愛着障害は、子ども時代の愛着形成のつまずきと深く関係しており、人との関わり方や感情のコントロール、自己理解などにさまざまな影響を及ぼすことがあります。
愛着障害を正しく理解するためには、まず「愛着形成で大切なポイント」を知ることが重要です。
著者は長年療育現場に携わっていますが、ここ最近、愛着に問題を抱えている子どもが非常に増えていると感じることから、発達障害だけではなく愛着障害の理解と支援に関する知識もまた不可欠だと考えています。
本記事では、愛着形成の基本から愛着障害の概要、大人の愛着障害、そして愛着アプローチや愛情の器モデルを含めた支援方法までを総合的に解説します。
愛着障害について理解を深めたい保護者や支援者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています。
愛着障害の理解と支援の全体マップ
本記事では、愛着障害の理解と支援に関して、以下の8つの章に分けて解説していきます。
1.愛着形成で大切なこと
2.愛着障害の概要
3.大人の愛着障害
4.支援方法①:愛着アプローチ
5.支援方法②:愛情の器モデル
6.支援方法③:その他の支援方法
7.まとめ
8.参考書籍紹介
愛着形成で大切なこと
「愛着」とは、「特定の養育者との情緒的な絆」のことを指します。
愛着を理解する上で参考になるまとめ記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【愛着とは何か?】発達段階・愛着スタイル・支援のポイントを総合解説」。
子どもは特定の養育者との愛着経験を基盤として、自らの内部に対人様式の鋳型(「愛着スタイル」)を形成していきます。一方で、過去から現在に至るまでに「愛着形成(愛着関係)」に躓き・問題があると「愛着障害」が生じることがあります。
この章では、「愛着形成で大切なこと」について、「愛着対象は誰でも良いのか?」「複数の人と関わることが重要なのか?」「関わる量が重要なのか?」「愛着形成で大切な時期はあるのか?」「愛着形成がうまくいかないとその後の支援はもう手遅れなのか?」「愛着は世代間伝達するのか?」といったポイントについて見ていきます。
以上のポイントを抑えておくことは、愛着障害の理解と支援で何を大切にしていけば良いかといった方向性の理解に繋がっていきます。
愛着対象は誰でも良いのか?
愛着対象(母親機能と呼ばれるもの)は「誰にでも」担えるものではありますが、「誰かが」担わなくてはいけないといったところが重要です。
ここでいう母親機能とは、安定した愛着形成上必要となる条件のことを指し、その条件とは、安全基地機能、安心基地機能、探索基地機能の3つの条件が必要になります。基地機能についてはこちらで紹介しています:関連記事:「愛着形成には何が必要か?:3つの基地機能から考える」。
以上の「愛着対象は誰でも良いのか?」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着関係で大切なこと【愛着対象は親でなくても良い】」
複数の人と関わることが重要なのか?
愛着対象はまずは特定の1人の人物との関係性が重要だと考えられています。
それは、多数による関わりや、役割分担など交代制の関わりは、子どもが誰を基軸とし信頼すればよいか曖昧となり混乱するからだとされています。
愛着の定義にもあったように、「特定」の1人の人物というところが大切です。
以上の「複数の人と関わることが重要なのか?」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着形成で大切なこと【愛着形成は1人から始まる】」
関わる量が重要なのか?
愛着対象となる人の忙しさ、つまり、関わる時間が少ないといった物理的な要因は、心理的な面に直接的に影響するわけではないと考えられています。
つまり、関わる時間(量)が愛着(愛着形成)において問題にはならないと言えます。
大切なことは、子どもの心理的な捉え方(愛着対象の関わりを子どもがどう受け止めたか・感じたかといった関係性の質)の方が重要となります。
以上の「関わる量が重要なのか?」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着(愛着形成)で大切なこと【関わる時間よりも質が重要】」
愛着形成で大切な時期はあるのか?
「臨界期」とは、人間の脳には物事を学習する最適な時期があり、その時期を逃すと学習できる可能性が激減するといった時期のことを指します。
愛着形成において重要な時期(臨界期)は生後6ヶ月から1歳半頃だと考えられています。
一方で、臨界期を過ぎても愛着形成は可能であると言われています。
以上の「愛着形成で大切な時期はあるのか?」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着形成で大切な時期とは【臨界期からその重要性を考える】」
愛着形成がうまくいかないとその後の支援はもう手遅れなのか?
愛着関係は「いつでも」取り戻せることは可能だと考えられています。
大切なことは、医療などによる治療ではなく、心理的支援にのみ根本的な改善効果があるということです。
つまり、愛着の問題は「いつでも」修復可能であるが、早期に心理的支援・介入を受けた方が、改善効果が期待できるとされています。
以上の「愛着形成がうまくいかないとその後の支援はもう手遅れなのか?」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着形成で大切なこと【愛着障害の支援に手遅れはない】」
愛着は世代間伝達するのか?
虐待の世代間伝達は、絶対に生じるものではなく、経験によって変えていくことも可能であると考えられています。
負の連鎖が生じる要因として、親が子育てをする中で、自分の親から直接的に自分の子育てについて批判されたり、あるいは、間接的に過去の親の育て方を思い出すといった背景があるとされています。
負の連鎖を断ち切るポイントとして、親が自分の親と関係を修復したり、逆に、様々なサポートを受けたり、良き理解者と出会うことで、親と心理的な距離を取って子育てができることが大切だと言えます。
以上の「愛着は世代間伝達するのか?」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【虐待の連鎖が続くのは本当なのか?】愛着の世代間伝達について考える」
愛着障害の概要
この章では、「愛着障害とは何か?」「愛着障害の特徴」「愛着障害へのNG対応」について見ていきます。
愛着障害とは何か?
子どもの愛着障害の診断には、「脱抑制タイプ(脱抑制対人交流障害)」「抑制タイプ(反応性愛着障害)」の2つがあります。
「脱抑制タイプ(脱抑制対人交流障害)」:過剰なスキンシップを求めるなど、大人に対する警戒心がまったくなく、誰彼なしにかかわりを求めるタイプです。
こうした行動の背景として、安心感の欠如があり、不足している安心感(ポジティブな感情)を満たそうとしてとる行動だと考えられています。
「抑制タイプ(反応性愛着障害)」:人を警戒する特徴があり、人間不信と言えるほど、極端に人とのかかわりを避けるタイプです。
こうした行動の背景として、安全基地の欠如があり、本来、自分のことを守ってくれる安全感の基盤がないため、人への警戒心、叱責を受けると関係を遮断するといった行動が見られると考えられています。
さらに、診断基準にはありませんが、この2つのタイプ以外にもう一つのタイプ(第3のタイプ)があると考えられています。それは、「ASDを併せ持つ愛着障害のタイプ」です。
「ASDを併せ持つ愛着障害のタイプ」:普段から「籠もる」という特徴があります。例えば、帽子やフードをかぶったり、カーテンや狭いロッカーなどに入り込み、安心基地・安全基地を確保しようとします。
さらに、このタイプの子どもが居場所感を失う(無理に奪われる)と、「パニックになって攻撃する」「固まって一時的にシャットアウトする」行動が見られます。
愛着障害には、ASDのように、スペクトラム障害としての見方は認定されていませんが、「ASDを併せ持つ愛着障害のタイプ」には、それぞれの特性のスペクトラムの掛け算([自閉の強さの程度]×[愛着の問題の強さの程度])により状態像が変化するといった法則があると考えている専門家もいます。
「ASDを併せ持つ愛着障害のタイプ」については、介入すべき優先順位はまずは愛着の方にあり、愛着からのアプローチをとることで劇的に問題行動が減少すると考えられています。
以上の「愛着障害とは何か?」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【愛着障害の2つのタイプ】脱抑制タイプ・抑制タイプについて療育経験を通して解説する」
関連記事:「【ASDを併せ持つ愛着障害のタイプについて】療育経験を通して考える」
関連記事:「愛着障害をスペクトラム障害とする見方と愛着障害への支援を重視することの意義」
愛着障害の特徴
愛着障害の特徴して「愛情欲求行動」「自己防衛」「自己評価の低さ」の3つがあります。
「愛情欲求行動」:ポジティブな感情を求める注目行動(例:見て!見て!とアピールする)と、ネガティブな感情の予防である愛情試し行動(例:叱られるかどうか相手の対応を試す)が見られます。
「自己防衛」:自分を守るための残り少ないポジティブな感情を守るために取られる行為(例:嘘・他害行動・解離など)が見られます。
「自己評価の低さ」:自己評価の低さは、誰かと成功体験を共有したり、自分の成功体験を報告してポジティブな感情を増やすことができないことからきています。また、その自己評価の低さを受け入れられない自己高揚パターンが見られることもあります。
これら3つの特徴は、愛着障害でなければ生じない特徴だと考えられています。
以上の「愛着障害の特徴」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着障害の3大特徴【愛情欲求行動・自己防衛・自己評価の低さ】について考える」
愛着障害へのNG対応
愛着障害への関わりとしてしてはいけないNG対応として以下の5つがあります。
「感情に期待した対応」:「どうして○○したの?」などと、理由を問うやり方は、相手の感情への問いかけであり、愛着に問題を抱えている子どもは、感情の発達が未発達なため、感情に期待する問いかけはNGです。
「叱る対応、追い詰める対応が引き起こす問題」:叱る、追いつめる対応は感情の混乱を引き起こします。愛着に問題を抱えている子どもは、感情発達が未成熟なため、叱る対応では感情が混乱してしまい、ネガティブな感情を抑えられず、どうしようもなく、攻撃するか、関係性を遮断するしかなくなるためNGです。
「腫れ物にさわる対応、無視する対応、取り上げない対応」:愛着に問題を抱えている子どもの行動を無視したり、取り上げない対応をすると、愛情欲求エスカレート現象(要求・命令・支配がエスカレートしていく)が生じるためNGです。
「要求に応えるだけの対応、主導権を握られた対応、受容、傾聴」:子どもの要求に応える、子どもに主導権を握られる対応は、愛着に問題を抱えている子どもにおいて感情発達が未成熟なため、自他の感情を理解したり自分の感情のコントロールが困難なためNG対応です。また、受容・傾聴の対応も、自分の気持ちに気づけないためNG対応です。
「かかわる人の無連携な勝手な対応」:関わる人たちがそれぞれの思いだけで、連携せずに勝手に対応すると、愛着障害の症状を増幅させるためNG対応です。
以上の「愛着障害へのNG対応」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着障害への対応[してはいけない対応5選]」
大人の愛着障害
愛着障害に関する正式な診断基準は、子どもにのみ適用されているものです。つまり、「大人の愛着障害」という疾病概念は存在していません。
一方で、愛着に問題を抱えている大人もいるため、幼少期の愛着障害の診断に該当しているかを、本人の語りなどを中心に見ていく必要がありますが、こうした情報収集(アセスメント)は容易ではないと言えます。
大人の愛着障害(愛着の問題)に見られる「2つの思考のクセ」として、「自己犠牲&自責思考になりやすい」「他人には徹底的に気をつかってしまう」があります。
大人の愛着障害(愛着の問題)の原因としては、「養育者からの暴力や無関心」「養育者の情緒の不安定さ」「条件付きの愛情」「養育者の多忙さ」「発達障害の影響」などがあると考えられています。
大人の愛着障害(愛着の問題)の治し方として、「愛着再形成の7つのレッスン」として、自分自身をねぎらったり、他者からサポートをもらえた記憶を思い出す、不完全な自分を受け入れるなど、複数のキーポイントがあると考えられています。
以上の「大人の愛着障害」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【大人の愛着障害は診断可能なのか】大人の愛着の問題について考える」
関連記事:「【大人の愛着障害の特徴について】2つの思考のクセを通して考える」
関連記事:「【大人の愛着障害の原因】愛着形成がうまくいかない養育者の7つの特徴」
関連記事:「【大人の愛着障害の治し方】愛着再形成の7つのレッスンを通して考える」
支援方法①:愛着アプローチ
「愛着アプローチ」は、「愛着モデル」に基礎を置いています。
「愛着モデル」とは、「愛着へのダメージ→不安定な愛着→ストレス耐性・適応力の低下→症状出現」というメカニズムを想定しています。そのため回復モデルも、「不安定な愛着→愛着関係への注目→愛着の安定化→ストレス耐性・適応力の改善→より高いレベルの適応」という流れで回復を図るとされています。
「愛着モデル」では、「医学モデル」とは異なり、症状に強くこだわらずに、その人自身の生き方・適応を目標にしており、生き方を見直し、社会に適応していく過程の中で症状が改善されていくといった考え方を重視しています。
以上の「愛着モデル」に基礎を置く「愛着アプローチ」とは、安全基地機能の回復を行うことで、愛着関係を安定化させることで、自他への信頼の回復、ストレスや負の認知の改善、社会適応の改善を狙いとする方法だと考えられています。
そして、「愛着アプローチ」では、自分は守られているといった実感の「安全基地機能」の回復がとても重要になります。
さらに、「愛着アプローチ」には、愛着対象との関係に直接的に働きかける方法としての「愛着修復的アプローチ」と、改善したい愛着対象以外の身近な他者が安全基地機能を担い愛着の修復を図る方法としての「愛着安定化アプローチ」の2つのアプローチがあります。
以上の「支援方法①:愛着アプローチ」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着アプローチとは何か【「医学モデル」と「愛着モデル」の違いから考える】」
関連記事:「愛着アプローチとは何か【2つのアプローチから考える】」
支援方法②:愛情の器モデル
「愛情の器モデル」とは、心理学者の米澤好史氏が長年の現場での実践研究を踏まえて開発した愛着修復プログラム(ARPRAM:ア ープラム)です。
このプログラムで重要となるのが、「安心基地・安全基地・探索基地の形成」「キーパーソンの選定」「感情のラベリング支援」「先手支援」を意識した関わりがあります。
以下、それぞれのポイントについて解説していきます。
安心基地・安全基地・探索基地の形成
愛着障害児への支援において、大切になるのが順番も踏まえると「安心基地」→「安全基地」→「探索基地」の形成です。
「安心基地」とは、〝一緒にいると心地がいい″といったポジティブな感情を引き出してくれる存在(基地機能)のことです(ポジティブ感情を生じさせる機能・強化させる機能)。
「安全基地」とは、〝自分のことを必ず守ってくれる/守られている″という信頼感が得られる存在(基地機能)のことです(ネガティブ感情を軽減・回復する機能)。
「探索基地」とは、〝安心・安全基地から離れ、また戻ってこれる、そしてまた離れることができる″といった確信が得られる存在(基地機能)のことです。「探索基地」の形成は、愛着形成のゴールだと考えられています。
愛着障害の子どもへの支援の目標、つまり、一つの達成基準として、〝こころの過半数″といった〝適切でプラスの感情を引き起こす行動が過半数″を超えることを目指すと良いと考えられています。この基盤になっているのが、「安心基地」→「安全基地」→「探索基地」を意識した関わりになります。
以上の「安心基地・安全基地・探索基地の形成」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【愛着で大切な3つの基地機能】安心基地→安全基地→探索基地のメカニズム」
関連記事:「愛着障害への支援のゴールとは【「探索基地」機能が持つ2つの重要性から考える】」
関連記事:「【愛着障害の支援は何を目標とすれば良いのか?】こころの過半数をキーワードに考える」
キーパーソンの選定
愛着とは「特定の」養育者との情緒的な絆のことでした。つまり、ここで重要になるのが、「一人のひと」→「キーパーソン」の選定と体制作りです。
「キーパーソン」とは〝子どものことを一番よく知っている人″だと言えます。それに加えて、安心基地・安全基地・探索基地の機能を果たす役割(将来的に)だと言えます。
「キーパーソン」の選定の仕方として、‟誰でもなれる″〝相性の把握″が重要になります。
「キーパーソン」を中心とした支援体制作りもまた重要であり、関わる際には、キーパーソンを経由して〝つなぐ支援″と〝情報集約″を意識する必要があると考えられています。
以上の「キーパーソンの選定」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【愛着障害のある子どもへの支援で大切なキーパーソンとは?】キーパーソンの決定の仕方について」
関連記事:「愛着障害のある子どもに必要なキーパーソンを中心とした支援体制作りについて解説する」
感情のラベリング支援
愛着障害の特徴として「感情発達の未熟さ」があります。
「感情発達の未熟さ」があると、ネガティブな感情(嫌悪・悲しみ・不安など)の処理・修正の困難さ、そして、同時に、ポジティブな感情(喜び・驚きなど)を次の行動のエネルギーに繋げていく困難さが出てきます。
また、愛着障害の子どもは、年齢的には、1~2歳程度の感情発達で止まっていると言われています。
「感情発達の未熟さ」に対するアプローチとして、「感情のラベリング支援」があります。
「感情のラベリング支援」のポイントとして、「一緒に同じ活動を行う」「同じ活動を通して生じる感情を確認する」「行動・認知・感情を繋げる接着剤を用意する」「常に同じ感情反応を示す」があります。
「感情のラベリング支援」に効果が出てきたと言える時は、キーパーソンに対して、安心基地と安全基地といった基地機能が働き始めたときだと考えられています。
以上の「感情のラベリング支援」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【愛着障害の子どもの感情発達の未熟さについて】療育経験を通して考える」
関連記事:「【愛着障害の支援で大切な感情のラベリングについて】4つのポイントを通して考える」
関連記事:「【愛着障害の子どもへの対応で重要な感情のラベリング支援の効果】療育経験を通して考える」
先手支援
愛着障害の子どもへの対応として、「先手支援」が重要になります。
愛着障害の子どもに見られる様々な問題行動への対応は、起こってからの「後手」の対応ではなく(結果「叱る」に繋がります)、子どもの感情状態に早くに気づき、早めに働きかける「先手支援」が大切になります。
一方で、「叱る」対応は、子どもが問題となる不適切な行動をした後の、「後手」の対応になっているため、「後手」の対応では改善効果が期待できないと考えられています。
「先手支援」とは、「キーパーソン」が「主導権」を握る対応だと言えますが、逆に子どもが「主導権」を握ってしまうと、「愛情欲求のエスカレート現象」といった負のスパイラルに陥るリスクがあります。
大切なことは、「キーパーソン」が子どもの行動を導いていくことで、子どもは「キーパーソン」が誘ってくれたことで〝うまくいった・楽しい″といったポジティブな感情の生起、つまり、〝安心基地″を築いていく方向に働きかけていくことにあります。
以上の「先手支援」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「愛着に問題のある子の支援-「叱る」対応の問題点について-」
関連記事:「【愛着障害の子どもへの対応で必要な先手支援】主導権を握ることの重要性を通して考える」
支援方法③:その他の支援方法
その他の支援方法として、愛着をキーワードに「意欲が低い子どもへの支援」「依存性が強い子どもへの支援」「子どもに強みを見せる支援」について見ていきます。
以上の内容は、著者の療育実践においても活用度が高い内容だと言えます。
意欲が低い子どもへの支援
「意欲の低下」は「愛着(アタッチメント)」と関連があると考えられています。
例えば、子どもは安全基地があることで、安心感を基盤に「探索行動」を取ります。しかし、安全基地がなくて不安な状態では「探索行動」が減少します。つまり、愛着がうまく形成されないことは、子どもの「意欲の低下」に繋がっていきます。
「意欲が低い子どもへの支援」として、「早期支援」が非常に重要になります。
著者がこれまで見てきた愛着障害を抱える子どもに対して一貫して感じることは、支援は早いほど効果が得られやすいといった実感です。
子どもは、外の世界を知りたいといった好奇心を強く持っているため、好奇心のエネルギーを引き出す上で、子どもにしっかりと愛情のエネルギーを貯めていける基盤を形成することを早めに取り組んでいくことが大切です。
著者が見てきた子どもたちは、愛情のエネルギーを多分に注いでいくことで、意欲のエネルギーが高まっていったと感じるケースはこれまで多くあったと感じます。
以上の「意欲が低い子どもへの支援」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【愛着への支援】意欲が低い子どもの理解と対応について考える」
依存性が強い子どもへの支援
愛着に問題を抱えていると、特定の大人にべったりと依存する「依存性が強い子ども」がいます。
こうした状況に対して、〝複数の大人が分散して関わった方が良い″〝特定の大人から距離を取ることが必要″と考え対応することが逆効果になる場合があります。
愛着障害への支援において、「特定の養育者」といったまずは一人の大人との信頼関係が重要ですので、特定の大人から距離を適度に空ける(取る)関わりでは、長い目で見た場合において課題解決が難しいと考えられています。
つまり、まずは安心基地・安全基地・探索基地を意識した関わりを通して、特定の人との関係性を深めていき、それが軌道に乗ってきたら、次の支援の展開(愛着対象の拡張→さらには同世代の関係構築)に移行させていくことが大切です。愛着対象が増えていくことで、徐々に、依存状態から抜け出すことができます。
著者はこれまで特定の一人の子どもと長い時間をかけて丁寧に愛着関係を築いていった時期がありましたが、周囲のスタッフから‟依存状態”になっていると指摘されたこともありました。
一方で、その後の発達経過を辿っていくと、著者と愛着のベースがしっかりと構築されたことで、その後の対人関係が広がっていきました。つまり、‟依存状態”を抜け出すためには、まずは「特定の一人の人」とじっくりと愛着関係を築いていくことが大切だと感じます。
以上の「依存性が強い子どもへの支援」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【愛着への支援】依存性が強い子どもの対応について考える」
子どもに強みを見せる支援
愛着への支援として、「子どもに強みを見せるアプローチ」を取ることで、愛着形成を短縮化できる利点があると考えられています。
例えば、工作が得意、スポーツが得意、音楽が得意、歴史・虫・鉄道など詳しい知識があることで子どもたちを惹きつける可能性が高まります。
著者は愛着に問題を抱えている子どもとの関わりにおいて、興味関心の共有を通して関係性が深まったと感じた経験はこれまで多くあったと感じます。
愛着に問題を抱えている子どもにおいて、最初は心を開いてくることが難しいため、初めの導入として「子どもに強みを見せる支援」を行うことで、‟○○さんと一緒に○○の活動がしたい”、‟○○さんから○○について教えてもらいたい”といった特定の人への関心を深めていくことに繋げていくことができます。
以上の「子どもに強みを見せる支援」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【愛着への支援:子どもに強みを見せるアプローチ】療育経験を通して考える」
まとめ
愛着障害はここ最近増えてきていると言われています。
愛着障害の理解と支援のおいて、安定した愛着形成において大切となる複数の知識を把握しておくことが大切です。中でも鍵になるのが、愛着形成は「誰にでも担えるもの」「特定の一人の人との関係性が重要」「量よりも関わりの質が重要」「いつでも修復可能」といった理解が大切です。
愛着障害には、「脱抑制タイプ(脱抑制対人交流障害)」「抑制タイプ(反応性愛着障害)」の2つに加え、診断基準にはない第3のタイプ「ASDを併せ持つ愛着障害のタイプ」もあると考えられています。第3のタイプにおいては、介入すべき優先順位はまずは愛着の方にあります。
愛着障害の特徴して「愛情欲求行動」「自己防衛」「自己評価の低さ」の3つがあります。
愛着障害へのNG対応として、「感情に期待した対応」「叱る対応、追い詰める対応が引き起こす問題」「腫れ物にさわる対応、無視する対応、取り上げない対応」「要求に応えるだけの対応、主導権を握られた対応、受容、傾聴」「かかわる人の無連携な勝手な対応」があります。
「大人の愛着障害」という疾病概念は存在していませんが、大人になっても愛着に問題を抱えている人はおり、思考のクセや背景要因、治し方なども紹介されています。
愛着障害への支援方法として「愛着障害アプローチ」があり、「愛着アプローチ」は、安全基地機能の回復を行うことで、愛着関係を安定化させることで、自他への信頼の回復、ストレスや負の認知の改善、社会適応の改善を狙いとする方法だと考えられています。
その他、愛着障害への支援方法として「愛情の器モデル」があり、「愛情の器モデル」で重要となるのが、「安心基地・安全基地・探索基地の形成」「キーパーソンの選定」「感情のラベリング支援」「先手支援」を意識した関わりがあります。
その他の支援方法として、「意欲が低い子どもへの支援」「依存性が強い子どもへの支援」「子どもに強みを見せる支援」など、様々なアプローチがあります。
愛着を理解する上で参考になるまとめ記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【愛着とは何か?】発達段階・愛着スタイル・支援のポイントを総合解説」。
参考書籍紹介
今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。
愛着障害を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。
愛着障害の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】愛着障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
愛着の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:「【臨床発達心理士が厳選】愛着(アタッチメント)に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
二次障害の理解と支援に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害の二次障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

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