【行動障害とは?】特徴・原因・アセスメント・対応方法をわかりやすく解説

まとめ記事

「突然叩く」「物を投げる」「大声を出す」「自分を傷つける」などの「行動障害」に対して、どのように対応すればよいのか悩んだ経験はないでしょうか。

行動障害への支援では、目の前の行動だけを見るのではなく、その背景にある原因や本人の特性、環境要因を理解することが重要です。そのためには適切なアセスメントを行い、行動の意味を考えながら支援を組み立てていく必要があります。

著者はこれまで、行動障害のある子どもから大人まで様々な人と関わる機会がありました。そこで痛感したことは、行動障害に関する知識を踏まえながら実践知を磨いていくことだと考えます。

 

本記事では、行動障害の特徴や原因、アセスメントの考え方、そして具体的な対応方法について、療育現場での経験も交えながらわかりやすく解説します。

行動障害への理解を深め、より効果的な支援につなげるための参考になれば幸いです。

 

※本記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有し、発達障害に関連する大量の書籍を読んできた筆者が執筆しています

 

行動障害の理解と支援の全体マップ

本記事では、行動障害の理解と支援に関して、以下の6つの章に分けて解説していきます。

1.行動障害の概要

2.行動障害の原因

3.行動障害のアセスメント

4.行動障害の支援方法

5.まとめ

6.参考書籍紹介

 

 

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行動障害の概要

この章では、「行動障害の定義」「行動障害の特徴」について見ていきます。

 

行動障害の定義

自傷や他害、パニックや激しいこだわり行動などを総じて「行動障害」と呼びます。一方で、「行動障害」の定義は厳密にあるわけではない考えられています。

また、「行動障害」と「強度行動障害」の違いについては、「行動障害」の強さが甚だしい状態を「強度行動障害」としています。

ここでは、行動障害児(者)研究会より、「強度行動障害」の定義を引用していきます。

「強度行動障害児(者)とは、直接的他害(噛みつき、頭つき等)や、間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持、場所・プログラム・人への拘り、多動、うなり、飛び出し、器物破損等)や自傷行為などが、通常考えられない頻度の形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難な者をいい、行動的に定義される群である。その中には医学的には、 自閉症児(者)、精神薄弱児(者)、精神病児(者)等が含まれるものの、必ずしも医学により定義される群ではない。主として、本人に対する総合的な療育の必要性を背景として成立した概念である」。

 

以上の内容から、「強度行動障害」とは、直接的・間接的他害や自傷など様々なものがあり、その頻度が非常に高いこと、養育環境での対応が難しく、療育の必要性を背景として成立した概念となっています。

「(強度)行動障害」は、主に知的障害(ID)や自閉スペクトラム症(ASD)に多く見られると言われています。

「行動障害」と似た行動特徴として「行為障害(人を攻撃したり、器物破損、嘘や窃盗、重大な規則違反など)」があります。

両者の違いとして、「行動障害」は、他害や自傷など行動特徴として非常に原始的な反応から社会的には意味を持たない行動の問題である一方、「行為障害」は、社会のルールからの逸脱や大人への反発や攻撃などから、社会的な意味を強く持つものだと言えます。

著者の経験を通して見ても、「行動障害」は、ASDやIDの子どもから大人に至るまで、多く見られていたと感じます。中でも、障害の程度が重度よりの方が見られる割合は高いと感じます。一方で、「行為障害」は、知的に軽度か知的に遅れのない人に見られる割合が高いと感じます。

以上の「行動障害の定義」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「強度行動障害とは何か?療育経験を通して関わり方で大切な視点について考える

関連記事:「行動障害と強度行動障害の違いについて-行動障害の背景にあるものとは?-

関連記事:「行動障害と行為障害の違いについて-療育経験を通して考える-

 

行動障害の特徴

行動障害には、攻撃行動(殴る・蹴る・噛みつく)、破壊行動(器物破損)、自傷(頭を叩く・手を噛む)、かんしゃく、逃走行動、異食症、常同行動などがあり、その行動が自他に危害を加えるものだといった特徴があります。

行動障害の症状の程度には、軽度から重度まで幅があります。

行動障害が発生しやすいタイプは、行動の内容や年齢などに応じても現れ方は異なり、障害のある(ID・ASD)人たちの方が一般的にはよく見られると言われています。

著者はこれまで様々な行動障害を見る機会がありました。症状が重度なものだと、扉に向って全力で走り頭を打ち付ける、著者の手の神経が麻痺するほど噛む、パニック・癇癪になり部屋の物を全て壊すなど対応に苦慮したケースは多くありました。

以上の「行動障害の特徴」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「行動障害について【特徴・症状の程度・発症しやすいタイプ】

 

 

行動障害の原因

行動障害には、大きく4つの原因(機能)があると考えられています。

この章では、行動障害の原因(機能)として、「4つの機能」→「注目を得る」「要求を満たす」「逃避する」「感覚刺激を得る」について見ていきます。

 

注目を得る

注目を得る」とは、何か具体的に物が手に入るのではなく、周囲からの関心や注目、承認などを得ようする行動です。

「注目を得る」行動に対して、正しい行動にはポジティブなフィードバック(強刺激)を与ええ、悪ふざけなど誤った行動に対しては、基本、取り合わない(低刺激)ようにするこが大切だと考えられています。

他者からの注目を得る行為は、取り上げない、無視をするなどの対応により、行動が消去する場合がありますが、その一方で、行動の背景に愛着の問題がある場合には、逆に、こうした対応により注目行動が増える可能性があるため、行動の背景にも目を向ける必要があると考えます。

注目行動への対応で参考になる記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【不適応行動の注意喚起行動への対応】発達障害児支援の経験を通して考える」。

 

要求を満たす

要求を満たす」とは、何か(もの、活動、特権など)を手に入れようと試みる行動です。

「要求を満たす」行動に対して、正しい行動・要求の伝え方を学習させていくアプローチが大切になります。

つまり、これまでの経験において誤った行動を学習している(誤学習)可能性があるため、その行動を正しい方向へと修正していく必要があります。

修正していく際に、「消去バースト(例:大声を出す→要求が通った→急に通らなくなった→癇癪・泣き叫びなどの過剰な抵抗が生じる状態)」が発生しても、取り組みの方針を変えずに、正しい行動を強化する対応の継続が重要です。

要求行動への対応で参考になる記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【不適応行動の要求行動への対応】発達障害児支援の経験を通して考える」。

 

逃避する

逃避する」とは、嫌な活動、嫌な刺激からの回避行動を指します。

「逃避する」行動に対して、なぜ逃避をするかをアセスメントしてきないがら、本人が安心できる環境を整えていく対応が必要になります。

例えば、逃避の要因に「感覚の問題」があれば、「感覚の問題へのアプローチ」が必要になっていきます。

感覚の問題の中には「感覚回避」といった感覚刺激に対する反応が強く感覚刺激から遠ざかる(例:苦手な音や匂いなど)対処行動をとるものもあります。感覚の特徴についても理解を深めることが重要だと感じます。

逃避行動への対応で参考になる記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【不適応行動の逃避行動への対応】発達障害児支援の経験を通して考える」。

 

感覚刺激を得る

感覚刺激を得る」とは、自らの身体に刺激を与える行動を指します。

不足した感覚を得ようと自らの身体に刺激を与える行動は「自己刺激行動」とも言われています。

「自己刺激行動」に対して、単純に禁止するのではなく、特定の場所・状況においてはやっても良いといったルールを合法的に考えていくことが必要だと考えられています。

その他、学習内容(活動内容)の工夫、代わりの刺激を入れる工夫、自ら必要な刺激を取り込む方法を教えるなどの取り組みがあります。

様々な感覚刺激グッズもあるため、好みの感覚アイテムを探していく対応も大切だと感じます。

感覚を得る行動(自己刺激行動)への対応で参考になる記事はこちらで紹介しています:関連記事:「【不適応行動の自己刺激行動への対応】発達障害児支援の経験を通して考える」。


以上の「行動障害の原因」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「行動障害の原因について【問題となる行動に至る4つの目的とは?】

関連記事:「【不適応行動の原因について】4つの機能を通して考える

 

 

行動障害のアセスメント

この章では、行動障害のアセスメントの視点として、「状況要因と契機要因」「勃発曲線」について見ていきます。

なお、これから見るアセスメントの視点は、「行動支援計画」の内容を参考にしています。

 

状況要因と契機要因

行動障害に見られる問題行動は、問題が起こる時間帯・場面・状況などを予測していくことは可能であると考えられています。

その際に、「状況要因」「契機要因」の2つの視点が重要になります。

状況要因」とは、当人を不安にさせたり過敏にさせたりする要因のことであり、例えば、体調不良、苦手な感覚が多い環境、嫌な出来事があるなど、状況要因が増えることで問題行動が増えることに繋がります。

契機要因」とは、行動障害を起こす“きっかけ”となる刺激のことであり、例えば、自分の要求が通らない・やりたい行動を制止されるなど、契機要因(先行刺激)が引き金となり問題行動が生じることに繋がります。

「状況要因」「契機要因」の2つの要因について深く情報収集と分析をしていくことで、行動障害に見られる問題行動の背景の把握に繋げていくことができます。

実際に、著者も療育現場で子どもの状態を見る際に、子どもにとって何か不安な要素はあるか?複数あるか?あるとするればどの程度か?どのようなことをきっかけに問題行動が生じやすいのか?といった「状況要因」「契機要因」を抑えることはよく行っています。

以上の「状況要因と契機要因」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「行動障害のアセスメントで必要な視点について【状況要因と契機要因を通して考える】

 

勃発曲線

行動障害は突発的になんの前兆もなく起こることはなく、「勃発曲線」をたどって、4つの段階を経て発展していくと考えられています。

勃発曲線」には、「緑信号帯」「黄信号帯」「赤信号帯」「青信号帯」があります。

緑信号帯」:気分が安定した状態であり、様々な活動に参加することが可能な段階です。

黄信号帯」:行動障害に見られる問題行動が発生する一歩手前の段階(例:不安、興奮、イライラ)です。

赤信号帯」:行動障害の問題行動が発生した段階です。

青信号帯」:一度は赤信号帯を通過し、回復した(落ち着いてきた)が、まだ油断はできない段階です。

「勃発曲線」を通して、問題行動に至るまでの状態・問題行動が起こった際の状態・問題行動が生じた後の状態について、アセスメントの視点を持つことで、各段階においてどのような対応をしていけば良いかといった理解に繋げていくことができます。

著者は「勃発曲線」という言葉を知った際に、行動障害児・者の精神状態を図る上でとても分かりやすく・かつ納得のいくワードだと感じました。そして、色別に行動を分解することで、対応策にも具体性が増すと感じます(例:黄信号→○○の環境調整や対応、赤信号→○○の環境調整や対応)。

以上の「勃発曲線」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「行動障害の特徴について【発展段階をキーワードに考える】

 

 

行動障害の支援方法

この章では、行動障害の支援方法として、「予防的対応」「適切行動支援アプローチ」について見ていきます。

 

予防的対応

予防的対応」とは、行動障害が起こらないように予防することであり一番重要だと考えられています。

「予防的対応」において、重要になるのが先の章で見た「行動障害のアセスメント」を行うことです。

行動障害がいつ・どのような状況・環境で生じるのか?生じやすいのか?を踏まえて、事前に行動障害が生じにくい環境を調整していく必要があります。

著者が行動障害の人へのアプローチで最も重視しているのもまた「予防的対応」です。正直なところ、行動障害が生じた際の直接的な対応も重要ですが、介入にあたり大きな労力を使います。

もちろん、直接的な対応に迫られることも多くありますが、事前の準備に大きく時間をかけても良いほど、「予防的対応」への視点は必要だと感じます。また、特定の人のみ対応の比重がいかないように、チームで対応方針を共有していく中で、事前の対応策を工夫していくこともまた必要だと言えます。

行動障害は今のところ、有効な特効薬はないと考えられています。そのため、「予防的対応」と次で紹介する「行動学習」が重要になります。

以上の「予防的対応」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「【行動障害への対応方法】予防・行動学習・薬物療法を解説

 

適切行動支援アプローチ

適切行動支援アプローチ」は、応用行動分析に基づくアプローチであり、適切な行動を学習する方法です。

「適切行動支援アプローチ」では、問題行動(例:他害、器物破損、自傷など)を、これまでの経験で学習された行動と考え、その上で、再度、望ましい行動(適切行動)へと学習していくことを可能とする考え方になります。

例えば、要求が通らない→大声を出す・物を投げる(誤学習された行動)→言葉や紙に書いて伝えるといった適正行動を強化していく方法があります。

「適切行動支援アプローチ」は、「予防方略」と「緊急対処方略」の2つの方略があり、中でも、先に見た「予防的対応(予防方略)」をより多く使用するアプローチになっています。

「適切行動支援アプローチ」の進め方として、「行動支援計画」を作成し、それに基づいて支援を進めていく必要があります。

行動支援計画について詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「行動障害へのアセスメントについて【行動支援計画から考える】」。

著者は適切行動支援アプローチで参考になった内容を部分的に活用することがあります。中でも重要だと感じるものとして、行動障害の4つの機能へのアプローチ、勃発曲線の理解と対応から多くの支援のヒントを得ていると感じます。

以上の「適切行動支援アプローチ」の内容は以下の記事を参照しています。

関連記事:「行動障害の対応について【適切行動支援アプローチとは?】

 

 

まとめ

「行動障害」の定義は厳密にあるわけではありませんが、簡単に言えば、自傷や他害、パニックや激しいこだわり行動などを総じた行動です。

行動障害の症状の程度には、軽度から重度まで幅があり、障害のある(ID・ASD)人たちの方が一般的にはよく見られます。

行動障害には、大きく4つの原因(機能)には「注目を得る」「要求を満たす」「逃避する」「感覚刺激を得る」があると考えられています。

行動障害のアセスメントの視点として「状況要因と契機要因」「勃発曲線」の把握が重要です。

行動障害の支援方法として、「予防的対応」「適切行動支援アプローチ」などがあり、「予防的対応」は、行動障害が起こらないように予防することが一番重要だと考えられています。

また、「適切行動支援アプローチ」は、応用行動分析に基づくアプローチであり、適切な行動を学習する方法であり、活用の際には「行動支援計画」を作成し、それに基づいて支援を進めていく必要があります。

 

 

参考書籍紹介

今回の記事内容をさらに深める上でお勧めする書籍紹介記事を以下に載せます。

行動障害を含め発達障害領域を網羅的に学びたいと考えている人には次の書籍紹介記事がお勧めです:関連記事:「臨床発達心理士が厳選:発達障害を理解するための体系的読書ガイド【完全版】」。

行動障害に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】行動障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

感覚の問題・異常に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】感覚統合に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

自閉症の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:「【臨床発達心理士が厳選】自閉症に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

知的障害の理解に関するお勧め書籍紹介はこちらで紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】知的障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。

 

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