発達障害のある子どもの中には、不安や抑うつ、不登校、自己肯定感の低下など、発達障害そのものの特性ではなく、その後の環境や経験の影響によって生じる「二次障害」がみられることがあります。
二次障害は、早期に気づき、適切な支援につなげることで予防や軽減が期待できます。著者の療育経験を踏まえても、二次障害の理解と対応は優先課題だと感じています。
本記事では、発達障害の二次障害とは何かをはじめ、二次障害が生じる原因、支援に欠かせないアセスメントの視点、そして予防・対応方法について、わかりやすく総合的に解説します。
※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています。
発達障害の二次障害の理解と支援の全体マップ
本記事では、発達障害の二次障害の理解と支援に関して、以下の6つの章に分けて解説していきます。
1.発達障害の二次障害とは何か
2.二次障害の原因
3.二次障害のアセスメント
4.二次障害の予防と対応
5.まとめ
6.参考書籍紹介
発達障害の二次障害について
「一次障害」として生得的に持っている個性(身体障害・構音障害・発達障害など)があり、「二次障害」とは生得的な個性に加え、環境に対する不適応状態が影響して生じる症状(精神疾患、誤学習、不登校、引きこもりなど)のことを指します。
つまり、「発達障害の二次障害」とは、「一次障害」として、ASDやADHDなどの発達障害があり、その上にさらに、二次障害といった二次的な症状が重なった状態ということになります。
そして、二次障害のエネルギーの向かう方向性には大きく「外在化」と「内在化」の2つがあります。つまり、エネルギーが外に向かうものと、内に向かうものがあります。
「外在化」には、反抗挑戦症や素行症など反社会的な行動に繋がっていく障害などがあります。
「内在化」には、不安障害、気分障害、強迫性障害、うつや引きこもりなどがあります。
著者の療育現場では、これまで反抗挑戦症や不安障害、そして、過剰適応の疲れから生じる意欲の低下が見られたケースが少なからずあります。
中でも、ADHDと二次障害の関連性は強いものと思われ、周囲の環境とのミスマッチが続くと「ADHDのマーチ」にある、反抗挑戦症や不安障害が発症するリスクが高まっていくと実感しています。詳しくはこちらで紹介しています:「【ADHDの二次障害について】ADHDのマーチについて著者の経験談も踏まえて考える」「【ADHDの二次障害(不安障害)について】療育経験を通して考える」。
また、ASDの人の中には、過剰に周囲の環境に合わせようとしたり、こだわりの特性が影響して「過剰なノルマ化」といった自ら課した課題を過剰に頑張ることで、後に精神的不調に繋がるリスクもあります。詳しくはこちらで紹介しています:「自閉症の二次障害について:過剰なノルマ化と意欲低下から考える」。
以上の「発達障害の二次障害について」の内容は、以下の記事を参照しています。
関連記事:「発達障害の二次障害について【療育経験を通して考える】」
関連記事:「【二次障害とは何か?】一次障害・外在化・内在化をキーワードに考える」
二次障害の原因
「二次障害の原因」として、二次障害の発症のプロセスがあると考えられています(以下、二次障害出現の悪循環の図を記載)。

以上の図を通して、「発達障害の二次障害」は、本来の特性が環境とのミスマッチを起こし、初めは社会的対処法の問題行動として出現して、その問題行動に対して、周囲から否定的関わりが増えることで、自尊心の低下や否定的社会行動の増加に繋がり、さらに、周囲から否定的関わりがエスカレートし、社会的対処法がさらに悪化していくといったループにより、症状が悪化していくと考えられています。
著者の経験を踏まえて見ても、二次障害は急に発症するというよりも、時間をかけて症状が悪化していくといった印象があります。
発達障害児は環境とのミスマッチの中で、様々な対処法を考慮するもそれが困難となり、その過程において、他者への信頼感や自己への自尊心・自己効力感が消失していき、その結果、問題行動といった誤学習に繋がっていくと考えます。
以上の「二次障害の原因」の内容は、以下の記事を参照しています。
関連記事:「発達障害の二次障害について【二次障害の原因とは何か?】」
二次障害のアセスメント
「二次障害のアセスメント」に関しては、現在のところ決まった手順・方法がないと言われています(2023時点)。
著者の実感としても、アセスメントには、様々なアプローチがありますが、医療・福祉・教育の領域において、まだまだ統一された方法はとられていないのが現状だと感じています。
以上の前提を踏まえて、アセスメントで重要な視点が「フォーマルアセスメント」と「インフォーマルアセスメント」を組み合わせた包括的なアセスメントです。
「フォーマルアセスメント」とは、標準化された検査ツールを使って分析していく方法であり、例えば、田中ビネーやウェクスラー式知能検査、K-ABC、新版K式発達検査などがよく使用されています。
「インフォーマルアセスメント」とは、家庭や学校での様子を行動観察し情報を収集する方法があります。
著者は、二次障害に対する直接支援の現場では「インフォーマルアセスメント」は必要不可欠なアセスメント方法だと感じています。
「インフォーマルアセスメント」の利点として、子どもの日常の自然な姿に加え、好き嫌いや得意・不得意など支援に直接使える情報を手に入れることができ、そして、課題となる行動そのものを記録できるなど、情報量も多く、支援には欠くことができないと考えられています。
例えば、「発達障害の二次障害」には、様々な問題行動が生じることがありますが、問題行動のアセスメントにおいても、問題行動の発生の頻度・長さ・時期などを測定し、予防的対応に繋げていくことができます。
予防的対応はリスクを防ぐ側面がありならがも、子どもの好き嫌い・得意・不得意を踏まえた上での子どもの好む関わりに繋げていくことも大切です。
その他、「フォーマルアセスメント」によって得られたデータから、例えば、知能検査の結果をもとに学習の遅れが生じやすい要因があれば、学校への不適応が生じる(生じている)可能性を予測することができます。
また、「生育歴」や「環境のアセスメント」も二次障害を理解する上で非常に重要だと言えます。二次障害が生じやすい要因・環境、例えば、発達障害の有無、養育者との関係の悪さなどがあるかどうかを検討することもまた必要です。
日本国内において、まだまだ発達障害のアセスメントや二次障害のアセスメントが未整備な点が多い中で、著者は「フォーマルアセスメント」と「インフォーマルアセスメント」を初めとした、問題行動の分析、検査結果から得られる知見、生育歴や環境のアセスメントなどが二次障害のアセスメントで非常に役立つと考えています。
以上の「二次障害のアセスメント」の内容は、以下の記事を参照しています。
関連記事:「【二次障害のアセスメントについて】発達障害児支援の領域から考える」
関連記事:「【二次障害のアセスメントで必要なインフォーマルアセスメント】発達障害児支援の現場を通して考える」
二次障害の予防と対応
この章では、「二次障害の予防と対応」として、「地域で支えるという視点」「二次障害への基本的な対応方針」「環境調整」「誤学習と未学習」について見ていきます。
地域で支えるという視点
二次障害が発症している・あるいはその可能性が高い子どもに対しては、「地域で支えるという視点」が重要です。
具体的には、地域に点在する様々なケア・サブシステム(障害福祉、教育、母子保健、医療などの分野ごとの集合体のこと)が連携して取り組んでいくことが重要だと考えられています。
著者は長年療育現場に携わっていますが、療育(発達支援)で重要なことの一つとして、「二次障害の予防」があります。
「二次障害の予防」の取り組みの一つに、子どもに関わる関係機関が連携していくことが非常に重要です。連携の例として、著者が勤めている放課後等デイサービスをはじめ、学校などの教育機関、発達支援相談センターなどの相談機関、医療機関などがあります。
もちろん、家庭との連携がうまく取れることがとても大切ですが、中には、連携が難しい家庭もあるため、保護者支援をはじめ家庭を支えるという枠組みの中で、「地域で支えるという視点」を持つことが大切です。
以上の「地域で支えるという視点」の内容は、以下の記事を参照しています。
関連記事:「発達障害の二次障害への理解と支援【療育経験を通して考える】」
二次障害への基本的な対応方針
「二次障害への基本的な対応方針」として、小嶋(2022)は、以下の4つを取り上げています。
「①二度と傷つけない」「②支援目標を下げる」「③その子の「できる」をたくさん探す」「④適切な医療を提供する」の4つであり、著者もこれら4つは大切だと感じています。
「①二度と傷つけない」とは、子どもにとって安心・安全の基地を再度構築することが支援の根底において大切です。つまり、大人との信頼関係の構築(愛情のエネルギーの充足)です。
「②支援目標を下げる」とは、例えば、学習目標を実際の年齢よりも大きく下げるなど、本人の負担を軽減する設定にする必要があります。
「③その子の「できる」をたくさん探す」とは、自己肯定感・自己効力感を育むことでり、意欲のエネルギーを引き出す関わりだと言えます。
「④適切な医療を提供する」とは、例えば、薬物療法の検討があり、服薬によって情緒が安定することで、学習効果や他者との関わりにおける成功体験を積み上げていくことに繋げていくことが大切です。
大人との信頼関係が進む中で「リミットテスティング」を理解することが大切です。「リミットテスティング」とは、この大人は本当に自分を傷つけない大人かどうかをテストする期間であり、支援者にとって支援が後退したかに見える時期でもあります。
著者の療育経験を通して見ると、二次障害のある子どもは大人の関わり方・眼差しなどに非常に敏感です。それは、子どもに対する態度だけではなく、大人同士の関わり方、他の子どもとの関わり方もよく見ていると感じます。
そのため、この人は安心できる人だという認知(好き・安心)を様々な文脈を通して実感してもらう必要があります。一方で、関係が進む中で、リミテッドテスティングが見られることもあるため、その期間においても支援方針を変えずに(時には修正しながら)、チームで連携しながら取り組むことが大切だと思います。
以上の「二次障害への基本的な対応方針」の内容は、以下の記事を参照しています。
関連記事:「【発達障害児の二次障害への対応】療育経験を通して考える」
関連記事:「【発達障害児の二次障害について】症状の悪化を予防するために大切なこと」
環境調整
「環境調整」には「物的環境」と「人的環境」があります。「環境調整」は、二次障害への対応の4つの支援ステップのうち、ステップ②(物的環境の調整)と③(人的環境の調整)にあたります。ちなみに、①が先に見た「アセスメント」であり、④が次に見る「本人への支援」になります。
「物的環境」の調整では、例えば、子どものネガティブな刺激(刺激になる物・人・音など)になるものは極力取り除く工夫が必要です。
「人的環境」の調整では、共感性が高いこと、そして、子どもを中心としたものの見方・考え方ができる人、子どもが好む関わり方ができる人を対応者としておく、あるいは、育てていくことが必要です。
著者の療育経験を踏まえると、二次障害の子どもは少しの刺激に敏感に反応することがあります。また、敏感に反応する強度も本人の気持ちの状態によって大きく左右される印象があります。
そのため、子どもにとって、安心できる環境を事前に調整していくことが大切であり、また、ネガティブな因子は事前に減らす工夫をすることで、症状の悪化を減らすことができると感じます。つまり、「予防的対応」を取ることが非常に重要だと言えます。
以上の「環境調整」の内容は、以下の記事を参照しています。
関連記事:「【二次障害への対応】4つの支援ステップを通して考える」
誤学習と未学習
「アセスメント」→「環境調整」が整ったら、次に「本人への支援」に繋げていくことができます。「本人への支援」として、以下の「誤学習」と「未学習」への理解と対応があります。
「誤学習」=困り事に対して誤った解決方法を覚えてしまっている→誤学習に対して正しい解決方法を教える。
「未学習」=困り事に対する対処方法を教えられていない→未学習に対して対処方法を教える。
例えば、不満があると他者に手を出す他害行為は「誤学習」だと言えます。この場合は、言葉で伝える方法を教える必要があります。
また、困っても黙り続け一人で抱え込んでしまう行為は「未学習」だと言えます。この場合は、他者に助けを求める方法を教えていく必要があります。
著者の療育経験を踏まえると、不適切な行動を適切な行動へと促す本人支援は、子どもとの間に信頼関係が形成されていないと難しいと実感しています。逆に、信頼関係が形成されていくことで、誤学習や未学習への対応はだいぶスムーズに進みだすと言えます。
また、支援がうまく進みだしても、子どもを取り巻く環境が変わり、子どもの状態が悪くなった場合には、再度、アセスメント→環境調整に立ち戻る必要があると感じます。
以上の「誤学習と未学習」の内容は、以下の記事を参照しています。
関連記事:「【二次障害への対応】誤学習と未学習を通して考える」
まとめ
「発達障害の二次障害」とは、「一次障害」として、ASDやADHDなどの発達障害があり、その上にさらに、二次障害といった二次的な症状(精神疾患、誤学習、不登校、引きこもりなど)が重なった状態のことを指します。
二次障害のエネルギーの向かう方向性には大きく「外在化」と「内在化」の2つがあります。
「二次障害の原因」として、二次障害の発症のプロセス(二次障害出現の悪循環)を抑えていく必要があります。
「二次障害のアセスメント」に関しては、現在のところ決まった手順・方法はありませんが、「フォーマルアセスメント」と「インフォーマルアセスメント」を組み合わせてた包括的アセスメントが大切です。
「二次障害の予防と対応」として、保護者支援をはじめ家庭を支えるという枠組みの中で、「地域で支えるという視点」を持つことが大切です。
その他、「二次障害への基本的な対応方針」として、「①二度と傷つけない」「②支援目標を下げる」「③その子の「できる」をたくさん探す」「④適切な医療を提供する」の4つを抑えていくことも重要です。
本人への直接的な対応(「誤学習」と「未学習」への理解と対応)を実施する以前に、物的環境と人的環境を調整する「環境調整」の視点もまた大切です。
参考書籍紹介
今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。
発達障害の二次障害を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。
発達障害の二次障害に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害の二次障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
行動障害に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】行動障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
愛着障害に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】愛着障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
不登校に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】不登校に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

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