体で行っていくことで、より効果が期待できると実感しています。

つまり、良いチーム、明るく・温かいチームが、子どもたちに、言葉・非言語的な部分も含めた‟褒める”対応をとることで、より良い効果を生むことは、これまでの療育実践から強く感じます。

以上の「信頼関係を築くために重要な褒め方」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【子育てにおいて重要な3種類の〝褒め方″とは?】効果的な〝褒め方“について考える

関連記事:「【発達障害児への〝褒め方″で大切なこと】療育経験を通して考える

 

 

信頼関係を損なう叱り方・上手な叱り方

子どもと信頼関係を結ぶ上で‟褒める”ことは大切ですが、その一方で、‟叱る”対応が避けられない場合もあります。

例えば、内容こそ様々ありますが、他者から見て、望ましくない行動(問題行動:他害・暴言・癇癪・逃避行動など)を子どもがとる場合です。

その中で、信頼関係を‟損なう叱り方”は、‟罰を与える”ことです。‟罰を与える叱り方”をすることで、子どもはより攻撃的になったり、力で他者をねじ伏せる行動を誤学習してしまうなど、信頼関係においてヒビが入る可能性が高まっていきます。

一方で、‟上手なり方”は、‟否定語を極力使わない”、‟結果以上にプロセスを大事にする”、‟望ましくない行動の理由を説明する”、‟関わり手の気持ちを伝える”などがあります。


一般的に ‟叱り方”には、‟①教えるために「叱る」”、‟②憂さ晴らしのために「叱る」”、‟③その場をおさめるために「叱る」”の3種類があると考えられています。

この中で、行動の改善の効果が期待できるのが‟①教えるために「叱る」”だけだと言われています。

もちろん、②と③の状況を取らざるおえない場合もありますが、最終的に、①に繋げていくことを意識して関わることが大切です。

また、叱ることが上手な人は、様々な試行錯誤のもとで叱るため、めったに叱ることがないと言われています。


先に見た‟上手な叱り方”や‟教えるために叱る”ことが、子どもの行動(問題行動)の改善に繋がっているかどうは、叱られた後に、子ども自身がその行動を見直して、変えていこうといった動機が働く様子があるかどうかが重要なポイントだと考えらえています。

一方で、発達障害児の中には、‟社会のルールとしてよくないこと”だといった伝え方の方が、効果がある場合があります。

また、愛着障害児への‟叱り方”のポイントは、子どもの感情状態に早く気づき、早めに働きかける、新たな行動に誘う「先手支援」が重要であり、その理由として、問題行動が起こってからの「後手」の対応(‟叱る対応”)には、自動的に子どもの行動を変容させる機能がないからだと考えらえています。


著者は、療育実践の中で、どうしても子どもを叱ることがあります。極端なケースだと、例えば、子どもの大けがに繋がる行動、他者を酷く傷つける行為などがあります。

こうした行動・行為において叱る対応は必要だと思いますが、その他の様々な問題行動に対して、子どもを叱り続けたとしても、問題行動が改善されないことは、様々なケースを踏まえて見ても実感しています。

仮に、改善されたとしても、叱る対応をする人以外の場面で問題行動が見られる場合には、本質的な意味で行動の改善に繋がったとは言えないと思います。

本質的な意味で行動が改善さらたのならば、場面や状況が変わっても、問題行動をとらなくて済むからです。

そして、問題行動に対して‟叱る”対応を取ること以前に、先で紹介した、子どもとの信頼関係といった土台をいかに作っていけるかどうか、そして、信頼関係を作る上で、子どものことを理解する様々な情報(発達・特性・性格など)を把握していくことが大切だと考えます。

以上の「信頼関係を損なう叱り方・上手な叱り方」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【間違った〝叱り方″による問題点とは?】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【子育てにおける上手な〝叱り方″とは?】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「療育で大切な視点-子どもへの「叱り方」について-

関連記事:「愛着に問題のある子の支援-「叱る」対応の問題点について-

関連記事:「【不適応行動への対応で必要な叱り方のポイント】信頼される叱り方を通して考える

 

叱る対応の効果と弊害

ここから先は、そもそも‟叱る”対応には効果があるのか、そして、‟叱る”対応による弊害について見ていきます。

結論として、叱ることを通して、人は物事を学習したり、うまく育つことはないと考えらえています。

その理由として、叱られると人は、‟防御システム(自分を守るシステム)”が働くからです。防御システムとは、人の学びや成長とは真逆のシステムだと言えます。

一方で、叱ることが非常に限定された状況において効果を発揮する場合もあります。それは、〝危機的な状況への介入効果″、つまり、目の前で起きている絶対にやめてほしいことや変えてほしいことへの介入効果です。

例えば、道路への飛び出しや、危険な物を周囲に振り回すなどがあります。

ここでの注意点は、こうした叱る対応は、後の行動変化への介入効果は期待できないこと、現在進行形の非常に限定された行動(危機的な状況)の変化への介入効果が期待できるといった点です。

以上を踏まえると、叱る対応は、様々な面で人の学習や成長を妨げるリスク・弊害があると言えます。

そのため、叱る状況が発生しないように事前に対策を講じるといった事前の対応(‟前さばき”とも呼ばれる)が大切になってきます。

人の学びや成長の根源は〝冒険システム″によって支えられていると考えらえています。

‟冒険システム”とは、‟防御システム”と逆のシステムであり、欲求に基づく報酬系回路が基盤となっており、人が何かに挑戦しようとしたり、物事を新しく生み出そうとする原動力となる働きをしています。

著者のこれまでの療育経験を振り返って見ても、叱り続けたことで、子どもが自身の行動を変えようとした様子はほとんどなく、仮に、あった場合には、そもそも変わる力が備わっていたため、叱らずとも、‟○○しよう!”、‟○○した方がいいよ!”などと伝えるだけで行動が変わることが多くあります。

発達障害児は、ネガティブな行動の修正に時間がかかることがあります。それは、ネガティブな行動の修正の妨げとっているものに発達特性が影響している(生得的に持っている)、あるいは全般的な発達がゆっくりであることが影響しているため、じっくり丁寧に関わり続ける必要があります。

そのため、ネガティブな行動ができるだけ発生しないような事前の環境設定など、安心できる環境・関わり方がの工夫が非常に大切になっていくと感じています。

以上の「叱る対応の効果と弊害」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【叱ることには効果があるのか?】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【叱ることの効果について】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【叱ることを手放す前さばきの視点について】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【〝叱る″ことによる弊害とは?】学びや成長を支えるメカニズムを通して考える

 

 

療育実践から見た信頼関係構築のエピソード

この章では、「重度の自閉症児との信頼関係の構築例」「フラッシュバックが見られる自閉症児との信頼関係の構築例」「人への関心が乏しい自閉症児との信頼関係の構築例」といった著者の療育実践から見た信頼関係構築のエピソードについて簡単に紹介していきます。

 

重度の自閉症児との信頼関係の構築例

著者が療育施設で担当していた当時未就学児の自閉症児Aさんのケースです。

Aさんは、自閉症の特徴が非常に強いこと、また、知的にも遅れがあり、言葉は単語を発生する発達段階、また、感覚過敏も非常に強く、非常に特徴的だったことが、他者を警戒する行動が顕著に見られていました。

著者が少しでも近づこうものなら、Aさんは、明らかに嫌悪の表情を浮かべ、酷い状態だと攻撃して著者を遠ざけようとする様子が見られていました。

Aさんと信頼関係を築くために、初期の対応として、Aさんへの過度な侵入をさけ、程よい距離感を探りながら、Aさんの興味関心の世界を共有する場面を意図的に作っていきました。

例えば、Aさんが好きそうな体を使った遊び、好きな絵本の読み聞かせ、ミニカー遊びなどです。

そこから数か月経過すると、Aさんは、徐々に著者を警戒する様子が減っていき、逆に、著者に注意を向ける様子が増えていきました。

そこから先は、著者が意図的にAさんに働きかける様子を徐々に増やしていきました。例えば、遊びへの誘いかけ、スキンシップを取る場面の工夫など、距離感を非常に気をつけながら、著者からの能動的行動を少しずつ増やしていきました。

そのから数か月が経過する頃には、Aさんは自ら著者の手を引き遊びに誘ってきたり、著者とのスキンシップ遊びを楽しむ様子が非常に多く見られるようになっていきました。

ここで著者が感じたことは、自閉症児の中には特性などが影響して外界に対する脅威や警戒心が強い場合があること、そのようなケースに対して、自閉症児の思いを受け止めることに比重を強くかけていきながら、相手に対する脅威や警戒心をほどいていき、接触欲求を少しずつ高めていくといった信頼関係の構築が大切なのだと思います。

以上の「重度の自閉症児との信頼関係の構築例」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【自閉症児と信頼関係をつくる上で大切なこと】関係発達論の視点を通して考える

 

フラッシュバックが見られる自閉症児との信頼関係の構築例

著者が放課後等デイサービスで関わりのあった当時小学校高学年の自閉症児Bさんのケースです。

Bさんとは、小学校低学年の頃から関わりのある子どもで、会話のやり取りは普通にできますが、感覚過敏が強く人への警戒心が時折見られ、中でも、過去の嫌な出来事が‟フラッシュバック”する様子が頻繁に見られていました。

‟フラッシュバック”は、何か引き金となる情報をキャッチした場合や、状態が悪い時に急に自ら思い出すことが見られていました。

当初、Bさんと著者はほとんど会話もなく、一緒に遊ぶと言っても、工作を少しする程度であり、著者を警戒することもあり、状態が悪いと‟あっちいって!”などと、著者を遠ざけることも度々ありました。

Bさんと信頼関係を築くために、Bさんが好きな活動(工作・ごっこ遊び・会話など)を通して、信頼関係を構築していきながら、その中で、安心できる声掛け(共感的応答・受容的対応など)を多くかけていくこと、快の情動を活動を通して引き出す関わりを継続していきました。

その後のBさんは、著者が迎えにくると、喜ぶ様子を見せるようになり、時折、甘える様子も出てきました。また、自分からごっこ遊びに著者を誘ってくる様子も出てきました。遊びの際には、大声を出して喜ぶ様子が見られるようになっていきました。

また、その中で、〝フラッシュバック″や物事を悲観的・被害的に受け止めることも少なくなっていったと感じています。

ここで著者が感じたことは、‟フラッシュバック”は急に止めることは難しいですが、普段から、温かい環境・受容され・肯定される環境に多くいることで、徐々に軽減していけるのだと思います。

以上の「フラッシュバックが見られる自閉症児との信頼関係の構築例」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【療育(発達支援)の成果】人への信頼と情緒の安定をキーワードに考える

 

人への関心が乏しい自閉症児との信頼関係の構築例

著者が放課後等デイサービスで関わりのあった当時小学校高学年の自閉症児Cさんのケースです。

Cさんとは、小学校低学年の頃から関わりのある子どもで、人への関心が乏しく、活動のほとんが一人遊びの多い子どもでした。

こだわりが強く、特に、予定が変更になると癇癪を起こすことも多く、スケジュール通りに物事を進める様子がありました。

Cさんは、活動中はほとんど一人で絵を描いたり、本を読んだり、工作をして過ごすことが多く、著者が歩み寄っても、‟一人にして欲しい”といって著者を遠ざけていました。

Cさんと信頼関係を築くために、著者はCさんが持つ興味関心の非常に限定された領域に意識を向けるようにしていきました。

著者がCさんの世界に興味関心を持っていることが少しずつ認識されてきたのか、その後、少しずつCさんから著者に話しかけてきたり、興味関心の世界を共有しようとする様子が見られていきました。

その頻度は、月を増すごとに増えていき、Cさんは逆に著者の遊びや行動に興味を示したり、著者の口癖や行動などを真似る姿も出てきました。

高学年になったCさんは、著者と興味関心の世界を共有する思いが非常に高まり、興味関心を軸に双方向の会話ができるようになっていきました。その中には、著者からの発案やアイディアなども豊富に組み込まれていきました。

そして、Cさんは、著者以外の他者の行動にも関心を寄せる様子が見られていき、他者と部分的に関わる様子も増えていきました。これまで気にしていたスケジュールへのこだわり以上に、著者との過ごす時間を大切にする様子もでてきした。

ここで著者が感じたことは、自閉症児は人への興味が乏しいのではなく、関わり方・関係の築き方に特徴さがあり、興味関心を基点として、うまく関係が築けていくことで、人への関心は非常に高まっていくのだと思います。

以上の「人への関心が乏しい自閉症児との信頼関係の構築例」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【療育(発達支援)の成果】人への興味関心の広がりをキーワードに考える

 

 

まとめ

‟信頼関係”の構築は、科学の視点や教育専門家、療育実践を踏まえてみても、支援の根幹を成す働きをしています。

信頼関係を築く上で、‟共感と共有”は非常に大切なキーワードであり、他者と身体を通した様々な活動を共有していくことで、共感できる部分も増えていきます。また、子どもの主体性(やりたい遊びの受容など)をある程度許容していくスタンスもまた大切です。

信頼関係がうまく築けない理由として、‟力で押さえ付けた過剰な叱責”があり、こうした対応は後の子どもとの関係性において、大きな亀裂を生むリスクがあります。

信頼関係を回復・築く上で‟‟叱る・褒める以上に認める”といった根っこの部分を大切に関わることが重要になります。

信頼関係を築くために重要な‟褒め方”として大切なものに、‟プロセスを褒める・具体的に褒める・頑張った点を聞いてみる”などがあります。逆に、信頼関係を損なう‟叱り方”には、‟罰を与える”といったものがあり、‟上手な叱り方”の例として、‟教えるために「叱る」”があります。

一般的に、‟叱る”ことは、‟防御システム(自分を守るシステム)”が働くため、‟叱る”ことで、人は物事を学習したり、うまく育つことはないと考えらえています。

また、自閉症など発達障害児には、‟社会のルールとしてよくないこと”だといった伝え方の方が、効果がある場合があります。愛着障害児への‟叱り方”のポイントは、子どもの感情状態に早く気づき、早めに働きかける、新たな行動に誘う「先手支援」が重要です。

著者はこれまで様々な自閉症児との関わり中で、興味関心を通した関わり、受容的・共感的・肯定的な関わりが、信頼関係を築く上でとても大切だと実感しています。

 

 

参考書籍紹介

今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。

発達障害児との信頼関係の構築を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。

発達障害児の子育てに関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害の子育てに関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

発達障害児の支援に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害の支援に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

 


発達障害児が見せる問題行動への支援においても信頼関係の構築は重要になります。問題行動に関する理解と支援に関する総合記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【発達障害の問題行動とは?】特徴・原因・アセスメント・対応方法を療育経験をもとに総合解説」。

信頼関係の構築は愛着障害への支援においてもまたとても大切です。愛着障害の理解と支援に関する総合記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【愛着障害とは?】愛着形成・特徴・大人の愛着障害・支援方法を総合解説」。

本記事と併せて読んで頂くことで理解がさらに進むと思います。

 

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