自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。
DSM-5(米国精神医学会の精神疾患の診断分類 改訂第5版)によれば、自閉症スペクトラム障害の主な特徴として、〝社会的コミュニケーションの障害″と〝限定された反復的な行動様式″の二つがあります。
前者が〝社会的なもの″、後者が〝こだわり的なもの″になります。
それでは、自閉症の特徴の一つである社会的コミュニケーションの障害とはどのようなものなのでしょうか?
そこで、今回は、社会的コミュニケーションの障害について説明していきながら、自閉症の特徴についての理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。
社会的コミュニケーション障害とは何か?
〝社会的コミュニケーションの障害″とは以下の3つから構成されています(以下、著書引用)。
(1)社会的相互反応
(2)非言語的コミュニケーション
(3)対人関係
DSM-5の自閉症スペクトラム障害の判断基準として以上の3つがあります。
それでは、次にこの3つがどういったものかについて著書を引用しながら見ていきます。
(1)社会的相互反応
「社会的相互反応」とは、コミュニケーションを始めたときの相手の反応の怪しさと、実際に会話が成立するかと、情緒的な交換ができるかということになります。なかなか言葉では伝えにくい概念です。
著書の内容から、〝社会的相互反応″とは、言葉を介してのやり取りが成立するのかということや、情緒といった感情的な交流がうまく成り立つのか、などが該当します。
コミュニケーションとは、伝える人と受け手(2者間以上)の間で、共有する情報や感情がうまく行き来する必要があります。
言語情報にしても、言語も含めた情緒的(感情的)な交流(相互性)がうまく成立することが重要ですが、成立する条件や内容も様々かと思いますので、そういった意味でも、言葉で言い表すことが難しい概念なのかもしれません。
自閉症の特徴には、こうした〝社会的相互反応″の困難さがあります。
(2)非言語的コミュニケーション
「非言語的コミュニケーション」とは、アイコンタクトや、表情の変化で物事を伝えること、ジェスチャーや声のトーンで自分の意図を伝えることなどに関する困難さを表します。
著書の内容から、〝非言語的コミュニケーション″とは、その名の通り、アイコンタクトやジェスチャー、声のトーンなど言葉以外の方法で自他の気持ちや意図を伝え合うことを指します。
自閉症の特徴には、〝非言語的コミュニケーション″の困難さがあります。
例えば、視線の合いにくさ、他者の視線を追視することの難しさがあるため(共同注意の困難さ)、視線や表情などで自分の意志を伝える難しさがあります。
また、身振り手振りなどのジェスチャー(指差しなど)は、言葉の前の発達段階で特に自分の意志を伝える重要なものですが、この点に関しても発達の遅れや特有の発達過程が見られます。
声のトーンについては、相手と音声で気持ちを共有する原初的体験が乳幼児期から定型発達児には多く見られますが、この点についても共有の難しさが見られます。
自分の気持ちや意図を伝えるだけではなく、逆に、相手の非言語情報(視線や身振り手振り、音声など)を汲みとる難しさもあります。
(3)対人関係
「対人関係」というのは、実際に対人関係がうまく成立しているかいないか、社会生活が送れるか送れないかということになります。
著書の内容から、(1)(2)とは異なり、対人関係を中心とした実際の社会生活がうまく
送れているかどうかを判断するものとなっています。
つまり、(1)(2)の能力がいかに社会適応において反映されているかどうかを見るといったものになります。
そのため、普段の日常生活の中でのアセスメントが大切になります。
以上、【社会的コミュニケーションの障害とは何か?】自閉症の特徴について考えるについて見てきました。
社会的コミュニケーションは、私たちが他者と生活を共にしていく上でとても大切な能力になります。
自閉症の特徴の中核症状である〝社会的コミュニケーション障害″についての理解を深めていくことは、自閉症の人の心理面や行動面についての理解を深めるためにはとても重要な概念だと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症について様々な視点から学びを深め、より良い療育に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.