【非認知能力とは?】特徴・認知能力との違い・アセスメント・育て方・支援方法を総合解説

まとめ記事

「非認知能力」とは、学力や知能などの「認知能力」とは異なり、意欲・自己調整・協調性・粘り強さなど、学習や生活を支える力のことです。近年、子どもの発達や教育・療育の分野で、その重要性が注目されています。

著者の療育経験を踏まえても、非認知能力の発達は、長期的に子どもたちと関わる中で、非常に大切な支援の根幹になっているのだと感じます。

 

本記事では、非認知能力の特徴や認知能力との違い、アセスメントのポイント、育て方や支援方法について、発達支援の視点からわかりやすく解説します。

 

※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています。

 

非認知能力の理解と支援に関する全体マップ

本記事では、非認知能力の理解と支援に関して、以下の8つの章に分けて解説していきます。

1.非認知能力とは何か

2.認知能力と非認知能力の関係

3.非認知能力はなぜ注目されているのか

4.非認知能力のアセスメントのポイント

5.非認知能力の支援・育て方のポイント

6.非認知能力の支援の実際

7.まとめ

8.参考書籍紹介

 

 

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非認知能力とは何か

「非認知能力」とは、認知能力以外の力、例えば、創造性、好奇心、興味・関心、意欲、自主性、主体性、自制心、自信などがあります。

最近、様々なメディや書籍などを通して、非認知能力の重要性が指摘されることが増えてきています。

非認知能力の育成で有名な「モンテッソーリ教育」を受けた人たちの中には、ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、スティーブン・ウォズニアック(アップルの共同経営者)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)、ジェフ・ベゾフ(アマゾン創始者)などがいます。

これらの人たちを見ても分かるように、非認知能力は現代社会で創造性を発揮して、主体的・意欲的に生きる上で、大切な能力だと言えます。

「モンテッソーリ教育」に関して詳しくはこちらの記事で紹介しています:関連記事:「【モンテッソーリ教育とは?】自己教育力・育つ力・関わり方・療育への活かし方を総合解説」。

 


「非認知能力」は、様々な能力から構成されていますが、ここから先は、非認知能力をもう少し分かりやすく理解する上で、3つの力に着目して説明していきます(以下、図を記載)。

 

その3つの力とは、1:「目標を達成する力」、2:「自分に向き合う力」、3:「他人とつきあう力」があります。

1:「目標を達成する力」:実行機能(自制心)、粘り強さ、やる気などがあります。

2:「自分に向き合う力」:自信、自尊心(自分自身を大切にする気持ち)、自己効力感(自分の力を信じる気持ち)があります。

3:「他人とつきあう力」:感情知性(自分や他人の感情を理解し、日々の行いに活かす力)、向社会的行動(親切心)などがあります。

ここから先は、以上の1~3について少し具体的に見ていきます。

以上の「非認知能力とは何か」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【モンテッソーリ教育と〝非認知能力″の関係について】モンテッソーリ・マフィアを例に考える」

関連記事:「【非認知能力の大切さ】10代の人たちを理解するために必要な3つの力とは?」

 

目標を達成する力

目標を達成する力には、「実行機能(自制心)」、「粘り強さ」、「やる気」などがありますが、ここでは、「実行機能」と「粘り強さ」について、具体的に見ていきます。

「実行機能」とは、「計画を立て、その計画通りに集中することの維持、別の刺激に飛びつくことを抑制するプロセスに関わっている高次の脳機能」のことを言います。

「やり遂げる力」や「遂行能力」とも言われています。

一方で、似た用語に「粘り強さ」があります。最も近い用語に「グリット」があります。「グリット」とは、「目標に向けて努力を続ける力(やる気や情熱も含む)」のことを言います。

「実行機能」と「粘り強さ(グリット)」は、内容こそ似ていますが、以下の点で違いがあります。

「実行機能」→短期の目標レベル、自分の感情にブレーキをかける働き(「やりたいけどやるべきではないこと」を抑える働き)

「粘り強さ(グリット)」→長期の目標レベル、自分の行動のアクセルを踏み続ける働き(「特にやりたくないけど、やったほうがいいこと」を淡々とし続ける働き)

何かを成し遂げるためには、「目標を達成する力」に見られる「実行機能」や「粘り強さ」の力が必要になります。

「実行機能」を鍛えることは容易ではないと考えらえています。「実行機能」への支援を含めたお勧め記事はこちらで紹介しています:「【実行機能とは?】種類・発達・ワーキングメモリ・発達障害との関係・支援方法を総合解説」。

「粘り強さ」を育てるためには、目標の明確化や、成長マインドセット(自分の能力は努力や学習を通じて成長・向上するという信念や考え方)を持つことが大切だと考えられています。

以上の「目標を達成する力」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力で大切な目標を達成する力】「実行機能」と「粘り強さ」の違いを通して考える」

 

自分に向き合う力

自分に向き合う力には、「自尊心」や「自己効力感」などがあります。両者は異なる概念ですが、互いに影響し合う関係にあります。

「自尊心」とは、自己への評価(好き・嫌い、自分に価値がある・ない、など)を指します。

「自己効力感」とは、求められていることや課題などを達成できると思えるかといった、自分ならできるといった気持ちを指します。

「自己効力感」には、全般的に自己効力感が高い状態を「一般性自己効力感」が高いと言い、これに対して、勉強やスポーツなど特定の領域にのみ自己効力感が高いことを「領域固有の自己効力感」が高いと言います。

「自己効力感」は、幼児期頃(1歳前後)から見られはじめ、この時期には、全般的な自信が見られ、その後、学童期以降には、少しずつ自分を客観視できるようになっていきます。そして、青年期には、周囲の影響を強く受けながら発達していくと言われています。

「自己効力感」を高めていくためには、「成功体験の積み上げ」、「他人からの説得(信頼できる人から‟できる”と励まされるなど)」、「代理経験(同じ・近い立場の人からの間接的な学び)」「感情の状態や身体感覚を自覚すること(例えば、不安や緊張をポジティブに解釈するなど)」があります。

以上のアプローチは、「自尊心」の向上にも寄与すると考えます。それに加えて、「自尊心」の発達には、あるがままの自分を無条件に受けいれてもらえたという愛着関係が非常に重要になると言えます。

以上の「自分に向き合う力」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力で大切な感情を調整する力】自己効力感と自尊心を通して考える」

関連記事:「【非認知能力で大切な自己効力感の発達について】幼児期・児童期・青年期の特徴について考える」

関連記事:「【非認知能力で大切な感情を調整する力】自己効力感を高める4つの方法について考える」

 

他人とつきあう力

他人とつきあう力には、「感情知性」や「向社会的行動(親切心)」などがあります。

「感情知性(感情知能)」は、非認知能力の最も代表的なものだと考えられており、「1.感情の知覚(自他の感情の把握)」、「2.感情の利用(例えば、ポジティブな感情を思考に役立てる)」、「3.感情の理解(複雑な感情の理解や推測)」、「4.感情の管理(状況に応じた感情のコントロール力や他者の感情状態に合わせて働きかける力)」の4つから構成されています。

「感情知性」を高めるためには、感情について理解を深めるプログラム(感情について考える・振り返る・ディスカッションするなど)が有効だと考えらえています。

「向社会的行動」は、相手の気持ちを理解し、その上で、親切な行動を実行することです。

仮に、相手の気持ちの理解(「共感」)に留まり、自分も同じような苦しい・悲しいなどの気持ちに陥った状態では、向社会的行動を取ることが難しくなります。

つまり、「向社会的行動」には、「共感」と「感情のコントロール」の両方が必要になると考えられています。

さらに、「向社会的行動」をはじめとした「非認知能力」の育ちにおいて、安定した「愛着(アタッチメント)形成」が大きく影響していると考えらえています。

そのため、「向社会的行動」を育てる上で、安定した愛着形成がとても重要であり、その他、他者に感謝する思いを持つことや、実行機能(感情のコントロール)を鍛えることも大切だと考えられています。

以上の「他人とつきあう力」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【〝愛着″と〝非認知能力″との関連性について】療育経験を通して考える」

 

認知能力と非認知能力の関係

「非認知能力」と「認知能力」の関係において、両者は相互に補い合い、高め合う関係にあると考えられています。

以上を踏まえて、「非認知能力」への教育が持つ重要性について、ここでは「ペリー就学前プロジェクト」を取り上げて見ていきます。

「ペリー就学前プロジェクト」では、ヘックマン博士によって行われた研究で、就学前の子どもを対象として、「非認知能力」を鍛える教育を実施し、その効果を縦断的に調査した研究になります。

研究結果から、「非認知能力」の教育を受けたグループにおいて、基礎学力が身に付いていたこと、学校を卒業できている人が多かったこと、収入が多かったなどポジティブな変化が多く見られています。

この結果は、「認知能力」が高まったことで生じた成果だとも解釈できます。しかし、ポジティブな変化は、「非認知能力」の成果だと言及されています。

さらに、この成果を裏付ける興味深い研究成果が以下の内容です。

「非認知能力」の教育は、実施初期には「認知能力」の高まりもまた見られますが、後に、この差(「非認知能力の教育を受けたグループ」と「非認知能力の教育を受けなかったグループ」とでの「認知能力」の差)は、8歳時点でなくなっていました。

つまり、繰り返しになりますが、結論として、先に見たポジティブな変化への影響は、「非認知能力」が強く関与しているといったことが考えられています。

このように、「非認知能力」への教育は、「認知能力」といった基礎学力の向上にも繋がっているなど、将来の幸福や成功などに貢献する力を育てることに繋がっていると言えます。


ここでは、「非認知能力」を中心に取り上げていますが、認知能力に見られる基礎学力もまた重要だと言えます。

例えば、読み・書き・計算など、基本的な学習能力は学校への適応や、外界の様々な情報を理解する基礎になっています。

そのため、認知能力は、軽視されるものではなく、「認知能力」も重要だと言えます。

以上の「認知能力と非認知能力の関係」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力と認知能力の関係について】どちらの育ちが先なのか?」

関連記事:「【〝認知能力″と〝非認知能力″との関係】〝非認知能力″を鍛えることの重要性について」

 

 

非認知能力はなぜ注目されているのか

この章では、非認知能力が注目されている理由として、「幸福との関係」、「支援の可能性」から見ていきます。

 

幸福との関係

私たちの人生の幸福度には、人間関係や仕事、経済面や健康面などが影響しています。そして、これらの幸福度に、「非認知能力」が関連している可能性があると考えられています。

例えば、粘り強さや自己効力感の高さは、仕事の成功やそこから得られる収入に大きく貢献する可能性があると言えます。また、自尊心の高さや親切心は、良好な人間関係を築いていくために必要な力です。

健康的な生活を送る上でも、良好な人間関係の構築や、計画的に運動や食事の管理を実施するなど、実行機能をはじめ、粘り強く行動し続ける忍耐もまた大切だと言えます。

このように、幸福の内容は個人で多様でありながらも、一般的な幸福度に影響する要因と非認知能力との間には、関連性があることが最近の研究から分かってきています。

 

支援の可能性

認知能力は、生涯を通じてあまり変化しないことが知られています。一方で、「非認知能力」は、教育や支援によって変えることができる可能性があると考えられています。

非認知能力の育て方については、後の章で解説していきますが、ここで大切なことは、非認知能力は、知能とは異なり、後天的に伸ばしていける可能性があるということです。

社会的に成功をおさめた人たちを例に見ても、知能は平均的であっても、創造性を豊かに発揮して、社会にインパクトを残した人たちは多くいるのではないでしょうか。

非認知能力は、多様な能力を包含しています。そのため、支援方法も非常に多岐にわたっていると考えます。

以上の「非認知能力はなぜ注目されているのか」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力はなぜ注目されているのか?】療育経験を通して考える」

 

 

非認知能力のアセスメントのポイント

「非認知能力」は、認知能力とは異なり、数値化できるものではないため、評価が難しいと考えられています。

ここでは、非認知能力をチェックする7つの視点について紹介していきます(以下、図を記載)。

 

「①興味、関心、好奇心があるか?」→好奇心・探求心・興味・関心が、どのような領域に対して、どの程度あるのかを把握することが大切です。

様々な事柄にすぐに興味が湧く子どももいれば、特定のジャンルにおいて深い探求心を持つ子どもいるなど、多様だと感じます。

「②楽しむことができるかどうか?」→活動に対して、どの程度楽しむことができているのかを、把握することが大切です。

楽しむ様子は、話の内容からも伺えますが、表情や声のトーンなど非言語情報も重要だと感じます。

「③意欲があるか、努力ができるか?」→特定の課題や様々な活動に対して、どの程度意欲的に取り組むことができるか、そして、継続して取り組めるのかを把握することが大切です。

例えば、新奇な活動に対して意欲的に取り組む姿勢はあるのか、また、特定の活動に関して、めげずに最後まで取り組む姿勢があるのかなど、内容を掘り下げると子どもによっても多様な状態像が見えてくると思います。

「④達成感や自信が見られるか?」→何かができた時の達成感の受け止め方、自分ならできるという自信があるかを把握することが大切です。

つまり、課題に対する達成度の蓄積が、自らの自信に繋がる経験となっていくかを抑えていくことが重要だと思います。

「⑤ちょっとした我慢、気持ちの調整は?」→感情のコントロールといった自己制御の力がどの程度あるのかを把握することが大切です。

不安なことや嫌な出来事に対して、どのような反応を見せるのか、どのような形で対処するのかを、行動から分析していくことが重要だと感じます。

「⑥相手への思いやりや共感、気遣いは?」→相手に対して優しい気持ち・態度をもって接することが、どのような文脈でどの程度できるのかを、把握することが大切です。

いわゆる向社会的行動・利他的行動とも呼ばれる行動が、人・場面によってどのような行動として現れるのかを、抑えていくことが重要だと感じます。

「⑦やり遂げる力や頑張り抜く力は?」→実行機能の力、グリット(やり抜く力)を把握することが大切です。

短期的な頑張り・継続性はどの程度あるのか、さらには、長期的な頑張り・継続性はどの程度あるのかを、抑えていくことが重要だと感じます。

以上、①~⑦に関して見てきましたが、大切なポイントは、〝チェック項目の多い・少ない”ではなく、どのような個所に強さ・弱さがあり、それぞれ、どのような方法で伸ばしていけるのか、あるいは、どのような配慮が必要なのかといった、支援や配慮に繋げる見立てに活用していけるかどうかだと考えます。

また、非認知能力は、多様な領域を包含した概念です。そのため、子どもたち一人ひとりにおいて、多様な状態像といった違いが見られることは自然なことだと思います。

そのため、他者との比較ではなく、個人においける個性や強みなどを発見する手立てとして、アセスメントを活用することが必要だと考えます。

先に述べたように、非認知能力は伸ばしていくことができます。つまり、支援の可能性があります。この点を抑えて、長期の視座を持って、支援の方向性を検討することが必要だと言えます。

以上の「非認知能力のアセスメントのポイント」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力の育て方の理解で必要な視点】心の育ちをチェックする7つのポイント」

 

非認知能力の支援・育て方のポイント

この章では、非認知能力の支援・育て方のポイントについて、「非認知能力の支援の6つのポイント」「心の安定の重要性」「遊びが持つ重要性」について見ていきます。

 

非認知能力の支援の6つのポイント

非認知能力の支援の6つのポイントについて、以下、図を踏まえて見ていきます。

 

「① 自発的、主体的な遊びでいっぱい遊ぶ」とは、遊びの本質(‟自発性・主体性”)を踏まえた関わり・環境調整にあります。自ら能動的に遊ぶ活動が大切です。

「② 子どものやりたいことを優先で考える」とは、大人目線での活動を優先するのではなく、あくまでも、本人の意思・自発性(‟やりたい!”)を尊重した上での活動を優先することが大切です。

「③ 一緒に楽しみ盛り上がる(楽しさ共有)」とは、他者と活動や遊びを楽しみ、その楽しさを共有することで、快の感情を豊富に共有する経験の積み上げが大切です。

「④ 結果ではなく、プロセスや頑張りを褒める」とは、何かを成し遂げた、目標を遂行できた結果を褒める以上に、がんばりの過程を褒めることが大切です。

「⑤ 必要な時の必要な手助け(過剰にならない)」とは、過剰なサポートは極力控えて、子どもにあったサポート(少しの手伝いでできる活動内容の工夫など)を考えていくことが大切です。

「⑥ 遊びに関心をもち、温かく見守る」とは、子どもの興味関心に寄り添い、子ども目線で興味関心の対象の面白さ・楽しさなどを考える姿勢が大切です。

これら①~⑥の非認知能力の支援のポイントは、内容だけ見ると一見簡単そうにも見えますが、療育・教育の現場に携わっている人にとっては、思いの他難しいこと、そして、時には、熟練が要求される高度な支援内容だと感じるのではないでしょうか。

その背景には、子どもそれぞれには個性(好き・嫌い・得意・不得意)に多様さがあり、また、周囲の環境によっても、これらの支援がどの程度許容してよいものであるか、実施可能なものなのかは、支援チームによって違いが生じるからだと考えます。

著者は、子どもと良い関係性が築けている場合、そして、子どもへの支援が良い方向に向かっている場合には、こららの①~⑥の取り組みがうまく進んでていることが多いと感じます。

以上の「非認知能力の支援の6つのポイント」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力の支援・育て方について】療育経験を通して考える」

 

心の安定の重要性

「非認知能力」がうまく発揮される上で、根底的に大切なものとして「心の安定」があります。

逆に、心が不安定な状態では、学びの促進、気持ちの調整といった「非認知能力」が育つことは難しいと言えます。

そのため、支援のポイントとして、「心の安定」を保つ上で、安定した愛着関係を築いていく視点が重要です。

著者の療育経験を踏まえて見ても、子どもの心が安定することで、心のエネルギーが充足され、意欲のエネルギーが湧いていくといった状態になることがよくあります。

そして、意欲のエネルギーが高まることで、‟何かを学びたい・挑戦したい・他者に優しくしたい・イライラした気持ちを抑えよう”といった気持ちが生じるのだと思います。

まさに、「心の安定」は、非認知能力の育ちの基盤を担っていると感じます。

以上の「心の安定性の重要性」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力と認知能力を支える心の安定の重要性】療育経験を通して考える」

 

遊びが持つ重要性

非認知能力の支援の6つのポイントでも記載しましたが、「非認知能力」の育ちの研究結果から、その多くが遊びの重要性を指摘しています。

さらに、遊びが持つ‟主体性”が、子どもの行動を促進させ、行動の過程に中で、「非認知能力」の力を獲得する様々な要素を獲得していきます。

著者の療育経験を踏まえて見ても、自ら能動的に取り組み続けた遊び(活動)が、結果として、様々な力(主体性・創造性・自制心・自信など)の獲得に繋がっていると感じることがあります。

一方で、こうした力は、短い期間での遊び(活動)からは成長が見えてこないこともあるため、長い視座を持って支援していくこと、そして、長期の支援の過程を振り返ることが大切だと考えます。

以上の「遊びが持つ重要性」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【非認知能力の育て方について】遊びの持つ重要性を通して考える」

 

 

非認知能力の支援の実際

この章では、著者の療育実践を踏まえた非認知能力への支援について、‟主体性”をキーワードにいくつかの事例を紹介します。

 

主体的な取り組みが成功体験に繋がっていった事例

当時、小学校低学年のAさんは、全般的な発達がゆっくりな状態の子どもです。

Aさんは、様々な事柄に興味関心を持つ様子があり、何度で挑戦しようとする子どもです。よく口癖に‟ぼくできるよ!”と自信に満ちた言動が見られていました。

著者は、Aさんがブロック遊び・プラレール遊び・段ボール工作など、自らが思い描いた完成像に向けて、挑戦する‟主体性”を尊重し、頑張りの過程を褒めたり、できない所を少し手伝うなどの支援を継続していきました。

主体的な取り組みを続けていく中で、Aさんの遊びは大人でも驚くような創造性豊かな内容へと展開していきました。

例えば、ブロック遊びでは、ブロックで入り口から出口までの道を作り、扇風機で風を送り、ボールが風でうまく転がるように自作でブロックの通路を設計するようになりました。

また、段ボール工作では、自動販売機やクレーンゲームなどを作成するようになりました。

驚きなのは、Aさん自身が試行錯誤を重ねながら、自らのアイディアを具現化できるようになっていった創造性の高まりです。

そして、こうした成功体験が生まれる過程において、Aさんは、‟○○を作ってみたい!ぼくならできる”など、自らを肯定する発言もさらに増していきました。

この事例は、主体的な取り組みを継続する中で、成功体験が着実に積み重なっていき、その結果、創造性を存分に発揮し、さらには、自己肯定感・自己効力感を高めていくなど、「非認知能力」の成長が見られた良いケースだと言えます。

以上の「主体的な取り組みが成功体験に繋がっていった事例」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「【療育(発達支援)の成果】主体性と自己肯定感をキーワードに考える」

 

主体性の尊重→信頼関係の構築→意欲のエネルギーの増加が見られた事例

「主体性」を育む原点は、人との信頼関係にあるとして、自他を肯定し信頼することが主体を育み、その後、自分で世界を広げていく原動力になると考えられています。

著者は、この視点に立つことで、子どもの主体性が徐々に回復したBさんの事例を思い出します。

当時、小学校低学年のBさんは、これまで周囲の大人から過度な叱責を受けることが多い子どもでした。

そのため、著者が関わり始めた頃は、表情は暗く、どこか緊張した様子も見られ、様々な事柄に対して、‟大人が決めて!”と言うなど、意思決定を他者に委ねる様子が多く見られていました。

著者を含めた支援スタッフは、Bさんのことを理解すること、どのような関わりが安心するのかを考えながら支援を進めていきました。

Bさんは、少しずつではありますが、支援スタッフに信頼を寄せる様子が出てきました。

この頃から、Bさんは‟○○がやりたい!”といった自分の思いを発信する‟主体性”が高まっていきました。

Bさんの主体性を尊重していく中で、さらに、Bさんとの信頼関係が高まっていくことで、Bさんは、やりたい遊び・活動への意欲・エネルギーが湧いていきました。

小学校高学年頃になると、やりたい遊び・活動を事前に支援スタッフと決め、主体的・意欲的に取り組む姿が見られるようになるなど、「非認知能力」の育ちが長期の支援の中で見られるようになった良いケースだと言えます。

この事例を通して、改めて、「非認知能力」の育ちには、「心の安定」といった安心感・愛着関係が非常に重要な意味を持つのだと考えさせられました。

そして、その前提として、子どもを一人の主体性を持った存在として、温かく受け止める姿勢が大切だと言えます。

以上の「主体性の尊重→信頼関係の構築→意欲のエネルギーの増加が見られた事例」の内容は、以下の記事を参照しています。

関連記事:「療育で大切なこと【子どもの「主体性」を育てることについて考える】」

 

 

まとめ

「非認知能力」とは、認知能力以外の力、例えば、創造性、好奇心、興味・関心、意欲、自主性、主体性、自制心、自信などがあります。

さらに、「非認知能力」の構成要素を整理すると、1:「目標を達成する力」、2:「自分に向き合う力」、3:「他人とつきあう力」)に集約化されます。

「非認知能力」と「認知能力」の関係において、両者は相互に補い合い、高め合う関係にありますが、「非認知能力」の教育は、「認知能力」といった基礎学力の向上にも貢献し、さらには、将来の幸福や成功などポジティブな変化に寄与していると考えられています。

そして、「非認知能力」は、以上のポジティブな変化に加えて、支援によって伸ばせる可能性があることからも、最近、注目されるようになってきています。

「非認知能力」は、数値化できるものではないため、評価が難しいですが、非認知能力をチェックするポイントとして、興味関心の有無、意欲・努力の有無、感情のコントロールの有無、思いやりの有無など、いくつかのポイントを抑えていくことが大切です。

「非認知能力」をチェック(アセスメント)する上で、支援に繋げる見立てとして活用する視点が重要です。

「非認知能力」の支援方法は多岐に渡りますが、中でも、主体性の尊重、興味関心の把握、心を安定させる(良い愛着関係の形成)、遊びによって育まれる重要性の理解などが大切だと考えます。

 

 

参考書籍紹介

今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。

非認知能力を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。

非認知能力の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】非認知能力に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

実行機能は非認知能力の重要な力の一つです。実行機能の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】実行機能に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

遊びは非認知能力の発達において大切です。遊びに関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】療育(発達支援)に役立つ遊びに関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

 

 

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