〝実行機能″とは、〝遂行能力″や〝やり遂げる力″とも言われています。
実行機能の力は、その後の学力や対人関係、そして健康などに影響していくと考えられています。
また、〝実行機能″は、最近注目されている〝非認知能力″の中でも特に研究が進んでいる分野です。
〝実行機能″の力を高める方法も様々なものがあると言われています。
以下に関連する記事を記載致します。
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それでは逆に、〝実行機能″の力を低下させる要因にはどのようなものがあるのでしょうか?
最近、子どもたちが特に接する機会が多いテレビやデジタルメディアなどは実行機能の低下の要因になるのでしょうか?
そこで、今回は、実行機能の低下の要因について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、テレビやデジタルメディアの影響を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「森口佑介(2019)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学.講談社現代新書.」です。
実行機能の低下の要因について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
テレビは受け身になってしまうので主体的に目標を達成する実行機能が低下しますが、デジタルメディアには主体的にかかわることができるので、実行機能は低下しないようです。
著書の内容から、テレビは自分で選択する機会が少ないため、実行機能の低下の要因になると考えられています。
〝実行機能″とは、自分で目標を立て、それに向けて計画立てて行動を進める能力です。
そのため、能動性・主体性がキーワードになると言えます。
テレビは受け身の要素が強いために、実行機能の向上にはならないと考えられます。
一方で、著書の内容から、デジタルメディアの使用は、実行機能の低下には繋がらないと考えられています。
それは、自ら選択したり、目的を持って使用する要素が強いからだと言えます。
テレビとは対照的に、能動性・主体性の要素があるからです。
このような、デジタルメディアのプラスの要素がある中で、最近は、特にデジタルメディアがマイナスの影響を子どもたちに与えているといった情報が飛び交っています。
この点について、以下、著書を引用しながら見ていきます。
スマートフォンや人工知能などによって育児の負担が軽減されたり、子どもの発達が促されたりすることは必ずあると考えられます。
もちろん、マイナスの影響がないとは言えませんが、著書にあるように、育児負担の軽減に加え、子どもの発達にプラスとなる点も必ずあると記載されています。
大切なことは、デジタルメディアの活用法にあります。
自ら何かを〝知りたい″、〝調べたい″、〝誰かと楽しみを分かち合いたい″などといった能動性・主体性において、デジタルメディアの活用は現代を生きていく上で大きな力になると言えます。
そして、こうした活用法は〝実行機能″の低下の要因とはならず、むしろ、向上する要因になると言えます。
著者の経験談
著者の療育現場には、タブレットなどのデジタルメディアがあります。
子どもたちは、様々な目的を持ってタブレットを使用しています。
例えば、格闘技の技を覚えたくて自ら動画を〝調べるて真似る″といった行為、自分が楽しい・面白いと感じる動画を〝誰かと分かち合いたい″といった思いから動画を他児と共有する行為、様々な画像を張り付けて物語を〝制作する″行為、などがあります。
こうした様子を見ていると、子どもたちは、自分の頭を使ってデジタルメディアを非常にクリエイティブに活用しているのだと感じさせられます。
こうした経験を通して、活動内容を自ら拡張させる力が高まったり、他者との間での共感回路が高まることに繋がっていくのだと思います。
もちろん、目標・目的を持って活用することが多いため、〝実行機能″の向上にも寄与していると思います。
こうして振り返って見ると、デジタルメディアは活用法次第では、子どもたちの発達にプラスとなる要素も多いと著者は考えています。
以上、【実行機能の低下の要因とは?】テレビやデジタルメディアの影響を通して考えるについて見てきました。
著者自身もデジタルメディアは生活の様々な場面で活用しています。
その中で、自分にとって有意義な活用法はやはり目標・目的を持って使用することだと考えています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もデジタルメディアとの付き合い方、メリット・デメリットを考えていきながら、療育現場での活用法について考えを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
森口佑介(2019)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学.講談社現代新書.