‟行動障害(Challenging Behaviour)”とは、自傷や他害、パニックや癇癪、器物破損など、その行動が自他に悪い影響を及ぼすものだとされています。
行動障害と強度行動障害とを定義上分類している方もおりますが、今回は、以下の参照資料に基づいて‟行動障害”に統一して話を進めていきます。
関連記事:「行動障害と強度行動障害の違いについて-行動障害の背景にあるものとは?-」
それでは、行動障害に対して、どのような対応・支援が必要となるのでしょうか?
そこで、今回は、行動支援の対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、適切行動支援アプローチをキーワードに理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.」です。
行動障害の対応:適切行動支援アプローチとは?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
“適切行動支援アプローチ”とは、知的障害のある子どもや大人の望ましくない行動を変容させるときに適用するアプローチで、“PBS(Positive Behaviour Support)”とも呼ばれます。
著書の内容から、‟適切行動支援アプローチ”とは、応用行動分析に基づくアプローチとなっており、適切な行動を学習する方法になります。
例えば、古典的な行動療法には、問題となる行動には罰を、好ましい行動(望ましい行動)には報酬を、といったように賞と罰で行動をコントロールするといった考え方もあります。
一方で、適切行動支援アプローチは、問題となる行動を、学習された行動として考え、その上で、再度、望ましい行動へと学習していくことが可能だとする考え方になります。
つまり、問題となる行動、例えば、自分の欲求が満たされない時に、“他児を叩いてその欲求を伝える”を→“言葉で欲求を伝える”といった望ましい行動へと学習を促していくアプローチだと言えます。
それでは、適切行動支援アプローチは、具体的にどのような手順で行っていけばよいのでしょうか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
〝適切行動支援計画“を作成し、当人に行動障害に代わる適切行動を教えること、問題行動を起こさなくてもいいように当人の環境を整備することを行います。
このように著書では、適切行動支援アプローチを進めて行くにあたり、〝適切行動支援計画“を作成しておくことがまずは重要だとの記載があります。
適切行動支援計画についての詳細は、下記の記事に記載しています。
関連記事:「行動障害へのアセスメントについて【行動支援計画から考える】」
著者の経験談
著者自身、実際の所、まだ適切行動支援計画を作成した上で、適切行動支援アプローチを行ったことはありません。
一方で、実際に療育現場で目にする行動障害のある人(その傾向のある人)を見て、今回、著書で取り上げた内容は非常に有効であると考えています。
その理由として、行動障害の見られる問題行動には、様々な背景がありますが、結局のところ、そうした行動に蓋をする、禁止する、というような力任せの対応(無理解な対応)では効果がほとんどないと実感しているからです。
もちろん、力任せの対応は意識して行っていたというよりも、行動の背景要因と対応方法をしっかりと練らずに無意識的に対応していたという意味です。
当時の、自分を振り返ると、行動障害という用語を知っている程度のレベルの未熟さがありました。
一方で、問題行動を未然に防ぐ予防的視点や、問題となる行動の背景を分析し考えながら対応していくといったやり方が効果があったと感じています(当時は、予防的視点や機能分析といった言葉を知りませんでした)。
そのため、今後、実際の現場で行動障害への対応を、根拠に基づいて行っていくスキルは、私自身、そして、療育現場においてとても大切なことだと考えています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も行動障害など大変なケースにおいて、しっかりと対応していける技術を療育現場での実践を通して身に付けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
行動障害に関するお勧め書籍紹介
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英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.