「実行機能」とは、目標を達成するために、自分の考えや行動を調整するために必要な認知機能の総称です。計画を立てる、情報を一時的に保持する、注意を切り替える、衝動を抑えるなど、日常生活や学習の様々な場面で働いています。
著者の療育現場では、発達に躓きを抱える子どもの多くに実行機能の問題があると感じています。そのため、実行機能の理解や支援方法を検討することは大切なことだと考えます。
本記事では、実行機能の種類や発達、ワーキングメモリとの関係、発達障害との関連について解説します。さらに、実行機能の弱さによって生じる困りごとや、療育・発達支援で活かせる支援方法についても紹介します。
※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています。
実行機能の理解と支援に関する全体マップ
本記事では、実行機能の理解と支援に関して、以下の7つの章に分けて解説していきます。
1.実行機能とは何か
2.実行機能の種類と発達
3.実行機能とワーキングメモリの関係
4.実行機能への支援方法
5.発達障害と実行機能
6.まとめ
7.参考書籍紹介
実行機能とは何か
この章では、「実行機能の定義と3つの構成要素」「実行機能の6つの構成要素」について見ていきます。
実行機能の定義と3つの構成要素
「実行機能(executive function)」とは、「計画を立て、その計画通りに集中することの維持、別の刺激に飛びつくことを抑制するプロセスに関わっている高次の脳機能」のことを指します。
実行機能は、「やりき遂げる力」「遂行能力」などとも言われています。
実行機能の特徴として、以下の3つの構成要素があります。
それは、「抑制(inhibition)」「シフト(shift)」「更新(updating)」です。それぞれの説明は次になります。
「抑制(inhibition)」で、これは、目標達成に当面関わらない無関連なことを抑制する働きのことです。
「シフト(shift)」で、これは、状況や課題に応じて注意をシフトする働きのことです。
「更新(updating)」で、これは、入力されつつある情報を符号化し、モニタリングして、古い情報を新しい情報に置き換える働きのことです。
例えば、読むべき課題の本の内容を理解(目標となること)しようとした場合、これまでやっていた活動を一時中断して(「シフト」して)、本を読んでいる最中には他の事柄に気を取られずに(「抑制」して)、本の内容・情報を理解して(「更新」して)いく必要があります。
私たちは、様々な目標に対して、実行機能の力を働かせて活動をしていると言えます。その際に、抑制・シフト・更新といった機能をうまく働かせる必要があります。
以上の「実行機能の定義と3つの構成要素」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「自閉症の実行機能について:実行機能の3つの要素と療育での困難事例を通して考える」
実行機能の6つの構成要素
実行機能は人間が情報を処理し更新していく高次の機能の働きですが、先で紹介した3つの構成要素の視点以外で、6つの構成要素を紹介しているものもあります(以下に記載します)。
「プランニング」:目標までの道筋、段取り(優先順位・時間管理・組織化計画)を決める力
「ワーキングメモリ」:情報を保持し処理する力や記憶しておく力
「セルフモニタリング」:自分がいる(おこなっている)状況を判断できる力
「自己抑制」:衝動性や感情を抑えて我慢できる力
「注意持続」:どんな状況でも課題に対する注意を持続できる力
「シフティング」:柔軟(柔軟性)に課題を切り替える(課題開始)力
上記の6つの構成要素を見ても分かるように、実行機能は私たちの生活の様々な状況で求められる力だと言えます。そして、6つの構成要素から見ることで、実行機能の働きがよりクリアに見えてきます。
実行機能の働きは、私たちが現代社会を生きる上で非常に重要な力ですが、ここ最近、実行機能の力が低下してきているとの知見もあります。
その背景には、テレビやデジタルメディアの影響があると考えられています。問題となるのは、デジタル機器の使用方法にあります。
例えば、自ら主体的に何かを調べようとして活用している場合と、何となく使用し続けている、つまり、受動的に使用している場合とでは、後者の使用法が実行機能の低下に繋がると言われています。
著者は、発達障害児と療育現場で関わる機会が多くありますが、発達障害児には、様々な実行機能の問題があるということ、また、特性上、ネットやスマホなどに依存しやすい傾向があると感じています。
そのため、発達障害児の実行機能の特徴と支援方法などが、今後ますます課題になっていくと感じています。
以上の「実行機能の6つの構成要素」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「実行機能とは?6つの要素と療育での活用法」
関連記事:「【実行機能の低下の要因とは?】テレビやデジタルメディアの影響を通して考える」
実行機能の種類と発達
この章では、「感情と思考の実行機能と発達」「心の理論との関係」について見ていきます。
感情と思考の実行機能と発達
実行機能には、思考と感情の2つの側面があると考えられています。そして、実行機能を思考面と感情面の2つに分けて考えた方が理解しやすいとも言われています。
思考の実行機能
「思考の実行機能」とは、目標にむけて遂行中な(遂行しようとしている)ことに対して、ついつい目がそれてしまう習慣を制御する機能だと言えます。
例えば、苦手な勉強に対して、苦手となる課題を克服するために、本来的には回避したい思いを制御して、一日○○分取り組む、○○ページ実施するといった継続性を目標に基づき実行するなどがあります。
やりたくない事を先延ばししないためのコントロール力だとも言えます。
「思考の実行機能の発達」は、幼児期に急速に発達しはじめ、その後、児童期~青年期にかけて緩やかに発達していくと言われています。
また、思考の実行機能は、国語や算数といった学力や他者の心情の理解などにポジティブに影響すると考えられています。
感情の実行機能
「感情の実行機能」とは、非常に本能的な衝動を制御する機能だと言えます。
例えば、先の勉強の例に紐づけると、ゲームやおやつなど目の前のやりたい!ことに衝動的に飛びきたくなる欲求を抑える力だと言えます。
また、感情の実行機能は、問題行動と強い関連性があると考えられており、自身の感情のコントロールがうまくきかないことで、他者とトラブルになることがあります。
「感情の実行機能の発達」は、幼児期から児童期にかけて順調に発達していく中で、青年期には一時的に低下すると考えられています。
その理由として、青年期には、気持ちの抑制が効かない、つまり、気持ちのブレーキ機能はうまく作動していても、アクセル機能が強くなりすぎるため、抑制が困難になると言われています。
著者の療育実践を通して見ても、思考と感情の実行機能に分けて子どもの状態像を見ることで、子どもの行動分析がよりスムーズになると感じています。
例えば、実行機能がうまく育っていない子どもにおいて、非常に衝動的な行動を取る傾向があります。つまり、感情の実行機能がまだうまく育っていないことが考えられます。
一方で、計画的な行動が難しい場合であれば、思考の実行機能がうまく制御できないことが考えられます。
両者の状態像の違いによっても、取り組むべき支援方法に違いが生じると感じています。
以上の「感情と思考の実行機能と発達」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【2つの実行機能‐思考と感情‐】発達障害児支援の現場を通して考える」
関連記事:「【実行機能の発達】思考と感情の発達について考える」
心の理論との関係
実行機能は心の理論の発達とも関係があると考えられています。
その理由として、発達時期が同じであること、そして、同じ脳の領域(前頭葉)を使用していることが挙げられています。
また、心の理論の力(他者の意図や思いなど推論する力)を調べる課題で有名なものに「誤信念課題」のテストがあります。
「誤信念課課題」の問題を解く上で、認知機能が必要になります。認知機能との関連の中で注目されているのが「実行機能」です。
つまり、誤信念課題を解くために必要な認知機能として、実行機能の力、具体的には先で紹介した3つの構成要素(抑制・シフト・更新)の力が求められると考えられています。
このように、実行機能は心の理論の発達と強い関連性があることが示唆されています。
著者が見ている発達障害児(自閉症児など)には、心の理論の理解に苦手さを持つ子どもたちが多くいます。一方で、年齢が上がり、認知機能が高まる中で、他者の様々な心情や意図を推論する様子が見られることも事実としてあります。
自閉症児においては、他者の心を読み解く方略として、言語に頼った推論をしていることが多く、その時に、実行機能の力を活用していることが、経験則的に見て取れることがあります。
以上の「感情と思考の実行機能と発達」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【心の理論と実行機能の共通点】発達時期と脳領域から読み解く関係性」
関連記事:「【誤信念課題の正答は“心の理論”だけではない】実行機能との関係を解説」
実行機能とワーキングメモリの関係
この章では、「実行機能とワーキングメモリの関係の3つの見方」「実行機能の3つの構成要素とワーキングメモリの関係」について見ていきます。
実行機能とワーキングメモリの関係の3つの見方
「ワーキングメモリ(working memory)」とは、「様々な課題遂行中に一時的に必要となる記憶、特に、そうした記憶の働き(機能)や仕組み(メカニズム)、そして、それらを支えている構造(システム)」を指します。
簡単に言えば、「脳のメモ帳」であり、私たちが様々な情報を一時的に記憶し活用していく記憶の働きです。
そして、ワーキングメモリは実行機能とも関連が強いと考えられています。
両者の関係は、研究者によって考えが異なり、大きく以下の1~3の3つの見方があります。
1:実行機能をワーキングメモリの一部とする見方
2:ワーキングメモリを実行機能の一部とする見方
3:実行機能とワーキングメモリの両者は相補的な関係であるとする見方
3つの見方は、専門家・研究者において非常に重要な意味を持ちます。一方で、療育現場で、実行機能を踏まえた理解と支援を行っている支援者にとっても、ワーキングメモリとの関係を深める(両者には強い繋がりある)上で役立つ視点だと感じます。
以上の「実行機能とワーキングメモリの関係の3つの見方」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「実行機能とワーキングメモリの関係:両者はどのような関係にあるのか」
実行機能の3つの構成要素とワーキングメモリの関係
先で紹介したように、実行機能の3つの構成要素には「更新」「抑制」「シフト」があります。
ワーキングメモリは、この3つの構成要素のうち「更新」に位置付けられています。
「更新」とは、新しい情報に注意を向けて、その情報を記憶し処理することです。つまり、新しい情報をアップデートする上で重要な機能だと言えます。
他の「抑制」「シフト」機能の働きは、様々な活動における‟参加”に関連すると考えられています。例えば、他に気になる情報を「抑制」し、今すべき内容に注意を「シフト」することが、活動への‟参加”には必要不可欠です。
「抑制」と「シフト」機能がうまく働くことで、「更新」機能が働くということは、発達障害児支援においても大切な視点だと言えます。
例えば、ASD児は、今行っている活動から次の活動への切り替えがうまくいかない「シフト」の困難さがあり、ADHD児は、自分が興味のある対象に注意を向けてしまうため、本来やるべき活動に注意を向けることがうまくいかないといった「抑制」の困難さが見られます。
つまり、必要な情報を「更新」していく上で、「シフト」「抑制」の困難さへの配慮の視点が、活動への‟参加”を促し、さらには、情報の「更新」に繋がっていきます。
そのため、著者は、ASD児には、事前に活動のスケジュールなど見通しを伝える工夫、ADHD児には、他の事に気が取られないような集中できる環境調整などを行うように心がけています。
以上の「実行機能の3つの構成要素とワーキングメモリの関係」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「ワーキングメモリは実行機能の3つの構成要素の中にどう位置づけられるのか?」
関連記事:「【実行機能とワーキングメモリから見た支援方法について】学習困難児を例に考える」
実行機能への支援方法
この章では、実行機能への支援方法として、「個別への支援」「集団への支援」「関係性と環境からのアプローチ」「足場づくりの視点」について見ていきます。
個別への支援
実行機能の個別への支援方法として、反復練習、振り返り、運動、音楽、マインドフルネスなどが有効だと考えられています。
反復練習は文字通り特定の課題に対して繰り返し練習すること、振り返りはミスした部分に対してミスの要因を考えることです。
その他、体を使った活動(運動)を取り入れたり、テニスやサッカーなどのスポーツ、音楽やマインドフルネスなどもあります。
この領域はまだまだ途上だと考えられています。著者が見ている子どもたちの中には、運動を長年継続してやっている子どももいます。こうした子どもたちの様子を見ていると、以前は計画的な行動が苦手だった子どもが、徐々に得意になってきたと感じるケースもあります。
もちろん、運動以外の他の要因もありますが、運動もまた実行機能を育てる上で、有効な方法だと感じます。
以上の「個別への支援」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【実行機能への支援①】実行機能を高める個別の支援方法とは?反復練習・運動・音楽・マインドフルネスなど」
集団への支援
実行機能の集団への支援方法として、家庭教育を補償する幼児教育・保育、心の道具、モンテッソーリ教育が有効だと考えられています。
幼児教育・保育は、幼稚園・保育園に通うこと=実行機能の発達の向上、といった図式ではなく、保育者との安定したアタッチメントの形成など、関わる保育者の質が実行機能の向上に繋がると言えます。
心の道具とは、物理的な道具(絵本など)や心理的な道具(独り言やごっこ遊びなど)を活用しながら、実行機能や読み書きの能力を高めるプログラムを指します。
モンテッソーリ教育とは、自分がやりたい活動に自主的に関わることを重視した教育法になります。詳しくはこちらの記事で紹介しています:関連記事:「【モンテッソーリ教育とは?】自己教育力・育つ力・関わり方・療育への活かし方を総合解説」。
これらの集団へのアプローチは、効果の検証などまだ発展途上ではありますが、特定のプログラム(心の道具・モンテッソーリ教育)以上に、保育者や先生の関わり方の質などが、実行機能の発達に強く影響していることが分かってきています。
著者は、実行機能と言えば、計画的に物事を考え、実行するといった認知的な働きをイメージしていたため、他者との関係性が実機機能の発達にポジティブな影響を及ぼすことは意外でした。
そのため、療育実践に携わる身として、非常に重要な知見を得たと感じています。
以上の「集団への支援」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【実行機能への支援②】集団・環境を通して実行機能を育む方法とは?幼児教育・保育やモンテッソーリ教育から考える」
関係性と環境からのアプローチ
先ほど、集団への支援方法として、保育者との安定したアタッチメントの形成など、関わる保育者の質が実行機能の向上に繋がると記載しました。
このように、実行機能への支援で最も大切なことは、特定のプログラムよりも、関わる大人との「関係性」がまずあります。
また、先生が子どもにかける指示のうまさやポジティブな声色など、クラスの温かく明るい雰囲気といった「環境」もまた大切だと考えられています。
より良い「関係性」を養育者・保育者と築く上で、子どもに関わる関わり手の「敏感性」が重要になります。
「敏感性」とは、子どもの発信に対して、直ぐに気づき適切に応答するといった行為を指し、子どもが自分の事を受け止め・理解してもらえたという信頼感の獲得に繋がる重要なキーワードです。
実行機能の力の向上と「関係性」と「環境」からのアプローチは、一見すると関連性は低いようにも思えますが、著者の療育実践を踏まえて見ても、子どもが安心して楽しく過ごせる環境に長く身を置くことで、長期的に見て、実行機能の力の向上に強く影響していると感じるケースは数多くあると感じます。
このように、実行機能の力の向上の基盤には、他者との信頼関係の構築と、安心できる環境があるということを抑えて療育に臨むことが大切だと言えます。
以上の「関係性と環境からのアプローチ」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【実行機能への支援で大切なこと】プログラムよりも大切な「関係性」と「環境」」
関連記事:「【実行機能への支援】子どもの「発信」を受け止め、他者への信頼感を育むことの大切さ」
足場づくりの視点
「足場づくり」とは、学び手が一人では達成できないことを他者が支援することを指します。
そして、「足場づくり」は、実行機能や向社会的行動を育むうえで大事だと考えられています。
著者は、療育実践において、足場づくりの視点をとても大切にしています。その理由として、適切な支援を子どもに届けるためには、子どもが一人で目標や課題をどの程度遂行できるのか、そして、他者の協力がどの部分から必要となるかをアセスメントする必要があるため、子どもの理解と支援の質に繋がっていくからだと考えます。
適切な足場を子どもに提示し、関わっていくことで、子どもが特定の課題・目標に対して、めげずにやり抜く力がついていく様子がこれまで多く見られています。
また、取り組みの過程に対して、支援者が子どもの頑張りを認め・応援するといった肯定的なフィードバックの役割もまたとても大切だと感じています。
以上の「足場づくりの視点」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【実行機能への支援で大切な足場づくりについて】療育経験を通して考える」
発達障害と実行機能
この章では、発達障害と実行機能の特徴・支援方法について、「自閉症と実行機能の関係」「ADHDと実行機能の関係」の2つの視点から見ていきます。
自閉症と実行機能の関係
自閉症の実行機能の弱さの特徴として、「プランの実行」と「注意の切り替え」の2つがあると考えられています。
「プランの実行」とは、「段取りを立てて実行する力」のことを言います。例えば、自らの活動を組み立てるなど見通しを持って行動するものがあります。
「注意の切り替え」とは、「切り替える力」のことを言います。例えば、今取り組んでいる活動から他の活動へと注意を移行するなどがあります。
自閉症の実行機能の弱さに対する支援方法として、「意思決定の機会を作る」「プランニング・優先順位への対応」「スケジュール・タイマーの活用」「メタ認知への支援」などがあります。
少し具体的に言えば、幼少期から自ら物事を決めてきたという意思決定の機会を多く持つ経験、優先順位をつけたり、計画を立ててそれを実行に移すことができた経験、スケジュールやタイマーなど視覚的なアイテムを活用して注意を切り替えることができた経験、自分の気持ちや対人関係での出来事を客観視できた経験が大切だと言えます。
先ほど、実行機能に関連するワーキングメモリの役割として、新奇な情報を「更新」する・アップデート機能があると述べましたが、新しい情報を取り込むうで、自閉症児が苦手とする「抑制」「シフト」の苦手さにアプローチする視点もまた重要です。
実際に、著者は、自閉症児が持つ実行機能の弱さ(「抑制」「シフト」の苦手さ)に対して、事前に予定を視覚化して確認することや、変更点などはできるだけ早めに伝えることを心掛けています。
もちろん、長い目を見て取り組む必要がありますが、日々の少しの積み重ねが後の成長に大きく繋がることは、これまでの療育経験上多く見られています。
以上の「自閉症と実行機能の関係」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【実行機能障害仮説とは何か?】自閉症の特徴について考える」
関連記事:「【自閉症の実行機能への支援について】療育経験を通して考える」
関連記事:「自閉症の実行機能について:実行機能の3つの要素と療育での困難事例を通して考える」
ADHDと実行機能の関係
ADHDの特徴を説明しているものに「三重経路モデル(トリプルパスウェイモデル)」があります。
主な構成内容は、「抑制制御の障害(実行機能の障害)」、「報酬遅延の障害」、「時間処理の障害」の3つから構成されています。以下、それぞれの用語について説明します。
「抑制制御の障害(実行機能の障害)」とは、集中すべきことがあるのに、他に注意がそれてしまうなど計画性を持って行動する苦手さがあります。→まさに、実行機能の問題!
「報酬遅延の障害」とは、すぐに手に入る報酬を好む、待つことの苦手さなどがあります。
「時間処理の障害」とは、時間の経過を感覚的につかむことの苦手さ、例えば、実際の時間と本人の感覚による時間が大きくズレるなどがあります。
そして、「抑制制御の障害(実行機能の障害)」、つまり、実行機能の障害は、他の2つの構成要素(「報酬遅延の障害」、「時間処理の障害」)にも影響する、さらに言えば、3つの障害は互いに影響し合う関係性にあります。
ADHDの実行機能の弱さに対する支援方法として、「見通しの視覚化」「短期的な報酬の提示」「待ち時間を視覚化して伝える・あるいは時短にする」「タイマーの活用」などがあります。
著者が心掛けている対応として、事前に予定を確認する事、集中できる環境の設定、できた活動に対しては即座に褒めること(声掛けも報酬になる!)、アラームなどタイマーを活用する取り組みを組み合わせる方法をとっています。
特に、活動の切り替え時、活動の終わりの際は、他に注意が向かわず、そして、成功体験に繋がるように、丁寧に対応するようにしています。
こちらも自閉症児と同様に、長期の関わりが視点が大切だと考えます。ADHD児は、特性から生じる行動によって、周囲から叱責を受けやすいことがあります。そのため、自尊心・自己肯定感を維持・向上させることがとても大切です。
また、症状が酷い場合には、医師に相談しながら「薬物療法」の検討も必要だと考えます。
以上の「ADHDと実行機能の関係」の内容はこちらの記事を参照しています。
関連記事:「【なぜADHDの症状が起こるのか?】ADHDの原因について三重経路モデルを通して考える」
関連記事:「ADHDの実行機能について:実行機能の3つの要素と療育での実践を通して考える」
まとめ
「実行機能(executive function)」とは、「計画を立て、その計画通りに集中することの維持、別の刺激に飛びつくことを抑制するプロセスに関わっている高次の脳機能」のことを指します。
実行機能の主な構成要素として、「抑制(inhibition)」「シフト(shift)」「更新(updating)」の3つを取り上げたものが有名です。
実行機能には、「思考の実行機能」と「感情の実行機能」といった2つの側面があり、幼児期から発達していきます。
実行機能とワーキングメモリには強い関係があり、両者の関係は研究者によって、異なる立場・見方があります。また、ワーキングメモリは実行機能の「更新」に該当しています。
実行機能への支援方法には、「個別への支援」「集団への支援」「関係性と環境からのアプローチ」「足場づくりの視点」など、様々なアプローチがありますが、中でも、特定のプログラム以上に、保育者や先生の関わり方の質などが、実行機能の発達に強く影響していることが分かってきています。
発達障害と実行機能の弱さには関連性があり、例えば、自閉症の場合、「プランの実行」と「注意の切り替え」に苦手さがあります。支援方法としては、「意思決定の機会を作る」「プランニング・優先順位への対応」「スケジュール・タイマーの活用」「メタ認知への支援」などがあります。
ADHDにも、実行機能の弱さが見られます(「三重経路モデル」より説明されています)。支援方法としては、「見通しの視覚化」「短期的な報酬の提示」「待ち時間を視覚化して伝える・あるいは時短にする」「タイマーの活用」などがあります。
参考書籍紹介
今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。
実行機能を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。
実行機能の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】実行機能に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
ワーキングメモリの理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】ワーキングメモリに関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
自閉症の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:「【臨床発達心理士が厳選】自閉症に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
ADHDの理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】ADHDに関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
心の理論の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:「【臨床発達心理士が厳選】心の理論に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
実行機能と関連性の強い「ワーキングメモリ」の総合解説に関する記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【ワーキングメモリとは?】特徴・実行機能や学習との関係・発達障害・支援方法を総合解説」。

コメント