著者が勤める療育現場では、発達障害など発達に躓きのある子どもたちとの関わりの中で〝パニック″行動が時々見られることがあります。
もちろん、〝パニック″行動が起こる背景は人それぞれであり、〝パニック″が起こらないような予防的な対応がまずは大切です。
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しかし、それでも起こってしまう場合は、環境調整などをはかりながら〝パニック″がおさまるまで〝待つ″対応が必要です。
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一方で、〝パニック″の中で〝自傷″〝破壊″行動が見られる場合には、〝待つ″対応に加えて、何らかの対応が必要になります。
それでは、〝パニック″時の自傷・破壊行動にはどのような対応があるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児の〝パニック″時の自傷・破壊行動への対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。
〝パニック″時の自傷・破壊行動への対応について
著書には、〝自傷″〝破壊″行動には以下の対応方法があると記載されています(以下、著書引用)。
- 自傷行為への対応➡ケガをしないものを与える
- 破壊行為への対応➡壊していいものをわたしておく
それでは、次にそれぞれについて具体的に見ていきます。
自傷行為への対応➡ケガをしないものを与える
著者がこれまで見たきた子どもの中にも〝自傷″行為が時々見られることがあります。
例えば、思い通りにいかないと、扉に向かって全力で走り出し自分の体をぶつけたり、自分で自分の頭を叩く様子などがあります。
もちろん、こうした行為を周囲のスタッフは見守るのではなく、慌てて制止する対応を取ることが多いと思います。
しかし、簡単には〝自傷″行為はおさまらないことが多くあります。
このような状況において、安全なマットやクッションなど自分の体をぶつけても安全なものを与えて対応することも一つの方法です。
著書には、〝いぼいぼのついたゴムボール″を与えたことで子どもが頭をゴムボールに打ち付けることで気持ちがおさまった例が記載されています。
著者はこの本を読んで事前に〝自傷″行為を無理にとめるのでなく、〝ケガ″をしない物を事前に準備しておくことも必要だと考えさせられました。
破壊行為への対応➡壊していいものをわたしておく
著者の療育現場でも〝破壊″行動はよく見られるものです。
もちろん、子どもによって破壊の規模などは異なりますが、著者が見てきた例だと、部屋にあるものを蹴ったり投げたり、また、おもちゃや工作物などを壊す行為が見られています。
そのため、〝パニック″→〝破壊″行動が見られた際には、まずは静かな、そして、できるだけ物が少ない環境へとその子を誘導するようにしています。
著書には、〝割りばし″をたくさん与えて、好きなだけ折っていいことを伝えることで他の物を壊すのではなく、割りばしを折るという行為にのみ留まることができた事例が記載されています。
著者はこの本を読んで〝自傷″行為と同様に、事前に〝破壊″してもいい物を準備して提示する方法もひとつの手であると感じました。
どうしても〝破壊″行動といった壊す行為を見て、周囲の大人は物を壊すのを止めたり、取り上げようする対応を無自覚的にするのだと思います。
しかし、物に当たることで自分の行動を調整できるのであれば、壊してもいい物を与えるという方法も大切な視点だと思います。
また、以前、著者が関わった子どもの中には、ミット打ちで気持ちを落ち着けた子もいました。
そのため、サンドバックやミットなどもいい提示物かと思います(このようなものが周囲にあるケースも少ないかもしれませんが・・・)。
以上、【発達障害児の〝パニック″時の自傷・破壊行動への対応について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
〝パニック″時に起こる子どもの〝自傷″〝破壊″行動は大人が無理に止めようとする行為でもあります。
そのため、今回見てきたような〝代わりになる物″を準備し提示するという方法も大切な対応方法だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもがパニックを起こした時にも落ち着いて対応できるように、パニック直後の対応についての理解も深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.